脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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記憶

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「ここは…、」


クローヴィスの移転によって連れてこられたのは美脚の店、ルピエパール。


壊れた奥の壁は直され、隙間風の入らなくなったそこは、もう私を必要とはしていない。





隊長が忙しいからと、まだ営業再開していない静かなその店には、いつものようにスリット入りのワンピースを身に纏ったシェリーがいた。






「え…シェリー?」


「お待ちしておりました王子殿下…。
そして、レィナ…
いいえ、エミレィナ様…と呼ぶべきね。」



「っ…。」




シェリーは、あの事件の後から会うことができておらず、ずっと気がかりだった。




身分を隠し、側にいたということは、結局は騙したようなもので、きっと恨まれていることだろう。


「……。」




「シェリー。あとは頼む。」



「ええ。任せて頂戴。」



私は、彼女に何と謝ればいいのだろうか。

こんなにも長い間偽っていたが、
シェリーとは本当の姉妹のように
過ごしてきた。


できることなら以前のようにしたいのに、
彼女は私に敬称を付けて呼んだ。


それは私にとって壁を感じるもので、さみしいものだった。



そんな私とシェリーを置いて、隊長とグリニエル様はいつの間にかその部屋を後にしており、部屋には私とシェリーしかいない。


「あ、シェリー…あの…」




「その…。」





どこから話せばいいものか。
最初から知らないこともあり、偽るつもりはなかったが、それはこちらの都合。

上手く説明することができないと思った。



「…ごめんね、レィナ。」


「え…?」





「あの人に聞いたの。
…ずっと、気づいてあげられなくてごめんね。
沢山辛く、大変な思いだったでしょう…
私がこの店を飲み屋ではなく、そういう店にしてしまったから、人目に晒されるようなこと…。っ…。
あなたが乗り気じゃなかったのに店を辞めなかった理由がやっと分かった。
今までごめんね。」



「っ…。」





そんなこと、謝るのはこちらの方だ。






「そんなことない…私は…。
偽りばかりで…っ
それにシェリーを危ない目に…っ」




グッと込み上げた涙が流れると、私の体は温かくなる。





「っ。」

  
目の前にいるシェリーが優しく私を抱くと、耳元で囁いた。



「いいのよ…。
レィナがいたから私たちは助かった。
そう聞いているわ。…ありがとう。」


 



「…!……うぅ…。シェリー…。」






ボロボロと色んな涙が流れる。



その涙を彼女はそのまま肩で受け止めてくれた。




「もう…泣いている暇はないじゃない。」




「…え?」













「あの王子…記憶喪失なんでしょう?」


「っ……!……ええ。」



そんなことまで隊長はシェリーに話したのだろうか。

情報を表に出さない隊長が、まさかそこまで話すとは、きっと何か理由があるのだろう。



そう思った。










「あの王子様の記憶を取り戻させる為に、店を開けるように言われたの。
だからいつも通りに着替えて待っていたのだけれど……」




シェリーは私から離れると、国の王子を前にして緊張したのだろうか…。俯き、プルプルと震えていた。



「シェリー…大丈夫?」


やはり一般市民に王子の存在は大きすぎる。
そう思ったが、すぐにその考えは覆された。














「…あんの王子ヤロウ、私の脚を見たところで顔色一つ変えないなんて、良い度胸じゃない…!
絶対ぎゃふんと言わせてやるんだから…っ!」




「え?」



「ほら!レィナ‼︎やっぱりケインが言っていた通り、あの王子ひとにはやっぱりあなたじゃなきゃダメなんだから、
とびっきりのメイクとドレスで気絶するくらいの衝撃をあたえるのよ!
ほら!早く準備して!」



「え?え?」


何がどうしてそうなったのか、私には理解できない。


「…中途半端なことはさせないわよ…
私のプライドへし折った罪は重いの。
ほら、早くしなさい!」



「は、はい!」




私はシェリーに急かされるまま、用意されていたドレスに着替え、メイクを施されている間に、彼女が隊長と企てた作戦を聞かされた。




彼女の勢いに負かされ、
私は記憶を取り戻す方法が他にもあるということを言いそびれてしまった。




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