王太子は想わせ令嬢の虜〔R18〕

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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レオンノアの心配

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執務が終わる頃、街に出ていたリリィが戻ってきたことが知らされた。

私は急いで別邸へと戻る準備をする。するとそこにフレッドが来た。

「フレッド。今日は御苦労だった。2人の護衛は疲れただろう。」私は書類を束ねながら声をかけた。するとフレッドは真剣な顔で喋り出した。

「殿下。今耳に入れておきたいことがございます。」
きっといい話ではないのだろうと思いつつ、執務室のソファへと腰を下ろした。

「今日のミアリサへの訪問は何事もなく終えることができたのですが、街へ出て、買い物をしている途中から、何者かが私どもをつけている気配を感じました。接触されるかと、ずっとお2人の近くにおりましたが、遠目からついてくるだけで、何かをしてくることはありませんでした。」

「顔は確認できたか?」

「いいえ。4人いたようですが、顔までは確認できませんでした。…ただ、御者の隣に座らせていた騎士の発言によると、鞭を腰に差しているように見えたと。そう言っておりました。」

「鞭か。それだけでは特定は難しそうだな。」

「ええ。ですが、鞭を常に持つ貴族で、リリィに関わりがある者がおります。前に一度リリィに婚約を申し込んできた公爵家で、諦めが悪いことで知られております。」

「狙いはリリィか?」
「分かりません。」
確かにまだオエストから来たばかりのクロエの情報が出回る訳などなく、4人も一斉に動いていたのならば、顔見知りでなければおかしいのだ。

「断言できなくてもいい。ただの予測で構わないから、その公爵家の名を知りたい。」

「…分かりました。クレマン・ペリエ公爵でございます。」
私は何だって?と目を見開く。ペリエ公爵は王族に仕える騎馬の指南役で、三軍の使う馬は全てペリエ公爵家が面倒を見ているのだ。

「以前縁談を持ちかけられた時は、シャルル様が強く反対をしたため、リリィに伝えられることなく縁談が無くなりました。」

「噂によれば、酷い性癖があるようで…」そこまで聞いてあとは聞くのをやめた。

リリィの兄であるシャルルは国一の情報を持っている。そのシャルルが強く反対をしたと言うことは、性癖以外にもリリィが幸せになれるような所ではないと言うことだろう。

「文官シャルルはいつ頃戻るのだ。」
 
「殿下の婚儀の時になります。今は南の視察に出ており、今すぐ知らせ、戻らせても2週間はかかるかと思います。」

2週間であれば他の方法で調べさせた方が早そうだと思う。

「ペリエ公爵の近辺を調べさせろ。公爵家となれば王宮にも出入りができるため、別邸からの道も誰かに付き添わせよう。念のため父には私から話す。」

何か起きてからでは遅い。私はあらかた指示を出してから急いで別邸に戻った。


「レオン!お帰りなさい。」そう言ってリリィは私の腕に飛び込んできた。
「ただいま。リリィ。」
リリィを危ない目になど合わせない。ぎゅっと抱きしめてそう思った。

___

次の日、リリィがジュリア嬢とお茶会をすると言うので私は1人で、執務室に向かった。

今日はフレッドがリリィの護衛にと人を連れてくるという。自分の目で確かめなければ気が済まないのだ。

執務室に着くと、見慣れた顔の他にもう1人いた。
「初めまして。リオネル・ヴァージルと申します。兄がいつもお世話になっております。」爽やかに笑うリオネルはどこかフレッドと似ている。

「フレッドの弟か?」
「はい。フレッドは今リリィの妹であるティオラ嬢の護衛をしておりますが、ティオラ嬢はあまり外出をしないため、ほとぼりが醒めるまでリリィの護衛を任せたいと思っております。」

本来ならば私やウィルがついているのが1番安全だが、いつも一緒ではリリィも流石に気付いて不安になるかもしれない。かと言ってヴィヴィに任せるのは魔力が当たった時を考えると不安だから無しなのだ。

「リオネルの力量は?」
問題はそこだ。強くなければ私の大切なリリィを任せることはできない。

「年は15になったばかりですが、魔力では魔軍で私の次、手合わせさせればヴィヴィと対を張ります。何より、感知能力が高いので、常に半径10メートルを気にし、5メートルに入れば要注意をさせることも可能です。」
それは凄いと感心する。

するとリオネルが口を開いた。
「私からも、まだ確証の無い話ですが、よろしいでしょうか。」

「ああ。今のところ全て憶測でしか無いことばかりだ。言ってみろ。」

「私の憶測が正しければ、昨日、リリィをつけたと言うのはペリエ公爵の雇った者で間違いありません。実は昨日。私とティオラも街へ行っており、後をつけられたのです。」

「ティオラが?」
それに反応したのはフレッドだった。
ティオラとはリリィの妹だ。リリィと似ているが、物静かで落ち着いている令嬢という印象が強い。

リオネルはコクリと頷き、また話し始めた。
「皆さんはティオラのことを知らないので、1から説明しなければならないですね。話は長くなりますが、よろしいでしょうか?」



リオネルが言うには、ティオラには人の心を読む力があり、それは魔力と比例しているという。まだ幼いティオラは、上手くコントロール出来ていないため、周りの声がとても聞こえてしまうらしい。
だからオーウェン邸に引きこもっているのだと。

唯一、心を読むことができないのがフレッドだが、フレッドはリリィの膨大な魔力を唯一抑えられるため、リリィの騎士として側に置かれた。

ティオラには弟で幼馴染のリオネルが付いた。リオネルは心を読まれることに抵抗がなく、むしろ早く伝わるから楽だと言ってティオラの騎士になると言ったらしい。

そして3ヶ月ほど前のある日、街に出たティオラが、弱っていた馬の声を聞いて、助けたことがあった。

それをペリエ公爵に知られ、そして縁談の話を持ちかけられるようになったと言う。

「つまり、ティオラの能力を利用して、馬の能力を効率よくあげようと考えているかと思います。そして、ティオラを妻に迎えれば、リリィとの関係も強いものになる。ティオラを利用して、リリィの能力を得ようと企てているのではないでしょうか。」

全て憶測でしか無いのですが。と付け足した。

その考えならあり得るだろうと私も納得した。

「ティオラに縁談…」
フレッドは静かに口を開いた。

「ティオラはまだ14だ。もうすぐ15になるが、婚約をするには早いんだぞ。」
フレッドは少し強い口調でリオネルに言う。

グリニエルで定められた成人は16だ。それを越えなければ婚約も何も許されてはいない。

「相手はマルク・ペリエ。21だそうです。」

そう。相手が16を越えていれば、正式では無いが、家族間で話をまとめておくことはできるのだ。

「ティオラは嫌がっておりますが、どうしようもできませんでした。ティオラを助ける為に私と婚約しようにも、私もまだ15になったばかりで、認められなかったのです。」

「オーウェン公爵様も、剣軍と騎馬の関係性を悪化させることはできないらしく、身動きが取れないようです。せめてシャルル様がいてくれれば、破談にすることもできたかもしれないのですが…」

「その話が本当であれば、1番危ないのはティオラ嬢だな。」私が口を開く。

「ティオラは簡易婚約式までは家から出ないと言うので、連れ去らわれる心配は無いかと思います。私の憶測が正しければ、リリィにも危害は及ぶ事はないと思いますが、念のために護衛の仕事を受けたいと思うのです。」
それは助かる。とリオネルに言う。

「簡易婚約式はいつ行われるのだ?」
私が聞くと、
「明日です。」と返ってきた。

「随分と急な話だな。」

「婚約式と違って双方の同意があるかの確認をするだけですので、ペリエ公爵の方から早急に話を進めたいと言われたようです。」

「なるほど。どうにかして縁談を取り消すことができれば良いのだが…少し考えてみることにしよう。」
そう言って私たちは各々の仕事へと戻った。
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