地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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嵐が過ぎ去った後はちゅーが待ってる

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何やら僕達が到着するまでにとんでもない事があったらしいのだが…絢斗くんも無事確保出来たし、一先ずは安心出来たのだった。
…それにしてもまさか数十人を相手に完全勝利してしまうあたり流石というか…純粋に強いなぁと思えてしまった。
普段はかぁいい絢斗くんだけども、以前は喧嘩していたんだよね。
こんなに目の前でくふくふと上目遣いで僕におねだりを強請っているのに、強いんだ。ギャップが凄まじい。

「怪我…とかは?」
「無いぞ。あ、あったとしたら…拳?」
「そっか……それよりさ。」

その怪我というか痛むのって要は…拳を相手に振るったからだよね。ちょっと理由は怖いけれども、自分の身を守るために致し方なくした事だし。深く追究するつもりはなかった。頑張った証だ。
どちらかというと…今の彼の服装の方が気になったのだ。

「ん?」
「シャツ、どうしたの?あと…手首…。」
「あ。」

釦が全て無くなっており、前部分が完全に開けられている状態だ。肌着を身につけていなかったらしく、白い肌が出てしまっている。数日前までに付けた僕の所有印と、愛らしいおっぱいもだ。この状態で闘っていたとか…ヤバすぎるだろう。
だがこれを彼が自ら進んでしたことでは無いのは分かりきっている。
取り敢えずこの手首について知らなければ。そう判断し、そっと両手を掬い上げ、赤らんでいる手首を自分の顔の近くに寄せたのだった。

「…………………なぁに、これ。」
「あの…………えとぉ……。」

絢斗くんからの話によると、ここに連れてこられてから直ぐに手足を縛られてしまっていたらしい。
その後、桐谷くんと揉めてシャツを破られたが、すぐさま自力で縄を解いたのだとか。縄って…そんな簡単に解けるのか。
よく頑張ったといえば…そうなのだが…。話を聞いて余計に腹が立った。
縛るってなんだよ。完全に許されるような行為ではない。しかもこんなにも手首が赤く擦り切れてしまって…。しかも彼の身体を見たとか、許せない。あの音声からして完全に彼に行為を求めた時のものだろうな。あぁ…収まっていた感情がふつふつと溢れてきた。思わず、掴んでいた彼の手を強めに掴んでしまった。いけないな、これ以上傷付けては駄目だ。
一旦手をパッと離し、自分が着ていたカーディガンを脱いで彼に着せたのだった。

「ゆ、ゆぅし…?」
「これ…着てて。」
「ん。ふへへ…ゆーしのカーディガンだ。俺これ好きぃ…♡」

可愛い。とってもかぁいい僕の絢斗くん。
今回こちらの戦力が高かったからこのような平和的な結果に落ち着いたのだ。運が良かっただけの話。
だが、僕一人だけだったり…もし金田さんの探知が機能していなかったり、絢斗くんが負けてしまっていたりしたら………。
きっと最悪な結果になっていたのだろうな。本当に運が良かった。
みんなの力が奇跡的に重なりこの結末に辿り着けたのだ。

そしてそれは…反対に相手からしたら最悪な結末になっているということも、僕は忘れてはいけないな。



「藤本くん。」
「……………良かったな、浅見くんが無事な状態で救出出来て。」
「全くだよ。一歩間違えたら大惨事だっただろうね。」

振り返ってみれば、数メートル先に藤本くんが一人立っていたのであった。
その顔には何の感情も浮かべておらず、真顔。
僕が彼に声をかけると、直ぐさま隣に絢斗くんが並び腕を掴んでくれた。他のみんなも同様に近くにいてくれている。
僕は今…一人ではないのだ。

「考えていたんだ、ここに来るまで。君に対してどうしてやろうかって。殴るのも暴言を吐くのも簡単だ。けれども、恐らく決定打にはならない。」
「………。」
「だから考えた結果、僕は藤本くんとの事を完全に無かったことにしようと思う。今回の件も心底腹が立つけども、無かったことにする。僕達は他人だ。知り合いでもない。だから、今後一切関わることもない。それでいこうと思う。」

多分だけど…僕達は関わってはいけない存在だったのかなって思えたのだ。お互いに。
僕は弱い人間だから、誰かに縋っていないと頑張れないのだ。絢斗くんに対しても…きっとすごく甘えてしまっている。彼自身が強く芯があるからブレずに居られるが、普通の人であれば重荷でしかない。

対して藤本くんは良くいえば引っ張っていくタイプで、悪く言えば支配したい側の人だ。一人でなんでも出来るが、周りに人がいる方が頑張れる人なのだ。しかも自分を持ち上げてくれる人がいればなおさら。

ある意味お互いに噛み合っているように見えて、そうではなかったらしい。
あの時藤本くん自身もきっと、色んなプレッシャーもある中僕のことも見なきゃいけなかったし…きっと重荷になっていたのだと思う。僕も悪い。もっともっと自分で頑張ればよかったのだ。
だから、あんな風に藤本くんは立ち回ってしまっていたのかなって。言葉は悪いがストレス発散ゆえの…行動でもあったのかなと。僕にとってはとんでもないけど。
怒りが一周回って冷静になった結果そういう考えに辿り着けた。

「……お互いに、しんどかったと思うんだ。だから、もうやめよう。」

そう一方的に伝えた途端…。

「ふざけるな!!!!!今更…今更高城の事を諦めるとか…無理に決まってんだろうが!!!!何様だお前は!!」
「っぅ…!!」
「ゆぅし!!…っわ!!」

廃工場内全体に響き渡るほどの怒号を発してきたのだった。
一気に距離を詰められ、肩を掴まれる。
ギリッ…と強い力だ。思わず顔をしかめてしまった。
すごい気迫だ。
だが、向き合わなきゃ。
引き剥がそうとする絢斗くんを止め、野田くんたちの方に押し付ける。

「そこにいなさい。……ほら、藤本くん。二人で話そうよ。」
「お気遣いありがとう高城。だがな、さっきの提案は俺は飲まない。」
「…理由は?」
「何度でも言ってんだろ、俺はお前が居なきゃ……駄目なんだよ。」
「理由がいまいちわからないんだ。僕にはそこまでの価値がないと思う。もっとすごく素敵な人を求めるべきだ。」

そう言うと、藤本くんは一瞬ポカンとした顔をしたのだった。そして困ったようにため息を一つ吐いた。
何か、間違ったことを言ってしまったのだろうか…?

「……お前さぁ、ここまで周りに人を引き連れてまだそんなこと言ってんのかよ。周りの奴らも気の毒だな。」
「?」

そっと…頬に手を添えられた。
さっきのような乱雑さはなく、大切な物を扱うような具合で。

「……高城、これは単純な話だ。」
「な、なに……。」

何かを決めたような…真っ直ぐな視線を僕に向けてきたのである。


「好きだよ。ずっと、ずっと好きだったんだ。」


沖縄でも、そう言ってくれていたが。
なんだろうか…言葉の重みが段違いだった。
思わず…頬に熱が集まってしまった。
な、なんだよ。こんな状況なのに。
思わず言葉が喉に詰まってしまった。

「……ぇ、あの……。」
「初めはさ、単なる同期の奴だって思ってたんだ。だけど、毎日お前の手伝いとかするようになって、高城の努力する姿とか、がむしゃらに頑張る姿とか見てさ。偉いなぁって。苦手な分野とかも他の先生方に教わりながらも食らい付いてさ。」
「……。」
「その内どんどんお前の努力も認められて、色んな仕事も任されて。高城は単に仕事が増えて大変だっただろうけど、違うんだあれは。お前が認められていた証拠なんだぞ?本当にどうでもいい奴に仕事なんか任せるかよ。」
「そ、そうなの?」

本気で嫌がらせかと思ってたけど。
違ったのか…。

「だからまぁ……埋もれそうだったから、ちょっとちょろまかして俺に流しちゃったけど…黙って。それはごめんな。」
「……う、うそだ…だって、君は…。」
「わかってる。お前のこと下げることしたもんな。そりゃぁ…ほら、好きな奴にみんなが集中すると…やだろ?」

いやいやいやいや…。
なんだよそれは。
ちゃ、ちゃっかり指を握らないで欲しいのだが!周りからの視線も突き刺さっていて非常にしんどい。特に絢斗くん。

「………だからって、酷過ぎじゃないか?!」
「それも、ごめん。本当にもうしない。それだけ、本気だってことを知って欲しい。」
「……これに関しては?」
「それは…………謝んない。」
「………………僕も、許さないよ。」
「いいよ、許さなくて。だからさ……俺のことを完全になかったことにしないで。頼む、恨んでていい、嫌ってていいから……。」

ボロボロと泣き始めてしまった藤本くん。
切れ長な綺麗系のお顔を持ち合わせている彼が、あの完璧な彼が子どものように大きな涙を零していた。
この彼も…僕は知らなかったな。
ここまで胸の内を曝け出すこととか…あの時はそうすることが出来るほどの余裕もなかったから。こんな状況になって知れるとか…人生何が起きるか分からないものだな。

「ふ、藤本……くん。」
「………好きで、いさせて欲しいってこと。いーい?」
「……も、もう、こんな事しないって…約束できるなら。」
「………ん。わかった。今度こそ、約束する。好きな人に迷惑はかけたくない。」
「そ、そそそそっか……。」

一先ず、約束は取り付けられた。
それだけでこの件はもう十分解決したと思える。他のみんなは燻る部分はあるだろうが、それは僕が話をつけるとしよう。何なら飲み会を僕の方から開くから。
そう考えていたら、藤本くんは涙を袖で拭っていた。
そして……一瞬…ニヤッと笑ったのである。

「だけど、やっぱり振り向いて欲しいから…。」
「え……?」

瞬間、僕の胸元のネクタイを引っ張られ、急速に互いの顔の距離が詰められたのだ。
そして口元にふにっ……と柔らかい物が触れる。
頭が…追い付かない。
途端に、今度はみんなの叫び声が廃工場内に響いたのだった。み、耳が壊れる。

目の前の藤本くんはそんなことは全く気にせず、ゆっくりと唇を離したのだった。
もうボロ泣きの彼はそこにはおらず、いつもの高慢そうな笑顔の彼がいたのであった。
一気に顔が熱くなっていく。
こ、こいつ…!!

「こういうことは…する。」
「な………ななななななぁぁ!???!」
「ふはっ!!やっぱり、高城は俺に振り回されてる顔が一番…いいな!」
「ーーーー?!?!?ぐえっ!!!」

ギュンッ!!と襟元が掴まれ彼から無理矢理引き剥がされたのだった。
助かったけども一瞬息が止まったぞ!?!

「藤本おまえ!!!!!!ぜってーーーに許さ……どわっ!!」
「け、絢斗くん!!」
「いででで……え?」

どうやら僕を引っ張ったのは絢斗くんだったらしい。彼の腕の中に収まった僕。僕を挟み藤本くんにシャーシャーしていると思ったら、今度は絢斗くんがひっぺがされたのだった。何だこの状況。
そして、自分の前にはまさかの山根くんが立っていたのである。

「や、山根…くん?」
「藤本先生が高城くんにちゅーした。」
「え、うん。」
「浅見だけしかしちゃいけないのかと思ってたけど、僕がしてもいーのか?」
「え…………え?」

すっごい純粋にキラキラした眼差しで見られてる。
なに、何言ってんのこの人?

「僕も高城くんにちゅーしたい!!」
「あ、ずるい!!俺も!!俺も高城先生にしたい!!」
「るみも!!!浅見くんばっかりずるい!!!」
「じゃぁ、俺も。せっかくだし。」
「俺もー!する!!」

何言ってんだこの人達!!

「まって…まって…どーいうことなの…?!」
「本が…厚く…なってます…!!」

こんな状況においても通常運転なのが逆にすごい!!

「だ、ダメだー!!!ゆーしは俺の!!!誰もちゅーしちゃダメだ!!藤本お前本当に許さねぇかんな!!」
「っははは!ざまぁみろ浅見くん!!」
「お、落ち着いてくださーーーい!!!!」

「え、なにこれ…。」

気絶していたらしい桐谷くんが騒ぎ声により気が付いたらしい。
も、もうこの際君でもいいから!!

「桐谷くん助けてぇぇぇぇ!!!!」
「え、なに?え?え?」
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