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契約
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次の日、ヴィクトリア様の部屋の前で深呼吸をし、扉をノックした。
「どうぞ。」
「失礼致します。」
そう言って部屋に入ると、いつものヴィクトリア様が座っていた。そしてその後ろにはシャノン卿が立っている。
「ゼノ。昨日はごめんなさい。」
そう言われた時に途端に顔が熱くなった。
今にもキスしてしまいそうなほど顔が近付けられたことを思い出す。
「私はその間の記憶がないのだけれど、きっと驚かせてしまったわよね。」
そう言って話す彼女はとても落ち着いていた。その後ろで何も言うなと言うように、シャノン卿が頷いている。
「来て早々で悪いが、早速契約を始めよう。」
口を開いたのはシャノン卿だった。
「待って、シャノン。
彼には好きな人がいるらしいの。
だから私と契約してしまったら、私にハグやキスをしなければいけない…。
誰かに恋心を抱いているゼノにはきっと苦しいことだと思うわ。」
そう言ってヴィクトリア様が止めるのだ。
ヴィクトリア様は俺の想い人が自身だと気づいていないようだ。
「ヴィー。それは問題ない。だって…」
そう言って俺に視線を送ってきたが、シャノン卿の口から伝えられるわけにはいかない為、やめてくださいと視線を送った。
少し呆れたように一呼吸置いたシャノン卿は
「仕事なのですから。」と口にした。
「そう…。ゼノはいいの?」
一瞬悲しげな顔をした彼女は俺に意見を求めた。
「私のことは気になさらないで下さい。むしろヴィクトリア様は私でも大丈夫でしょうか?」
「ええ。私の心が弱いせいだもの。迷惑かけてごめんなさい。」
「迷惑などではありません。精一杯頑張らせていただきます。」
そう言って笑うと、ヴィクトリア様は優しく笑ってくれた。
「それでは契約を。」
「え、どうしたら良いのですか?」
何も分からない俺は慌ててシャノン卿に聞く。
するとシャノン卿は小さなナイフを取り出した。
「それでヴィクトリア様の指を軽く切って、流れた血を舐めるだけで良い。」
簡単だろう?と言うように、ナイフを渡されて俺は固まった。
幾度も戦場に出たことはあるが、それは敵だとみなして戦っているからできることであって、主人であるヴィクトリア様に傷をつけるなど出来ることではないと思った。
「ほ、他に方法はないのでしょうか。」
震える自分の手を見ながら、シャノン卿に聞く。
「シャノン。ゼノは優しいのよ。あんまりからかわないで。」
そう諭すヴィクトリア様は俺の持つナイフの刃を出した。
「ちゃんと持っててね。」
俺の手に彼女の手が重なり、違う緊張が走った。
刃に指を当て、ツプッと自身の指を傷をつけた。
「っ。」
一瞬ピクッと動いた皇女はやはり痛いのだろう。顔を青ざめる俺に、ヴィクトリア皇女は指を見せた。
「舌で舐めて?」
ドクンと心臓が跳ねる。
これは契約に必要なことだから落ち着けと自身に言い聞かせてペロッと皇女の指を舐めた。
「いい子ね。」
ニッコリと笑った彼女は、俺が舐めた指を自分でも舐めた。
「っ。」
その行動に驚き、バクバクと心臓が鳴る。
「契約できたようだな。」
シャノン卿がヴィクトリア様の指を確認すると、傷はもう消えていた。
「今のが契約ですか?」
最初から最後まで、なんて心臓に悪い契約の仕方なのだと思う。
「ああ、無事に終えることができたから、今日から忘れずにスキンシップをとってくれ。
後は私は仕事があるから失礼するよ。」
そう言ってシャノン卿はすぐさま部屋を後にした。
残された俺とヴィクトリア皇女は話すタイミングを伺っていた。
「あの。ゼノ…」
名前を呼ばれて振り返ると、顔を赤く染めたヴィクトリア皇女が立ち上がり、俯いている。
「なんでしょう?」
「早速で悪いのだけれど…抱きしめて貰えるかしら?」
「っ。」
両手を広げて待つ彼女は可愛いの一言しかない。
こんなに可愛い彼女を抱きしめてしまって本当に良いのだろうか。実は嘘でしたって突き飛ばされたりしないだろうか。
そう考えながらも俺はゆっくりとヴィクトリア皇女の前に立った。
「っ。失礼します。」
そう言ってゆっくりと抱きしめると、レモングラスの香りに包まれる。
緊張で上手く息が出来ず、心臓までおかしい動きをしていそうだと思った。
そんな俺を知る由もない皇女は、俺の背中に腕を回して顔を埋める。
スリスリと顔を擦られれば、俺はグッと理性を保った。
「ゼノ…いい香りがするわね。」
「え?何も付けてはいないのですが…」
「あら、そうなの?それじゃ、ゼノの匂いが好きなのね、私は。」
そう言って笑う彼女をもっとギュッと抱きしめたくなった。
不意にヴィクトリア様と目が合う。
すると顔を赤らめながらもニッコリと微笑んでくれた。
「…ヴィクトリア様…キスしてもよろしいですか?」
したいという衝動に駆られた俺はそう口走っていた。
「え?」
途端に顔を赤らめる彼女は少し考えて頷いてくれた。
目を瞑って待つ彼女にゆっくりとキスをする。触れるだけのそのキスは、彼女を反応させた。
「っ。」
その反応を見て俺は離れた唇をもう1度だけ重ねて離れた。
見ると真っ赤になったヴィクトリア様が俯いている。
「ゼノ…」
「…はい?」
何を言われるのかと少し身構える。
「慣れているわね…」
そう言ってムスッとする顔は俺の心を鷲掴みするようだった。
「そんなことは…」
ないと言いかけてヴィクトリア様が俺の胸に擦り寄った。
「心臓がもたないわよ…」
カミーリアが暴走した時は自らキスをしていたが、普段のヴィクトリア様はキスに耐性がないようだ。
「…明日からもよろしくね。」
「……はい。こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って名残惜しいがヴィクトリア様から離れ、いつものように生命の樹へと向かった。
「どうぞ。」
「失礼致します。」
そう言って部屋に入ると、いつものヴィクトリア様が座っていた。そしてその後ろにはシャノン卿が立っている。
「ゼノ。昨日はごめんなさい。」
そう言われた時に途端に顔が熱くなった。
今にもキスしてしまいそうなほど顔が近付けられたことを思い出す。
「私はその間の記憶がないのだけれど、きっと驚かせてしまったわよね。」
そう言って話す彼女はとても落ち着いていた。その後ろで何も言うなと言うように、シャノン卿が頷いている。
「来て早々で悪いが、早速契約を始めよう。」
口を開いたのはシャノン卿だった。
「待って、シャノン。
彼には好きな人がいるらしいの。
だから私と契約してしまったら、私にハグやキスをしなければいけない…。
誰かに恋心を抱いているゼノにはきっと苦しいことだと思うわ。」
そう言ってヴィクトリア様が止めるのだ。
ヴィクトリア様は俺の想い人が自身だと気づいていないようだ。
「ヴィー。それは問題ない。だって…」
そう言って俺に視線を送ってきたが、シャノン卿の口から伝えられるわけにはいかない為、やめてくださいと視線を送った。
少し呆れたように一呼吸置いたシャノン卿は
「仕事なのですから。」と口にした。
「そう…。ゼノはいいの?」
一瞬悲しげな顔をした彼女は俺に意見を求めた。
「私のことは気になさらないで下さい。むしろヴィクトリア様は私でも大丈夫でしょうか?」
「ええ。私の心が弱いせいだもの。迷惑かけてごめんなさい。」
「迷惑などではありません。精一杯頑張らせていただきます。」
そう言って笑うと、ヴィクトリア様は優しく笑ってくれた。
「それでは契約を。」
「え、どうしたら良いのですか?」
何も分からない俺は慌ててシャノン卿に聞く。
するとシャノン卿は小さなナイフを取り出した。
「それでヴィクトリア様の指を軽く切って、流れた血を舐めるだけで良い。」
簡単だろう?と言うように、ナイフを渡されて俺は固まった。
幾度も戦場に出たことはあるが、それは敵だとみなして戦っているからできることであって、主人であるヴィクトリア様に傷をつけるなど出来ることではないと思った。
「ほ、他に方法はないのでしょうか。」
震える自分の手を見ながら、シャノン卿に聞く。
「シャノン。ゼノは優しいのよ。あんまりからかわないで。」
そう諭すヴィクトリア様は俺の持つナイフの刃を出した。
「ちゃんと持っててね。」
俺の手に彼女の手が重なり、違う緊張が走った。
刃に指を当て、ツプッと自身の指を傷をつけた。
「っ。」
一瞬ピクッと動いた皇女はやはり痛いのだろう。顔を青ざめる俺に、ヴィクトリア皇女は指を見せた。
「舌で舐めて?」
ドクンと心臓が跳ねる。
これは契約に必要なことだから落ち着けと自身に言い聞かせてペロッと皇女の指を舐めた。
「いい子ね。」
ニッコリと笑った彼女は、俺が舐めた指を自分でも舐めた。
「っ。」
その行動に驚き、バクバクと心臓が鳴る。
「契約できたようだな。」
シャノン卿がヴィクトリア様の指を確認すると、傷はもう消えていた。
「今のが契約ですか?」
最初から最後まで、なんて心臓に悪い契約の仕方なのだと思う。
「ああ、無事に終えることができたから、今日から忘れずにスキンシップをとってくれ。
後は私は仕事があるから失礼するよ。」
そう言ってシャノン卿はすぐさま部屋を後にした。
残された俺とヴィクトリア皇女は話すタイミングを伺っていた。
「あの。ゼノ…」
名前を呼ばれて振り返ると、顔を赤く染めたヴィクトリア皇女が立ち上がり、俯いている。
「なんでしょう?」
「早速で悪いのだけれど…抱きしめて貰えるかしら?」
「っ。」
両手を広げて待つ彼女は可愛いの一言しかない。
こんなに可愛い彼女を抱きしめてしまって本当に良いのだろうか。実は嘘でしたって突き飛ばされたりしないだろうか。
そう考えながらも俺はゆっくりとヴィクトリア皇女の前に立った。
「っ。失礼します。」
そう言ってゆっくりと抱きしめると、レモングラスの香りに包まれる。
緊張で上手く息が出来ず、心臓までおかしい動きをしていそうだと思った。
そんな俺を知る由もない皇女は、俺の背中に腕を回して顔を埋める。
スリスリと顔を擦られれば、俺はグッと理性を保った。
「ゼノ…いい香りがするわね。」
「え?何も付けてはいないのですが…」
「あら、そうなの?それじゃ、ゼノの匂いが好きなのね、私は。」
そう言って笑う彼女をもっとギュッと抱きしめたくなった。
不意にヴィクトリア様と目が合う。
すると顔を赤らめながらもニッコリと微笑んでくれた。
「…ヴィクトリア様…キスしてもよろしいですか?」
したいという衝動に駆られた俺はそう口走っていた。
「え?」
途端に顔を赤らめる彼女は少し考えて頷いてくれた。
目を瞑って待つ彼女にゆっくりとキスをする。触れるだけのそのキスは、彼女を反応させた。
「っ。」
その反応を見て俺は離れた唇をもう1度だけ重ねて離れた。
見ると真っ赤になったヴィクトリア様が俯いている。
「ゼノ…」
「…はい?」
何を言われるのかと少し身構える。
「慣れているわね…」
そう言ってムスッとする顔は俺の心を鷲掴みするようだった。
「そんなことは…」
ないと言いかけてヴィクトリア様が俺の胸に擦り寄った。
「心臓がもたないわよ…」
カミーリアが暴走した時は自らキスをしていたが、普段のヴィクトリア様はキスに耐性がないようだ。
「…明日からもよろしくね。」
「……はい。こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って名残惜しいがヴィクトリア様から離れ、いつものように生命の樹へと向かった。
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