地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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【side東】朝チュン…というやつ

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トントントンというリズミカルな音と、良い匂いが鼻腔に掠めてきた。それにより、いつの間にか飛んでいたらしい意識が徐々に鮮明になっていくのを感じる。薄らと瞼を押し上げてみれば…もう既に外は明るくなっており、夜が明けていたのだとぼんやりと理解した。こんな状態になるまで飲み明かしたのは…何時ぶりだろうか。懐かしい感覚である。

まだ気怠い全身にちゃんと家に帰れるかなぁ…とか考えていたら、何やらボソボソと会話が聞こえてきたのだった。
声からして、二人分。方角的には台所の方らしい。高城先生のこの部屋の間取りは簡易的なもので、広いワンルームというやつだ。

「…そ、それで…僕もうほとんど意識が無かったんだけど…何かやらかしちゃったの?」
「……………まぁ、うん。」
「……………マジか。」

どうやら話し声の主は高城先生と浅見だったらしい。二人で朝食を作ってくださっているみたい。高城先生作れたのか?それともまさかの浅見?どちらにせよ凄いな。

「周りのヤツらがいんのに……その、ちゅーしてきたぞ。」
「軽いの?」
「重いの。」
「……………東先生なんか言ってた?」
「東はもう気付いてたっぽいぞ。業務に支障をきたすレベルなら注意するってさ。」
「…………僕が言うのもなんだけど、別れさせるって人がいないよね。嬉しいけども。」

そうですよ。
俺も寝落ちする前の記憶は最低限残っているが、中々に熱いモノをぶちかましていたのは驚いた。普段大人しい高城先生にも情熱的な部分があるのだと。好きな人の前だと顔付きも男性らしくなるのだと関心してしまった。

まぁ…二人の関係に関してはなぁ。
追々って感じだよな。
二人には今まで通り楽しく学校生活を過ごして欲しい…一人間として思えてしまったのだ。

「それは、俺も思った。………ところでさ。」
「んー?」
「作りづらいから離れてくれると…嬉しいんだけど。」
「やぁだ♡」
「う、うぅ…火傷、しちゃうぞ。んむっ………ぁぅ……んんー……♡ぷはぁっ……だ、ダメだって…。」
「んへへ…かわい♡」

待て待て待て待て。
ちゅーしてる!!
昨日から思ってたけど、やっぱり高城先生って結構大胆だよな!?
生徒達から地味センって言われてるけど、大分浅見に関しては派手センじゃないか。あの浅見が完全に押されている。

「……知ってる。ゆぅしの彼氏だからかわいーのはとーぜんだもん。でも、今は危ないから離れてよ。」
「はぁい。隣で見てるのはいーい?」
「………………ん。見てて?」
「んふふっ、見ちゃう。僕のお嫁さんが朝ごはん作ってるところ見ちゃうもんね。」
「お嫁っ!………ん。ゆぅしお嫁さんだもん。」
「やっぱりかぁいいね♡」

甘っ!!!!
糖度が高すぎじゃないかあいつら。
え、あざ、浅見!?なんっっだそのキャラは。ぶりっ子してるのかアイツ…。確かにモテるが、特定の誰かと付き合う云々は聞いたことが無かったから知らなかった。そうか、あの子は付き合うと可愛くなっちゃうんだな。東先生吃驚しまくりだぞ。
えぇー…普段からあんな会話してんのか。

俺も今まで何人かお付き合いしてくれた人が何人かいたけれど、ここまでのは無かったなぁ。いやぁ…甘々だよ。
面白い、付き合ったらこの二人の性格って逆になるんだ。不思議である。



それはそうとして、こんな空気感だ。
折角目を覚ましたというのに、全く起き上がるタイミングが無い。
流石にお身体を重ねると言うことは無いのだろうが、あのラブラブな二人に声を掛ける勇気なんてない。
モゾモゾと周辺から布が擦れる音もする。他の教員陣も、雰囲気的に自分同様に起き始めているらしい。

女性陣は近くには見当たらないから恐らく高城先生のベッドに寝かせてもらっているらしい。浅見含めた男性陣は客用の敷ふとんやら、ソファを借りて寝させてもらったようだ。
完全に雑魚寝である。
何時もの自分の布団ではないから若干身体が痛い気がする。家に帰ったらもう一眠りしよう。

隣の山根先生を見てみたら、まだ眠そうな目を頑張って開けて俺の方をちらっと見てきていた。布団に籠りながらスマホでメッセージを打っている。

昨日無意識に自身のジャージのポケットの中にスマホを突っ込んでいたのだろう。
その部分が軽く震えた。
二人にバレないようにコソコソと画面を見た。案の定メッセージは山根先生からであった。

『いつ起きる?』
『……わからん。完全に二人の世界だもんなぁ。』
『二日酔とかは大丈夫か?』
『そこは平気。会話的に高城先生も大丈夫そうだな。』
『そろそろ起きた方が良い気はする。』
『理由は?』
『後ろ。』

後ろ?
山根先生がとある方向に視線を向けていた。視線の先…後ろには確か高城先生のベッドがあったはず。
なんだろ…そう思い見てみたら。

「「………。」」

な、なるほど。
じーーーーーーっと姫路先生と田中先生があの二人をガン見していたのであった。
しかもスマホを高速でポチポチしてるし。純粋に怖すぎる。
確かに。主に浅見の精神衛生上よろしく無さそうではあるな。
タイミング的に浅見の料理が終わった頃に起きようか考えていたのだが。こればかりは致し方ないだろう。

「ふぁーーぁ……おはようございます!」

自分が先陣切って起きる事にしたのだった。多分、今の俺はそういう立ち回りをするべきだと判断した。



浅見は長期期間ご両親が海外に出張していると聞いていたが。ここまでの料理ができるとは思わなかった。
俺達教員の目の前には炊きたてのご飯に、味噌汁。そして卵焼きに焼いたウィンナー。昨日バカスカ飲んだ胃に丁度いい朝食が並べられていたのだった。完璧だ、完璧過ぎるぞこの子。
嗅覚と視覚だけでもう美味しい。腹が鳴ってしまった。

「凄いな、浅見。」
「…このくらいなら誰でもできるだろ。」
「いや僕は無理だな。」
「僕も…未だに出来ないや。」
「ゆぅしはやんなくていーよ。俺が作るもん。」
「……ありがとね。」

あっっっっまぁ!!!
聞いてるこっちが照れるわ…。
姫路先生が以前進路調査で浅見の用紙を見て、高城先生のお嫁さんになりたいんだぁ…みたいな事を興奮気味にボヤいていたのをたまたま聞いてしまったが。マジだったのか。というか、薄々感じていたが…浅見はそっちなんだな。

「…おいひぃ…こんなにおいひぃ朝食は始めてです…!」
「色んな意味でうましゅぎます…!!」

女性陣は泣きながらご飯を食べていた。
涙のせいでメイクが…溶けかけている、いいのかあれは。というか何故泣く。やっぱ怖いんだけどこの人達。

「と、ところで…東先生。」
「ん?」

隣に座っていた高城先生がおずおずと声を掛けてきたのだった。先程までのイケイケな高城先生ではなく、何時もの彼だ。…変な気分だな。

「その、浅見くんから聞いたのですが。僕とこの子の関係性について…あの。」
「知ってますよ。けど、深くは追求しません。」
「……そう、なんですね。」
「あ、でも条件はあります。」
「…な、なんでしょうか?」

ここ数日間考えていたことだ。
というか、以前高城先生から前いた学校の話を聞いていた時から考えていたことである。

「俺達ともっと仲良くなって欲しいなって、思ってます。以前いた学校で出来なかったこと、したかった事を一緒にしたいなぁって。」
「……あ、東先生……。」

きっと初就任だったのだろう。
だというのに、結果はブラック企業ばりの学校であったと。先生方も、生徒達もみんな冷たく寂しい学校生活を送っていたと聞いている。理不尽な言い掛かりもあったとか。
今の俺達の学校に就任してから定時で帰れる時はそれはそれは驚いていたし。その反応からして、まだまだ彼にとって前回の学校の嫌な記憶は抜けきっていないのだろう。

「んひひ、つまりは俺と友達になってください高城先生。」
「は、はい!!なります!!」

!!!
キラキラとした瞳で力強く頷いてくれた。
嬉しい!!嬉しい!!!嬉しすぎる!!

「やった!!」
「うぐぐぐ…、く、くるしぃー!」
「ったはは!ごめんね!嬉しくて!」

ぎゅぅぅぅ!!と抱きしめてしまったのだった。自分よりも身長が高く、体育の教員でもないのに身体が程よく厚くて引き締まっている。いっつも浅見はこの身体に包まれているのかぁ。ちょっとだけ羨ましい。そりゃぁ、抱かれたくもなってしまうよな。

…ここだけの話、彼に関しては初めから気にはなっていた。
何時も何処か遠い目をしていて、基本的には誰に対しても何歩も下がった状態で話をする。きっとそうしている方が良いと前の学校で学んでしまったのだろう。

なのにここ最近の彼はどんどん元気になっていくではないか。
生徒とはいえ彼氏も出来て、しかも同期飲みもしてるとか。
正直ムカついた。
自分が一番に気にかけてサポートしていたと思っていたのだ。
多分…みんなそれぞれ俺と同じ気持ちを彼に向けていた結果なのだろう。高城先生は妙に人を惹きつける何かをもっているから。

だから、自分はこういうことしか出来ない。当初から気になっていた過去の精算を俺はしようと思ったのだ。
ずばり、嫌な思い出を良い思い出に塗り替えちゃおう作戦だ。

「改めて、よろしくお願いしますよ高城先生。」
「ふぁい……っ、うぅーー…嬉しすぎます…やっぱりこの学校にこれて僕は幸せです…!」
「ははっ!そう言ってもらえて光栄ですよ」

高城先生が目元を赤らめながら、泣き始めてしまったのだった。
ボロボロとこぼれる涙を近くにあったタオルで拭っていく。こうして近くで見ると、やはり彼は整っている顔だなぁと思う。
瞳も大きくて、こぼれ落ちる涙も大きい。

ヨシヨシとついクルクルな髪の毛を撫で回してしまった。嫌がる素振りはない。
大型犬みたいだな。

「も、もぉそこまでにしろ!」
「っわ!け、絢斗くん。」
「おっとー。なんだ浅見、彼氏取られた気分になったかよ。」
「む、むむぅー…。」

高城先生がいきなり後ろに引っ張られてしまった。浅見に引き寄せられたようだ。ぷんすこしている。彼の胸元に高城先生のお顔を押し付けている。先生も先生で驚いてはいたものの、嬉しそうに微笑んでいる。
この子がここまで自分を表現するようになったのも、良い傾向だなと思う。

「流石に俺達以外の教員は知らないと思いますけど、気をつけてくださいよ。フォローはしますから。」
「っは、はい!」
「浅見も返事は?」
「……はぁぃ。」

なんにせよ、高城先生とは友達になれたし。改めて二人の幸せそうな様子も見れたし。
これからが楽しみだな。
そう思えてしまった俺である。
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