地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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記憶の隙間の闇

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満足するまで自室で絢斗くんとちゅーをした。ほぼ完全にへろへろ状態ではあり、尚且つ可愛い彼の唇が赤く染ってしまっていた。見る人が見れば絢斗くんが付き合っている人と口付けをしていたということがバレてしまうだろうが。
…今回に関しては何とかなるだろう。理由としては、今現在みんな修学旅行の方に意識が完全に向けられているからだ。普段よりもお付き合いをしている僕らへ向けられる意識は低くなっている。それはこのホテルに来るまでに何となくわかっていた。だから、多少強めにちゅーをしても問題ないと判断したのであった。

甘いひとときを過ごしていたとしても、時間は誰に対しても平等に過ぎ去るわけで。
いつの間にか夕飯の時間になっていた。
絢斗くんをグループの部屋に戻るように伝えたのだった。僕の部屋から会場に向かっても良くね?と初めは言っていたのだが…流石に他のクラスも一緒だからそういう訳にもいかず、ほぼ無理矢理野田くん達のグループの部屋に戻るように説得をしたのだった。大変不満そうなお顔であったが…こればかりは致し方ない。

そんなやり取りをしていたからか、時間ギリギリに集合予定の場所に駆け付ける事になってしまった。だがやはりそんな僕の事をあまりみんなは気にしていなかったらしく、夕飯はなんだろねみたい話をしていた。組毎に整列し会場に向かったのだった。

一応このホテル内にもう一組他の学校がいるらしく、どうやら違う階にいるらしい。今の所顔を合わせることは無かった。
だからか必然的に、名前まで確認をすることはなかったのである。

夕食に関してもホテル側が配慮をしてくれたらしく、僕たち側はその学校が引き上げる時と同時に会場に入室する形になっていたのだった。
室内には洒落た音楽が流れていた。
いや、聞こえすぎていたくらいである。
つまりは…やけに室内が静かであったのだ。
ホテル内の廊下を歩いてきていた僕たちは、館内に微かに流れていた音響が掻き消されるくらいにわーわーとしながらここまで来ていたのだ。そりゃそうだ、修学旅行そのものが楽しいから多少騒いでしまうのも理解できる。そこに関して僕達教員が咎めることはしない。他の一般客にご迷惑をおかけしてしまうレベルならば叱咤する事はあるが、この程度ならば厳重注意レベルで収まる。
だというのに、ここの場所はそんなBGMが大きく聞こえてしまうレベルに生徒達の声が全く聞こえてこなかったのだった。

話によれば、夕飯は所謂バイキング形式であった。友人達と何を食べる、何が美味しそうかという話で盛り上がりを見せると思うのだが。それも一切なかったらしい。
…………嫌な予感が脳裏に巡っていく。

もう既に眼前には相手校の生徒たちが、こちらの出入口に向かい揃った足並みでこの会場を退出してくるのが目に見えた。
ザッザッザッと、まるで軍隊みたいで。
より胸の奥がザワザワとする。

「…………………ぁ。」
「……高城先生?」

ドクンッ!
心臓が大きく一拍脈を打った。
え。
………やはり、そうか。
他の学校も大抵は一年の行事の流れは同じだろうから…そうだよな。

でも、でも
ど、どうしよう。
姫路先生が声をかけてくれているのに、喉から声が出なかった。
足元がフラフラする、サァァーと血の気が引いていくのがわかった。
これは、拙い。
非常にピンチだ。
グルグルと思考を巡らせていたその時……。

ポンポン

「………ぁ、ひ、ひめ……姫路…せんせ……。」
「大丈夫。大丈夫ですよ。少し深呼吸しましょう。」
「は、は……い。」

緩く、安心させるリズムで僕の背に小さな掌が撫で付けられたのだった。
それをしてくれたのは…説明するまでもない。姫路先生であったのだ。
手の動きはただぽんぽんとしているだけだというのに、安心感の度合いがやらかした幼子をあやす様な動きであった。だが、今の僕の何かが決壊してしまいそうな心を収めるには十分過ぎたのである。

目の前のA組はもうゆっくりと動き始めていたから、B組もそれに続くように動いていかなければならない。だから彼女に支えられるように会場に入っていく。既に相手校の半分は退出済みであり、軽く後方を振り返ってみたらそこの生徒達は既にいなくなっていた。
続々と今から出てくる学校の生徒達の制服が…より鮮明に見えてくるわけで。

「………やっ、ぱり」

修学旅行だというのに誰一人として笑顔もなく、制服も一切着崩していない。
あの独特の冷めた空気。

生徒たちの顔は全員知らないが………。
引率者であろう大人…一人の教員とすれ違った。
チラッと、こちらに一瞬だけ向けられた視線。

「………!」
「……っ…。」

自分の瞳とたまたまた僅かに瞳がかち合い、見開かれた瞳がそこにはあった。
だが、直ぐになんでもないようにすました顔に戻ったのである。覚えている。
忘れるわけがなかった。
あの過去の記憶を。


グイッ


「……わ」
「行こ、ゆぅし。」
「……ん。」

…絢斗くん。
夕飯会場に突っ立ったままであった僕の隣に立ち、室内に腕を引っ張ってくれた。
腕は引っ張られていたのだが、背にも幾つもの手が添えられていて。その複数の暖かさに若干泣きそうになってしまったのである。相変わらず彼らにはお世話になりっぱなしだな。

そのまま絢斗くん達が誘導してくれて、教員席に無事に着席できたのだった。僕一人であれば間違いなく明日の朝イチに冗談抜きで帰っていた自信がある。それを実行する隙を与え無いあたり、僕は最低限大切にされているのかと…ほんのりと口角が上がってしまったのだった。

着席してみたら、夕飯の時間は既に始まっているというのに誰も何も取りに行かなかった。代わりに山根くん達にじっと見つめられてしまい非常にやりずらい空間になっていたのである。

「それで、あの学校なのか?前高城くんがいたのは。」
「……う、うん。」

そう、誰もが予想ができてしまうほどに、きっと今の僕は酷い状態なのだろう。
このテーブルに腰掛けている先生方には…やはり隠し事は出来ない。
そんなことを再確認したのであった。
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