76 / 116
【side東】朝チュン…というやつ
しおりを挟む
トントントンというリズミカルな音と、良い匂いが鼻腔に掠めてきた。それにより、いつの間にか飛んでいたらしい意識が徐々に鮮明になっていくのを感じる。薄らと瞼を押し上げてみれば…もう既に外は明るくなっており、夜が明けていたのだとぼんやりと理解した。こんな状態になるまで飲み明かしたのは…何時ぶりだろうか。懐かしい感覚である。
まだ気怠い全身にちゃんと家に帰れるかなぁ…とか考えていたら、何やらボソボソと会話が聞こえてきたのだった。
声からして、二人分。方角的には台所の方らしい。高城先生のこの部屋の間取りは簡易的なもので、広いワンルームというやつだ。
「…そ、それで…僕もうほとんど意識が無かったんだけど…何かやらかしちゃったの?」
「……………まぁ、うん。」
「……………マジか。」
どうやら話し声の主は高城先生と浅見だったらしい。二人で朝食を作ってくださっているみたい。高城先生作れたのか?それともまさかの浅見?どちらにせよ凄いな。
「周りのヤツらがいんのに……その、ちゅーしてきたぞ。」
「軽いの?」
「重いの。」
「……………東先生なんか言ってた?」
「東はもう気付いてたっぽいぞ。業務に支障をきたすレベルなら注意するってさ。」
「…………僕が言うのもなんだけど、別れさせるって人がいないよね。嬉しいけども。」
そうですよ。
俺も寝落ちする前の記憶は最低限残っているが、中々に熱いモノをぶちかましていたのは驚いた。普段大人しい高城先生にも情熱的な部分があるのだと。好きな人の前だと顔付きも男性らしくなるのだと関心してしまった。
まぁ…二人の関係に関してはなぁ。
追々って感じだよな。
二人には今まで通り楽しく学校生活を過ごして欲しい…一人間として思えてしまったのだ。
「それは、俺も思った。………ところでさ。」
「んー?」
「作りづらいから離れてくれると…嬉しいんだけど。」
「やぁだ♡」
「う、うぅ…火傷、しちゃうぞ。んむっ………ぁぅ……んんー……♡ぷはぁっ……だ、ダメだって…。」
「んへへ…かわい♡」
待て待て待て待て。
ちゅーしてる!!
昨日から思ってたけど、やっぱり高城先生って結構大胆だよな!?
生徒達から地味センって言われてるけど、大分浅見に関しては派手センじゃないか。あの浅見が完全に押されている。
「……知ってる。ゆぅしの彼氏だからかわいーのはとーぜんだもん。でも、今は危ないから離れてよ。」
「はぁい。隣で見てるのはいーい?」
「………………ん。見てて?」
「んふふっ、見ちゃう。僕のお嫁さんが朝ごはん作ってるところ見ちゃうもんね。」
「お嫁っ!………ん。ゆぅしお嫁さんだもん。」
「やっぱりかぁいいね♡」
甘っ!!!!
糖度が高すぎじゃないかあいつら。
え、あざ、浅見!?なんっっだそのキャラは。ぶりっ子してるのかアイツ…。確かにモテるが、特定の誰かと付き合う云々は聞いたことが無かったから知らなかった。そうか、あの子は付き合うと可愛くなっちゃうんだな。東先生吃驚しまくりだぞ。
えぇー…普段からあんな会話してんのか。
俺も今まで何人かお付き合いしてくれた人が何人かいたけれど、ここまでのは無かったなぁ。いやぁ…甘々だよ。
面白い、付き合ったらこの二人の性格って逆になるんだ。不思議である。
それはそうとして、こんな空気感だ。
折角目を覚ましたというのに、全く起き上がるタイミングが無い。
流石にお身体を重ねると言うことは無いのだろうが、あのラブラブな二人に声を掛ける勇気なんてない。
モゾモゾと周辺から布が擦れる音もする。他の教員陣も、雰囲気的に自分同様に起き始めているらしい。
女性陣は近くには見当たらないから恐らく高城先生のベッドに寝かせてもらっているらしい。浅見含めた男性陣は客用の敷ふとんやら、ソファを借りて寝させてもらったようだ。
完全に雑魚寝である。
何時もの自分の布団ではないから若干身体が痛い気がする。家に帰ったらもう一眠りしよう。
隣の山根先生を見てみたら、まだ眠そうな目を頑張って開けて俺の方をちらっと見てきていた。布団に籠りながらスマホでメッセージを打っている。
昨日無意識に自身のジャージのポケットの中にスマホを突っ込んでいたのだろう。
その部分が軽く震えた。
二人にバレないようにコソコソと画面を見た。案の定メッセージは山根先生からであった。
『いつ起きる?』
『……わからん。完全に二人の世界だもんなぁ。』
『二日酔とかは大丈夫か?』
『そこは平気。会話的に高城先生も大丈夫そうだな。』
『そろそろ起きた方が良い気はする。』
『理由は?』
『後ろ。』
後ろ?
山根先生がとある方向に視線を向けていた。視線の先…後ろには確か高城先生のベッドがあったはず。
なんだろ…そう思い見てみたら。
「「………。」」
な、なるほど。
じーーーーーーっと姫路先生と田中先生があの二人をガン見していたのであった。
しかもスマホを高速でポチポチしてるし。純粋に怖すぎる。
確かに。主に浅見の精神衛生上よろしく無さそうではあるな。
タイミング的に浅見の料理が終わった頃に起きようか考えていたのだが。こればかりは致し方ないだろう。
「ふぁーーぁ……おはようございます!」
自分が先陣切って起きる事にしたのだった。多分、今の俺はそういう立ち回りをするべきだと判断した。
浅見は長期期間ご両親が海外に出張していると聞いていたが。ここまでの料理ができるとは思わなかった。
俺達教員の目の前には炊きたてのご飯に、味噌汁。そして卵焼きに焼いたウィンナー。昨日バカスカ飲んだ胃に丁度いい朝食が並べられていたのだった。完璧だ、完璧過ぎるぞこの子。
嗅覚と視覚だけでもう美味しい。腹が鳴ってしまった。
「凄いな、浅見。」
「…このくらいなら誰でもできるだろ。」
「いや僕は無理だな。」
「僕も…未だに出来ないや。」
「ゆぅしはやんなくていーよ。俺が作るもん。」
「……ありがとね。」
あっっっっまぁ!!!
聞いてるこっちが照れるわ…。
姫路先生が以前進路調査で浅見の用紙を見て、高城先生のお嫁さんになりたいんだぁ…みたいな事を興奮気味にボヤいていたのをたまたま聞いてしまったが。マジだったのか。というか、薄々感じていたが…浅見はそっちなんだな。
「…おいひぃ…こんなにおいひぃ朝食は始めてです…!」
「色んな意味でうましゅぎます…!!」
女性陣は泣きながらご飯を食べていた。
涙のせいでメイクが…溶けかけている、いいのかあれは。というか何故泣く。やっぱ怖いんだけどこの人達。
「と、ところで…東先生。」
「ん?」
隣に座っていた高城先生がおずおずと声を掛けてきたのだった。先程までのイケイケな高城先生ではなく、何時もの彼だ。…変な気分だな。
「その、浅見くんから聞いたのですが。僕とこの子の関係性について…あの。」
「知ってますよ。けど、深くは追求しません。」
「……そう、なんですね。」
「あ、でも条件はあります。」
「…な、なんでしょうか?」
ここ数日間考えていたことだ。
というか、以前高城先生から前いた学校の話を聞いていた時から考えていたことである。
「俺達ともっと仲良くなって欲しいなって、思ってます。以前いた学校で出来なかったこと、したかった事を一緒にしたいなぁって。」
「……あ、東先生……。」
きっと初就任だったのだろう。
だというのに、結果はブラック企業ばりの学校であったと。先生方も、生徒達もみんな冷たく寂しい学校生活を送っていたと聞いている。理不尽な言い掛かりもあったとか。
今の俺達の学校に就任してから定時で帰れる時はそれはそれは驚いていたし。その反応からして、まだまだ彼にとって前回の学校の嫌な記憶は抜けきっていないのだろう。
「んひひ、つまりは俺と友達になってください高城先生。」
「は、はい!!なります!!」
!!!
キラキラとした瞳で力強く頷いてくれた。
嬉しい!!嬉しい!!!嬉しすぎる!!
「やった!!」
「うぐぐぐ…、く、くるしぃー!」
「ったはは!ごめんね!嬉しくて!」
ぎゅぅぅぅ!!と抱きしめてしまったのだった。自分よりも身長が高く、体育の教員でもないのに身体が程よく厚くて引き締まっている。いっつも浅見はこの身体に包まれているのかぁ。ちょっとだけ羨ましい。そりゃぁ、抱かれたくもなってしまうよな。
…ここだけの話、彼に関しては初めから気にはなっていた。
何時も何処か遠い目をしていて、基本的には誰に対しても何歩も下がった状態で話をする。きっとそうしている方が良いと前の学校で学んでしまったのだろう。
なのにここ最近の彼はどんどん元気になっていくではないか。
生徒とはいえ彼氏も出来て、しかも同期飲みもしてるとか。
正直ムカついた。
自分が一番に気にかけてサポートしていたと思っていたのだ。
多分…みんなそれぞれ俺と同じ気持ちを彼に向けていた結果なのだろう。高城先生は妙に人を惹きつける何かをもっているから。
だから、自分はこういうことしか出来ない。当初から気になっていた過去の精算を俺はしようと思ったのだ。
ずばり、嫌な思い出を良い思い出に塗り替えちゃおう作戦だ。
「改めて、よろしくお願いしますよ高城先生。」
「ふぁい……っ、うぅーー…嬉しすぎます…やっぱりこの学校にこれて僕は幸せです…!」
「ははっ!そう言ってもらえて光栄ですよ」
高城先生が目元を赤らめながら、泣き始めてしまったのだった。
ボロボロとこぼれる涙を近くにあったタオルで拭っていく。こうして近くで見ると、やはり彼は整っている顔だなぁと思う。
瞳も大きくて、こぼれ落ちる涙も大きい。
ヨシヨシとついクルクルな髪の毛を撫で回してしまった。嫌がる素振りはない。
大型犬みたいだな。
「も、もぉそこまでにしろ!」
「っわ!け、絢斗くん。」
「おっとー。なんだ浅見、彼氏取られた気分になったかよ。」
「む、むむぅー…。」
高城先生がいきなり後ろに引っ張られてしまった。浅見に引き寄せられたようだ。ぷんすこしている。彼の胸元に高城先生のお顔を押し付けている。先生も先生で驚いてはいたものの、嬉しそうに微笑んでいる。
この子がここまで自分を表現するようになったのも、良い傾向だなと思う。
「流石に俺達以外の教員は知らないと思いますけど、気をつけてくださいよ。フォローはしますから。」
「っは、はい!」
「浅見も返事は?」
「……はぁぃ。」
なんにせよ、高城先生とは友達になれたし。改めて二人の幸せそうな様子も見れたし。
これからが楽しみだな。
そう思えてしまった俺である。
まだ気怠い全身にちゃんと家に帰れるかなぁ…とか考えていたら、何やらボソボソと会話が聞こえてきたのだった。
声からして、二人分。方角的には台所の方らしい。高城先生のこの部屋の間取りは簡易的なもので、広いワンルームというやつだ。
「…そ、それで…僕もうほとんど意識が無かったんだけど…何かやらかしちゃったの?」
「……………まぁ、うん。」
「……………マジか。」
どうやら話し声の主は高城先生と浅見だったらしい。二人で朝食を作ってくださっているみたい。高城先生作れたのか?それともまさかの浅見?どちらにせよ凄いな。
「周りのヤツらがいんのに……その、ちゅーしてきたぞ。」
「軽いの?」
「重いの。」
「……………東先生なんか言ってた?」
「東はもう気付いてたっぽいぞ。業務に支障をきたすレベルなら注意するってさ。」
「…………僕が言うのもなんだけど、別れさせるって人がいないよね。嬉しいけども。」
そうですよ。
俺も寝落ちする前の記憶は最低限残っているが、中々に熱いモノをぶちかましていたのは驚いた。普段大人しい高城先生にも情熱的な部分があるのだと。好きな人の前だと顔付きも男性らしくなるのだと関心してしまった。
まぁ…二人の関係に関してはなぁ。
追々って感じだよな。
二人には今まで通り楽しく学校生活を過ごして欲しい…一人間として思えてしまったのだ。
「それは、俺も思った。………ところでさ。」
「んー?」
「作りづらいから離れてくれると…嬉しいんだけど。」
「やぁだ♡」
「う、うぅ…火傷、しちゃうぞ。んむっ………ぁぅ……んんー……♡ぷはぁっ……だ、ダメだって…。」
「んへへ…かわい♡」
待て待て待て待て。
ちゅーしてる!!
昨日から思ってたけど、やっぱり高城先生って結構大胆だよな!?
生徒達から地味センって言われてるけど、大分浅見に関しては派手センじゃないか。あの浅見が完全に押されている。
「……知ってる。ゆぅしの彼氏だからかわいーのはとーぜんだもん。でも、今は危ないから離れてよ。」
「はぁい。隣で見てるのはいーい?」
「………………ん。見てて?」
「んふふっ、見ちゃう。僕のお嫁さんが朝ごはん作ってるところ見ちゃうもんね。」
「お嫁っ!………ん。ゆぅしお嫁さんだもん。」
「やっぱりかぁいいね♡」
甘っ!!!!
糖度が高すぎじゃないかあいつら。
え、あざ、浅見!?なんっっだそのキャラは。ぶりっ子してるのかアイツ…。確かにモテるが、特定の誰かと付き合う云々は聞いたことが無かったから知らなかった。そうか、あの子は付き合うと可愛くなっちゃうんだな。東先生吃驚しまくりだぞ。
えぇー…普段からあんな会話してんのか。
俺も今まで何人かお付き合いしてくれた人が何人かいたけれど、ここまでのは無かったなぁ。いやぁ…甘々だよ。
面白い、付き合ったらこの二人の性格って逆になるんだ。不思議である。
それはそうとして、こんな空気感だ。
折角目を覚ましたというのに、全く起き上がるタイミングが無い。
流石にお身体を重ねると言うことは無いのだろうが、あのラブラブな二人に声を掛ける勇気なんてない。
モゾモゾと周辺から布が擦れる音もする。他の教員陣も、雰囲気的に自分同様に起き始めているらしい。
女性陣は近くには見当たらないから恐らく高城先生のベッドに寝かせてもらっているらしい。浅見含めた男性陣は客用の敷ふとんやら、ソファを借りて寝させてもらったようだ。
完全に雑魚寝である。
何時もの自分の布団ではないから若干身体が痛い気がする。家に帰ったらもう一眠りしよう。
隣の山根先生を見てみたら、まだ眠そうな目を頑張って開けて俺の方をちらっと見てきていた。布団に籠りながらスマホでメッセージを打っている。
昨日無意識に自身のジャージのポケットの中にスマホを突っ込んでいたのだろう。
その部分が軽く震えた。
二人にバレないようにコソコソと画面を見た。案の定メッセージは山根先生からであった。
『いつ起きる?』
『……わからん。完全に二人の世界だもんなぁ。』
『二日酔とかは大丈夫か?』
『そこは平気。会話的に高城先生も大丈夫そうだな。』
『そろそろ起きた方が良い気はする。』
『理由は?』
『後ろ。』
後ろ?
山根先生がとある方向に視線を向けていた。視線の先…後ろには確か高城先生のベッドがあったはず。
なんだろ…そう思い見てみたら。
「「………。」」
な、なるほど。
じーーーーーーっと姫路先生と田中先生があの二人をガン見していたのであった。
しかもスマホを高速でポチポチしてるし。純粋に怖すぎる。
確かに。主に浅見の精神衛生上よろしく無さそうではあるな。
タイミング的に浅見の料理が終わった頃に起きようか考えていたのだが。こればかりは致し方ないだろう。
「ふぁーーぁ……おはようございます!」
自分が先陣切って起きる事にしたのだった。多分、今の俺はそういう立ち回りをするべきだと判断した。
浅見は長期期間ご両親が海外に出張していると聞いていたが。ここまでの料理ができるとは思わなかった。
俺達教員の目の前には炊きたてのご飯に、味噌汁。そして卵焼きに焼いたウィンナー。昨日バカスカ飲んだ胃に丁度いい朝食が並べられていたのだった。完璧だ、完璧過ぎるぞこの子。
嗅覚と視覚だけでもう美味しい。腹が鳴ってしまった。
「凄いな、浅見。」
「…このくらいなら誰でもできるだろ。」
「いや僕は無理だな。」
「僕も…未だに出来ないや。」
「ゆぅしはやんなくていーよ。俺が作るもん。」
「……ありがとね。」
あっっっっまぁ!!!
聞いてるこっちが照れるわ…。
姫路先生が以前進路調査で浅見の用紙を見て、高城先生のお嫁さんになりたいんだぁ…みたいな事を興奮気味にボヤいていたのをたまたま聞いてしまったが。マジだったのか。というか、薄々感じていたが…浅見はそっちなんだな。
「…おいひぃ…こんなにおいひぃ朝食は始めてです…!」
「色んな意味でうましゅぎます…!!」
女性陣は泣きながらご飯を食べていた。
涙のせいでメイクが…溶けかけている、いいのかあれは。というか何故泣く。やっぱ怖いんだけどこの人達。
「と、ところで…東先生。」
「ん?」
隣に座っていた高城先生がおずおずと声を掛けてきたのだった。先程までのイケイケな高城先生ではなく、何時もの彼だ。…変な気分だな。
「その、浅見くんから聞いたのですが。僕とこの子の関係性について…あの。」
「知ってますよ。けど、深くは追求しません。」
「……そう、なんですね。」
「あ、でも条件はあります。」
「…な、なんでしょうか?」
ここ数日間考えていたことだ。
というか、以前高城先生から前いた学校の話を聞いていた時から考えていたことである。
「俺達ともっと仲良くなって欲しいなって、思ってます。以前いた学校で出来なかったこと、したかった事を一緒にしたいなぁって。」
「……あ、東先生……。」
きっと初就任だったのだろう。
だというのに、結果はブラック企業ばりの学校であったと。先生方も、生徒達もみんな冷たく寂しい学校生活を送っていたと聞いている。理不尽な言い掛かりもあったとか。
今の俺達の学校に就任してから定時で帰れる時はそれはそれは驚いていたし。その反応からして、まだまだ彼にとって前回の学校の嫌な記憶は抜けきっていないのだろう。
「んひひ、つまりは俺と友達になってください高城先生。」
「は、はい!!なります!!」
!!!
キラキラとした瞳で力強く頷いてくれた。
嬉しい!!嬉しい!!!嬉しすぎる!!
「やった!!」
「うぐぐぐ…、く、くるしぃー!」
「ったはは!ごめんね!嬉しくて!」
ぎゅぅぅぅ!!と抱きしめてしまったのだった。自分よりも身長が高く、体育の教員でもないのに身体が程よく厚くて引き締まっている。いっつも浅見はこの身体に包まれているのかぁ。ちょっとだけ羨ましい。そりゃぁ、抱かれたくもなってしまうよな。
…ここだけの話、彼に関しては初めから気にはなっていた。
何時も何処か遠い目をしていて、基本的には誰に対しても何歩も下がった状態で話をする。きっとそうしている方が良いと前の学校で学んでしまったのだろう。
なのにここ最近の彼はどんどん元気になっていくではないか。
生徒とはいえ彼氏も出来て、しかも同期飲みもしてるとか。
正直ムカついた。
自分が一番に気にかけてサポートしていたと思っていたのだ。
多分…みんなそれぞれ俺と同じ気持ちを彼に向けていた結果なのだろう。高城先生は妙に人を惹きつける何かをもっているから。
だから、自分はこういうことしか出来ない。当初から気になっていた過去の精算を俺はしようと思ったのだ。
ずばり、嫌な思い出を良い思い出に塗り替えちゃおう作戦だ。
「改めて、よろしくお願いしますよ高城先生。」
「ふぁい……っ、うぅーー…嬉しすぎます…やっぱりこの学校にこれて僕は幸せです…!」
「ははっ!そう言ってもらえて光栄ですよ」
高城先生が目元を赤らめながら、泣き始めてしまったのだった。
ボロボロとこぼれる涙を近くにあったタオルで拭っていく。こうして近くで見ると、やはり彼は整っている顔だなぁと思う。
瞳も大きくて、こぼれ落ちる涙も大きい。
ヨシヨシとついクルクルな髪の毛を撫で回してしまった。嫌がる素振りはない。
大型犬みたいだな。
「も、もぉそこまでにしろ!」
「っわ!け、絢斗くん。」
「おっとー。なんだ浅見、彼氏取られた気分になったかよ。」
「む、むむぅー…。」
高城先生がいきなり後ろに引っ張られてしまった。浅見に引き寄せられたようだ。ぷんすこしている。彼の胸元に高城先生のお顔を押し付けている。先生も先生で驚いてはいたものの、嬉しそうに微笑んでいる。
この子がここまで自分を表現するようになったのも、良い傾向だなと思う。
「流石に俺達以外の教員は知らないと思いますけど、気をつけてくださいよ。フォローはしますから。」
「っは、はい!」
「浅見も返事は?」
「……はぁぃ。」
なんにせよ、高城先生とは友達になれたし。改めて二人の幸せそうな様子も見れたし。
これからが楽しみだな。
そう思えてしまった俺である。
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる