脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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できること④

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目が覚めると、またいつもの天井を見る。


そしてまたルキアとローザの手助けに感謝をした。





「ふぅ…流石に5日続くとキツいわね…。」


体を起こし、少し頭痛のする箇所を抑えると、ここ最近の無理に気付く。


すると枕元から小さな声が聞こえてきた。

「ニャー…、」




心配するように、私に聞こえるかどうかも分からないほど細い声を鳴らすのはルキアだ。




「ルキア…。おはよう、
昨日も運んでくれたのね。
ありがとう。」


そう言って彼の頭を優しく撫でてやると、彼はいつもの姿へと戻る。





「…主人…。
まだ寝ていた方が宜しいかと思います。」




「え?」




彼はベッドから降り、俯き加減でそう喋るが、下から見ていた私からは表情がうかがえた。





辛そうに眉を顰め、苦しそうに目を伏せる。
それだけで私の心配をしていることが分かる。




「ごめんね、ルキア。
心配をかけてしまって…。
でも大丈夫、…もうすぐ…」



「危険です!
いくらエミリーが魔力切れに慣れていたとしても、こんなに毎日…
体が持ちませんし、何より寿命が…っ」



喋り出した彼は私に向けて自らの抱えていた不安を曝け出す。


「っ…申し訳ありません。
言葉を遮ってしまいました…。」


私が彼を諭すように喋ると、彼は被せるように言を発したあと、また辛そうな顔に戻ってしまった。








「ルキア…。大丈夫よ。
毎日気を失ってしまっているけど、魔力は命に影響のない程度に捧げているの。
…ソアレが魔力を見て、調節してくれているのよ。
彼によって眠らされているだけだもの、何も危ないことはないわ。」




「…そんな、…精霊がそんなことできるだなんて聞いたことはありません。
…それが事実だと証明する術がないのです。
私は、エミリーを失うことが怖い…。
もうあの人のためにそんな事をしないで欲しい…。」




「……。」



ずっとそんな不安と隣り合わせだったのだろうか。
ここ5日もずっと、自分の主人が倒れる様を見せられた彼は一体どんな気持ちだっただろうか。



そう考えて初めて、自分は少し自分勝手だったと反省した。




「エミリー…
貴方を忘れてしまったあの人に、
どうしてそんなに拘るのですか…
私なら何があっても、貴方を忘れたりはしない…。」





ルキアはそう言って私に顔を近づける。






キスされる…

そう思う時には体は動いていた。








「っ。…エミ、リー?」


ギュッと近付いた彼を抱きしめると、
彼は少し慌てている。





「ルキア…心配してくれてありがとう。
でも、私はそうしたくてしているの。
例え本当に命が削れていようが気にしないわ。」




「っ!そんな…っ」






「それはグリニエル様だからというわけではないわ。
これが隊長だろうがクローヴィスだろうが、私にできるならそうしている…。
もちろん、貴方がそうなったら喜んで命を削ってそうする。」



「っ…⁉︎」





「私はみんなが大切よ。
むしろ私に少しでも可能性があって嬉しい。
今まで何もできないお荷物で、私は無我夢中で生きてきたわ。
やっとみんなに報いることができて嬉しい…そう思っているの。」




「…。」




「まあ、命を削られてしまうことを防げるのならそれに越してことはないわ。
だってみんなと一緒に過ごせなくなってしまうでしょう?」




「っ!」




「だから心配しないでちょうだい。
私はまだまだ長生きするつもりよ。
貴方に支えてもらいながら…ね。」




「っ。勿論でございます。
私は一生を貴方に捧げます!
だからどうか、無理だけは…っ」




私は彼を離して目を合わせる。
そして笑った。




「大丈夫よ!」




「っ…。…貴方の大丈夫それには敵いません…。
…せめて軽食を取ってください。
朝1度だけでは栄養が摂れません…。」


彼は姿勢を正すと、顔を背けてそう言った。


「ええ。分かったわ。
ありがとう、ルキア。」



「っ。こちらこそ、出過ぎた真似を致しまして申し訳ありませんでした…
でも、どうか、無理だけはしないでください。
…そうでなければ私はどうにかなってしまいそうです…。」



少し彼に心配をさせ過ぎてしまったかもしれない。

そう思って私は分かったと返事をした。






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