脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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目覚め⑤

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「私が代わる…。」



「ぐ、グリニエル様!」
   



私が彼の登場に驚く中、レヴィは当たり前のようにその場を後にする。



するとそのまま2曲目が流れ、彼は私の手を取り、曲に合わせ始めた。





「ぐ、グリニエル様、お気持ちは嬉しい
ですが、あまり動かれてはっ…。」











「……なんだ。私とのダンスは嫌だというのか…?」


「い、いえ、そういう訳では…!」



起きたばかりの彼にダンスの相手をしてもらうなど、申し訳ない。

それなのに彼は、私が止めようとするとムッとしたように顔を顰めた。


それを見て、それ以上を口にするのは良くない。
そう思って口をつぐんだ。


「……。」


曲が始まってしまった以上、彼の手を離すことはダンスを中断することとなり、彼に恥をかかせてしまう。

そうとなれば、できるだけ疲れさせないように、彼を軸に私が動こう。そう考えた。











「……。」


あまりダンスをするのには慣れていない。



ずっと裏にばかり潜入していたし、パーティーに客として入っても、ダンスをすることなどほぼ無かった。


しかし、グリニエル様を思えばそんなことは言ってられない。


私は真剣に場を見極め、彼をリードできるようにと感覚を研ぎ澄ませた。




「……。」





勝手に無口になるが、嫌われているなら話さないほうがいい。

彼はきっと王族の仕事を全うするために私のところへ来てくれただけなのだから、今は喋る必要はないだろう。


隊長に合図を送っていたはずだったが、何の手違いだろうか。それくらいは考えることができた。














「…すまない。」



「…え?」




私に向けて声をかけたのか、何なのか、すぐには判断することができずに聞き返す。



「君が私を気遣ってくれたというのに、随分と捻くれた返しをしてしまった。」





「え…と。大丈夫です、気にしません。
そもそも、グリニエル様は真から優しい方です。本当にそう思っているはずがないと分かります…。
今は記憶を無くされて一杯一杯なのですから、多少攻撃的になるのも無理はありません。
だから気になさらないで下さい。」




「……っ。」




「君は…強いんだね。」



「え?」








「君と私は…その、愛し合っていたのだろう?それなのに、急にこんな…っ」


「…。」




彼は悲しそうな顔で私を見下ろす。
泣きそうで、苦しそうで、それをどうしてあげたらいいのかは分からなかった。






「…私とグリニエル様は、正直言って想い合っていたかは分かりません。
でも、私はやっと自分の気持ちに気付けて、あなたに気持ちを伝えようと思っておりました。」



「…。」



「恋人だったわけではありませんから、特に以前と変わったことなどありません。
私のことは気にする必要はないのです。」


「今はそれよりも、覚え直さなければならないことが沢山あるでしょう。
グリニエル様はそちらを優先なさってください。
記憶を取り戻す方法は、私が探します。」



「え…?君は、それでいいのか?」






「…寂しい気もしますが、思い出は私の中にあります。過去に戻ることはできませんが、それを話すことはできます。
グリニエル様はグリニエル様です。
私のことを好きになってもらえるように、私は精進します。
それでも無理であれば、他の方と婚約なさっても構いません。」





「っ。」





「私は…。私はあなたのそばにいられるだけで、それだけで幸せですから…。」




「っ…!」





本当にそう思っている。

なんなら、死なれてしまうくらいなら、記憶喪失で良かったとさえ思っている。



私は不安そうに私を見つめる彼に、優しく微笑んだ。




「心配しないでください。
みんなが支えてくださいます。
グリニエル様ははずっと、素晴らしい人でした。
みんなそれを認め、あなたを慕っております。
もし、この先、あなたに害なす者があれば私が盾となり、剣となりましょう。
だから、今は、ご自身を優先してください。」





「っ…エミ…レィナ。」




「はい。」





「…ありがとう。」






話し込んでいるうちに曲が終わり、私はグリニエル様と分かれ、外へと捌けると、すぐさま貴族達に囲われてしまった。



話し込もうとする者、そしてダンスを求める者。

ヘトヘトな私は、どこから手をつけようかとその勢いに押し負けそうだ。







「ダンスなら私がお相手致しますわ。」


「貿易でしたら私も混ぜていただけると。」





「っ。レヴィ!セレイン従姉様!」






すかさず入った助け舟。

彼らのサポートの甲斐あって、私はその場でキャパを超えることなくその対応をし、パーティーを乗り越えることができた。






その後の私は来賓貴族を見送った後、部屋に戻る途中の廊下で倒れるように眠ってしまい、あとでルキアに運ばれたことを知った。




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