脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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できること⑥

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「今なんて?」



「…君が無理をしているのは重々承知している…。
だけど、できることなら思い出したいんだ…。」


「…っ」






「…もしかして生活に支障が出ていますか?
それならサポートを…っ」



「っ。違う。
知識は得ることができる。
そうではなくて…っ」


「そうではなく…?」




「っ……。」



グリニエル様は言い出しにくそうにしながらも、一呼吸置いてからまた話し始めた。




「正直、私がエミレィナに恋心を抱いていたという確信は得られなかった。
今でも苦しさ以外には何もない。」



「っ…」



「…だが、どうしても君を目で追ってしまうし、目の前にいなくとも君を考えてしまう…。
だから、思い出したいんだ……。
恋仲にはなれなくとも、兄妹として、きっと君を大事に思っていたのだと思う…
その気持ちを思い出したいと思ったんだ。」




「…!」




「君が命を掛けてくれているのは分かる。
君には後でしっかり礼をさせてもらいたい…
だからどうか、私からも頼ませてほしい。
…私の記憶を取り戻す手伝いをして欲しいんだ。」



グリニエル様は深く頭を下げると、私に頼み込む。


「頭を上げてください。
…お礼など、要りません。
貴方が素直に私を頼ってくれるだなんて、それだけで嬉しいことです。
あなた様がもし、私に恋心を抱いていないとしても、私は構わない。
ただ、貴方のそばにはおいてほしい…
それが私が1番に望むものですから。」




もし恋が実らなくとも、私はこの人のそばにいたい。
その気持ちが変わることはないと自負している。


隣に立てなくとも構わない。

グリニエル様の後ろで彼を支える。
それだけで十分だ。




「…ああ。約束しよう。」


「…ありがとうございます。」





彼はホッとしたように微笑むと、ゆっくりとその場へと腰を下ろした。



「ところで、私はどうしたらいいのだろうか。
記憶を取り戻す方法を教えてもらえるかな。」




「あ、はい。」



私も正直知らないが、私はとりあえず返事をしてからその場へと座った。







「ソアレ…教えてくれる?」



「は…?」



キョトンとするグリニエル様をよそに、低く温かな声が聞こえる。
それは頭の中に流れてくるように脳内で響いた。


『………よかろう。
エミレィナ。そして契約に関わりし小僧…。
よく聞くがいい…。』




「こ、…小僧…。」




『我が名はソアレ。太陽を司る精霊だ。
我は光ある者に仕え、闇を葬った。
その際に、エミレィナの魔力を補ったのが小僧…お前だ…。』





「…私が?」




グリニエル様は記憶を失っており、自身の力を使うことはまだできない。
その中で、自分が闇を葬るために一役かっていることに驚いているようだ。




「……。」




『正直、エミレィナの力では足りなかった。だから、小僧がエミレィナに魔力を受け渡してくれて、我も助かった。
礼を言おう…。』








「私には受け渡すほどの大きい魔力があったのか…。」



『小僧はエミレィナに自身の魔力全てを送ろうとした…。
だから我が小僧を小突いたのだが…
少々手荒だったものでな。
その衝撃が記憶に影響したのだろう。』



「…なるほど…。
それでは同じ方法であればもしかすると…?」


『ああ。その為には魔力がいるから、ここ数日エミレィナに魔力を授けてもらっていたのだ。
エミレィナの命には影響しないようにコントロールはしている。そこは安心していい。』



「…そうか…。」





グリニエル様はホッとしたように力を抜くと、ソアレに頼み込んだ。





「ならば、すぐにでもしてもらいたいのだが、それは可能なのだろうか?」





『…まあ、落ち着け。
方法なんだが、エミレィナが我に貯めた魔力を使い、我が小僧を小突く。
それは攻撃とは違い、小僧の体内に魔力を受け渡すことと同じなのだ。
だから魔力は相当小さくなってしまう。
分かるな?』



「ええ。」



『エミレィナが貯めたのは4日分…。
たかだか小僧の頭に衝撃を与えるだけなんだが、エミレィナの魔力は少ない。
だからせめて5日分は欲しいと思っている。』




「5日分…。」



「それじゃ、明日になればできるのよね?」


せっかくグリニエル様がやる気となってくれたのだから、気が変わらないうちに行いたい。



『いや、今日明日と受け渡し、その次の日に決行するのが妥当だろう。
明日もまるっきりの魔力を貰うつもりだ。
エミレィナは寝てしまうだろう。』


即ち明後日になる。
その長さに自分の魔力がどれほど少ないかを痛感した。



「…ん。長いわね…。」


「……。いや、してもらう以上とやかく言えまい。それじゃ、今日明日の受け渡しには私も同席するよ。
もしエミレィナが眠ったら、私が部屋まで送り届けよう。」

「…っえ、」

「…そ、それは結構です。
軽いものではないですし、変に噂が立つのも困ります。
私が眠ったらルキアを呼ぶか、それまで待ってて頂けるほうがいいです。」




「私はこれでも男だ。
多少体力が落ちてはいるが、
君を抱き抱えるくらいはできる。」



「そ、そういうことではなくて…っ。」









私がグリニエル様と揉めていると、
遠くの方から隊長が来るのが目に入った。







「あれ?隊長だわ…。」

隊長はズンズンとこちらへ向かってきており、どんどん距離が縮まっていく。



「うげっ……また今日もか…。」




隊長を目にした途端、グリニエル様はとても嫌そうな顔に変わる。



「隊長はグリニエル様を探しに来たのでしょうか。真っ直ぐこっちに来ますね。」




「はぁぁ…。おそらくそうだろう。
実はここ数日、ケインシュアが来るんだ。
衝撃を与えるといって木刀で斬りかかられたり、階段から突き落とされかけたり。
…怪我まではしないがケインシュアは勇者だろう?その力は普通のものとは違う。
逃げなければ己の命が危ないのではないかという危機を感じるんだ。」




「ま、まぁ…。私の知らぬ間にそんなことがあったのですね。」


いつも冷静な隊長がそんな思いつきのような行動をしていることに驚き、隊長が危ないものを持っていないかと気を配る。


見るところ、隊長は腰に刺した愛剣以外は何も手にしてはいなかった。



「きっと今日も何かしら危ない提案を持ってきたのだろう。早く逃げなければ…っ」



グリニエル様はズリズリと後退りをすると、隊長はさらにスピードを上げてこちらへと向かってきた。



「グリニエル様、とりあえず、私からも隊長に話してみますから、私の側から離れないで下さい。
危険なことはさせませんから。」



話せば分かる、きっと隊長は何かしらの考えがあってそうしているのだろうと思った私はそう提案した。




「…っ…わ、分かった…
不甲斐ないが、仕方がない。
エミレィナ、ケインシュアを頼む。」



「はい。お任せください。」














「……隊長。何か御用でしょうか。」


私はグリニエル様と隊長の間に立つと、近づいてきた隊長に声をかける。


すると隊長は私の前で口を開いた。




「エミリー…グリニエルを渡せ。
悪いようにはしない。」









「…それは隊長の返答次第です。
グリニエル様に一体何をなさろうとしているのでしょう。」



挨拶もなしにそう告げられた私は、少し強気にやりとりに応じる。



そんな私に隊長は、表情を変えることは
しなかったが、ため息をついた。


「…。
…唐辛子を粉にしたものを、
…袋に入れてそいつの目の前で割る…。」




「は?」





隊長は何を言っているのだろうか。

私は意味が分からずにそう聞き返すと、
隊長は面倒くさそうに説明してくれた。





「ヴィサレンスから連絡が来たんだ。
…こちらにエミリーが渡った暁には、すぐに婚約を結び、その地位を明らかにすると約束したのだから早急にせよ。と。」


「…え…?」


「差出人はロレンザ・ヴィサレンスだ。
グリニエルこいつが承諾さえすれば、記憶がなかろうと婚約させたんだが、予想外にもこいつはそれを受け入れなかった。
…ブルレギアスが代わりに婚約できれば良かったが、もう婚約してしまっているし、俺は勇者になってしまったから、聖女の娘であるお前と結婚することは憚れてしまう。」


「…だからエミリーの婚約は今やブルレギアスにとって目の上のたんこぶ状態。
だったら、グリニエルこいつに記憶を取り戻させてしまえばいいと思ったから今こうしている。」



隊長は私の後ろにいるグリニエル様に目を向けると、眉をピクッと動かした。



「お前はエミリーと婚約する気がないのだろう?
そんな腑抜けたお前はお前じゃない。
そんな見苦しいままでいるくらいなら、俺の攻撃を受けて元に戻れ。」


「っ!」



目が本気な隊長の視線を遮るように、私は少し場所を変えて視界へと入る。


「はぁ……なるほど…。
…状況は理解しましたが、内容に同意するわけにはいきません。
そんな危険なことをしなくとも、グリニエル様に衝撃を与えることは可能です。
私がやりますから、どうか隊長は……」



「っ!そうだ。」




「は?」





まだ私が話している最中、それを遮り声を出したのは隊長。

何かを思いついたようにパッと目が開き、私の腕を掴んで離さない。





「その通りだ、エミリー。
お前がやればいいんだ…
そうと決まれば行くぞ!」





「え、ちょ…った、隊長!」


私の静止など聞こえないかのように、隊長はズンズンと研究室へと向かっていく。


「グリニエル。俺に追いかけられたくなければ、お前も来い。クローヴィスの所に向かうぞ。」



「っ…くそ、行けばいいんだろ。」




その後研究室にいるクローヴィスに頼んで、私たち3人は場所を移動した。




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