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【side田所】救出しに来たのは良いものの、コレジャナイ感
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金田の諸々探知機スマホを駆使し、絢斗が連れて行かれた廃工場に俺達は到着する事が出来た。
到着できたのは良いのだが。
このだだっ広い敷地。具体的に何処にいるのかを割り出せるかが問題だと考えていたのだが…。
「だいじょーぶ♡見えるよ♡」
「なんでもありだなお前。」
「高性能のやつを使ってるからぁ♡」
趣味でやっている事なのだろうが、将来ホワイトハッカーとか探偵業とかそっち方面に就職した方が良いのでは?と思えてしまうくらいに有能であったのだった。こいつが敵陣営側だった場合、間違いなく勝ち目がないな。味方でよかったと心底思う。
通常のこういった連れ去り事件ならばもっと見つけ出すのに困難なのだろうが。こんなにも手軽に居場所を割り出されてしまって…。相手側も気の毒だな…とかちょっと呑気に考えてしまった。それくらい余裕が出てきた。
残るは絢斗が無事であれば完璧である。
「………。」
「高城くん、もう少しだから落ち着け。」
「……わかってる。」
終始無言であった高城先生。
普段穏和な人が怒るほど怖いというのは本当なのだなと思った。
来る途中に彼の使っていたスマホが、怒りの握力で圧壊していたのを見た時…本当にやばいと思ってしまった。周りの教員達も驚愕していたし。心の底から激怒しているのだな。それだけ絢斗の事を思っているのだろうが、まだ…まだもう少しだけ落ち着いて欲しい。
折角ならば絢斗を連れていった輩に全力でぶつけて欲しいな。
「あ、メインの工場にいるみたいです!高城先生行きましょう!」
「うん。ありがとね。」
そう声を発した時に、隣にいた野田が高城先生の腕を掴み制止をかけた。
「待って先生。」
「…な、なに?」
「ここ、敷地が広いでしょ。もう少し慎重に行くべきだよ。他の奴も隠れてるかも。」
「……けど、その間に絢斗くんが…」
「なら、俺と野田と田所が先に急ぎで行きますよ。その後ろから付いてきてください。野田、それなら良いだろ?」
「…まぁ、それなら。」
東先生も野田が言いたいことを察したらしく、そう提案をしてくれた。
確かに妙に静かだ。
静かな割に視線を感じる。複数。
そう感知できる自分に呆れてしまった。
きっと絢斗と一緒に喧嘩をするようになったからなのだろうな。
警戒をしながら歩いていたが、特に相手側が襲ってくることもなく目的地に到着したのだった。建物全体はもう何年も前に閉鎖されたらしく、窓ガラスは所々割れており草木に侵食されている箇所が見受けられた。
そして何やら一番大きなその工場から騒ぎ声が聞こえてきたのだった。和やかな話し合いをしているようなものではなく、完全に怒号…というより叫び声に近い。
ビンゴであったようだ。
様々な声が響き渡っているが、その合間に絢斗らしき声も聞こえる。良かった、意識はあるみたいだ。
「……絢斗くん…!!」
「あ、ちょっ……!高城先生!!」
もう少し中の状況を確認したかったのだが、我慢できなかったらしい。高城先生が駆け出し、廃工場の中に入ってしまったのだった。巻き込まれる可能性もあるので彼一人にさせる訳にもいかず、自分達も中に侵入せざるを得なかった。
「…せんせ……どわっ…!!」
「え、た、高城先生…?」
「いや………あの……。」
もっと奥に入っていったのかと思えば、すぐそこに彼が立ち竦んでいたのだ。勢いを殺せずに思いっきり高城先生の背中にぶつかってしまった。鼻が痛い。相変わらずいい身体してんな。
様子からして唖然としているらしい。
どうしたんだ?そんなにも悲惨な現場なのだろうか、彼が見つめている先を見てみたら…。
「「「わ、わぁ……。」」」
確かに、悲惨な現場ではあった。
室内に入った瞬間にムワッと埃っぽさと…鉄の臭いが混ざった臭いが広がっていた。
コンクリートの床には数十人の律盟学園の制服を着た生徒達らしき人物達が倒れ込み、唸っている。桐谷も同様らしい。あの赤髪は離れていてもよく目立つからすぐに見つけられた。
そしてそんな屍達の中心に肩を上下に揺らしながら立っている人物が一人だけいたのだった。
律儀に例のキーホルダーを付けたリュックを背負っている姿が中々シュールである。
良かった…無事だったみたいだ。
「絢斗くん…!!!」
そう、我が校が誇る喧嘩番長と言われちゃってる友人。絢斗が居たのであった。
すげぇ…今までこんな人数を相手取ったことは無かったのだが、いけたんだなぁ。しかもここ最近喧嘩もしていなかったのに。ブランクとか奴には関係ないらしい。
高城先生が彼の元に駆け出していく。
声を掛けられた絢斗は始めは険しい顔をしていたのだが、愛しの彼を視界に入れた途端に…。
「ゆーーし!!!わ、む、迎えに来てくれたのか?うれしぃ♡」
「ぁ、あの……これ……。」
一気にいつもの高城大好き絢斗くんになってしまった。ぴょんぴょんとその場をはねて彼に抱き着いていた。元気だなぁ。
高城先生もこんな状況に先程までの怒りが霧散してしまったらしく、今はこの現状について焦っているみたいだ。
「この人たち…な、なんで倒れて…まさか……。」
「うん!俺が全部やっつけた!!」
「………………ひぇぇ。」
ドン引きしてるじゃねぇか。
いや、するか。
高城先生の前では完全ににゃんこな絢斗だもんな。番犬モードは今はもう殆ど目の当たりにする事は無いだろうし。
先生もいつの間にか喧嘩番長な彼を忘れてしまっていたのかもしれないな。
「……俺、頑張った……。」
「う、うん……凄いよ。」
「こ、こわい?こんなけんと、きらい?」
「嫌うわけないでしょ…。」
「……ほんと?あの………その…………。」
「?」
モジモジしてる。
そういうムーブもできるんだな。
「ご、ごごごほーび………ほしーなぁ?」
「…………おうち帰ったら、あげようね。」
「ん♡」
あららぁ…。
そういう事も言っちゃうんだなあの子は。
見ているこっちが小っ恥ずかしいのだが。
隣で息を荒くしながら、スマホのメモ機能に全力で何かを打ち込んでるうちの担任の姫ちゃんと、田中先生がとにかく怖い事だけは伝えておこう。
なんだろなぁ、もう少し緊張感を持つべきだと思うのだが。
ここまで色んな戦力が高い奴らが揃ってると、案外こんな感じに落ち着いてしまうものなのだろうか。
「良いのか…こんなので。」
「もう、いーんじゃね?」
野田も笑っていたので、良しとする事にした。
到着できたのは良いのだが。
このだだっ広い敷地。具体的に何処にいるのかを割り出せるかが問題だと考えていたのだが…。
「だいじょーぶ♡見えるよ♡」
「なんでもありだなお前。」
「高性能のやつを使ってるからぁ♡」
趣味でやっている事なのだろうが、将来ホワイトハッカーとか探偵業とかそっち方面に就職した方が良いのでは?と思えてしまうくらいに有能であったのだった。こいつが敵陣営側だった場合、間違いなく勝ち目がないな。味方でよかったと心底思う。
通常のこういった連れ去り事件ならばもっと見つけ出すのに困難なのだろうが。こんなにも手軽に居場所を割り出されてしまって…。相手側も気の毒だな…とかちょっと呑気に考えてしまった。それくらい余裕が出てきた。
残るは絢斗が無事であれば完璧である。
「………。」
「高城くん、もう少しだから落ち着け。」
「……わかってる。」
終始無言であった高城先生。
普段穏和な人が怒るほど怖いというのは本当なのだなと思った。
来る途中に彼の使っていたスマホが、怒りの握力で圧壊していたのを見た時…本当にやばいと思ってしまった。周りの教員達も驚愕していたし。心の底から激怒しているのだな。それだけ絢斗の事を思っているのだろうが、まだ…まだもう少しだけ落ち着いて欲しい。
折角ならば絢斗を連れていった輩に全力でぶつけて欲しいな。
「あ、メインの工場にいるみたいです!高城先生行きましょう!」
「うん。ありがとね。」
そう声を発した時に、隣にいた野田が高城先生の腕を掴み制止をかけた。
「待って先生。」
「…な、なに?」
「ここ、敷地が広いでしょ。もう少し慎重に行くべきだよ。他の奴も隠れてるかも。」
「……けど、その間に絢斗くんが…」
「なら、俺と野田と田所が先に急ぎで行きますよ。その後ろから付いてきてください。野田、それなら良いだろ?」
「…まぁ、それなら。」
東先生も野田が言いたいことを察したらしく、そう提案をしてくれた。
確かに妙に静かだ。
静かな割に視線を感じる。複数。
そう感知できる自分に呆れてしまった。
きっと絢斗と一緒に喧嘩をするようになったからなのだろうな。
警戒をしながら歩いていたが、特に相手側が襲ってくることもなく目的地に到着したのだった。建物全体はもう何年も前に閉鎖されたらしく、窓ガラスは所々割れており草木に侵食されている箇所が見受けられた。
そして何やら一番大きなその工場から騒ぎ声が聞こえてきたのだった。和やかな話し合いをしているようなものではなく、完全に怒号…というより叫び声に近い。
ビンゴであったようだ。
様々な声が響き渡っているが、その合間に絢斗らしき声も聞こえる。良かった、意識はあるみたいだ。
「……絢斗くん…!!」
「あ、ちょっ……!高城先生!!」
もう少し中の状況を確認したかったのだが、我慢できなかったらしい。高城先生が駆け出し、廃工場の中に入ってしまったのだった。巻き込まれる可能性もあるので彼一人にさせる訳にもいかず、自分達も中に侵入せざるを得なかった。
「…せんせ……どわっ…!!」
「え、た、高城先生…?」
「いや………あの……。」
もっと奥に入っていったのかと思えば、すぐそこに彼が立ち竦んでいたのだ。勢いを殺せずに思いっきり高城先生の背中にぶつかってしまった。鼻が痛い。相変わらずいい身体してんな。
様子からして唖然としているらしい。
どうしたんだ?そんなにも悲惨な現場なのだろうか、彼が見つめている先を見てみたら…。
「「「わ、わぁ……。」」」
確かに、悲惨な現場ではあった。
室内に入った瞬間にムワッと埃っぽさと…鉄の臭いが混ざった臭いが広がっていた。
コンクリートの床には数十人の律盟学園の制服を着た生徒達らしき人物達が倒れ込み、唸っている。桐谷も同様らしい。あの赤髪は離れていてもよく目立つからすぐに見つけられた。
そしてそんな屍達の中心に肩を上下に揺らしながら立っている人物が一人だけいたのだった。
律儀に例のキーホルダーを付けたリュックを背負っている姿が中々シュールである。
良かった…無事だったみたいだ。
「絢斗くん…!!!」
そう、我が校が誇る喧嘩番長と言われちゃってる友人。絢斗が居たのであった。
すげぇ…今までこんな人数を相手取ったことは無かったのだが、いけたんだなぁ。しかもここ最近喧嘩もしていなかったのに。ブランクとか奴には関係ないらしい。
高城先生が彼の元に駆け出していく。
声を掛けられた絢斗は始めは険しい顔をしていたのだが、愛しの彼を視界に入れた途端に…。
「ゆーーし!!!わ、む、迎えに来てくれたのか?うれしぃ♡」
「ぁ、あの……これ……。」
一気にいつもの高城大好き絢斗くんになってしまった。ぴょんぴょんとその場をはねて彼に抱き着いていた。元気だなぁ。
高城先生もこんな状況に先程までの怒りが霧散してしまったらしく、今はこの現状について焦っているみたいだ。
「この人たち…な、なんで倒れて…まさか……。」
「うん!俺が全部やっつけた!!」
「………………ひぇぇ。」
ドン引きしてるじゃねぇか。
いや、するか。
高城先生の前では完全ににゃんこな絢斗だもんな。番犬モードは今はもう殆ど目の当たりにする事は無いだろうし。
先生もいつの間にか喧嘩番長な彼を忘れてしまっていたのかもしれないな。
「……俺、頑張った……。」
「う、うん……凄いよ。」
「こ、こわい?こんなけんと、きらい?」
「嫌うわけないでしょ…。」
「……ほんと?あの………その…………。」
「?」
モジモジしてる。
そういうムーブもできるんだな。
「ご、ごごごほーび………ほしーなぁ?」
「…………おうち帰ったら、あげようね。」
「ん♡」
あららぁ…。
そういう事も言っちゃうんだなあの子は。
見ているこっちが小っ恥ずかしいのだが。
隣で息を荒くしながら、スマホのメモ機能に全力で何かを打ち込んでるうちの担任の姫ちゃんと、田中先生がとにかく怖い事だけは伝えておこう。
なんだろなぁ、もう少し緊張感を持つべきだと思うのだが。
ここまで色んな戦力が高い奴らが揃ってると、案外こんな感じに落ち着いてしまうものなのだろうか。
「良いのか…こんなので。」
「もう、いーんじゃね?」
野田も笑っていたので、良しとする事にした。
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