地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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頑張った証拠だよ

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桐谷くんも無事目覚め、彼の指示により伸びていたご友人の皆さんを先に帰らせるようにしてもらった。全体的に重い負傷者はいなかったのは不幸中の幸いだろうか。喧嘩慣れしている彼等からしたら日常茶飯事程度であったらしく、特に問題はなかったようだ。寧ろ次は絶対に倒す!!と張り切っていた。元気だなぁと思う。

「それで、桐谷。お前は今後どーすんの?」
「今後って…浅見くんのこと?」
「だなぁ。また拉致られたらたまったもんじゃねぇし。今の内に話つけよーぜ。」
「……藤本はどーすんだよ。」

野田と田所くんにそう問われていた桐谷くんは、藤本くんに視線を向ける。

「……俺としては話すものは話したし。また何かやったとしても恐らくこの面子だと直ぐに突破されそうだしな。今後は正々堂々とするか。」
「なら、俺もそうするよ。」

身体的には疲労が見えていたが、その二人の瞳はまだ爛々としており、諦めてくれる気配がなかった。

「…何にせよ、今回のこの件はもう終わりってことでいいですよね?」
「そうだな。」

東先生が恐る恐る藤本くんにそう訊くと、一つ大きく頷いていた。
良かった……色々と今後の課題が出てきたように見受けられるが、一先ずは終わったのだ。
…どっと気持ちが緩んだ気がする。


ドサッ


隣でそんな音が聞こえた。
見てみると…。

「け、絢斗くん…?」
「あ、あははは……。な、なんか…腰が抜けちゃった。」

床にぺたりと座り込んだ絢斗くんがいたのだった。よく見てみると肩も手も震えており、若干涙目である。
…それもそうだ。
いくら喧嘩が強い彼とはいえ、いきなり連れ去られて、色んな意味で襲われそうになったのだ。恐怖を全く感じなかったという事はないのだ。
先程までのはきっと何が起きても対応できるように、最後まで気を張っていたのだろう。本能的に。
そしてそれが今解けた。
やはり、この子は凄い。本当に偉い。一人でここまで頑張るだなんて、普通は出来ないことだよ。

彼の隣にしゃがみこみ、そっと震える背を抱き締めた。僕自身も、その姿に対して僅かに鼻の奥がツンとした。

「……よく、頑張ったね。もう大丈夫だよ。」
「ーーーっ、ぅん…。こ、こわかったよぉ…ぅぅーーーー…!」
「そうだよね、早くお家帰ろうね。」
「ぅ、ん………うん。」

身体を離し、額を合わせる。
目元を赤らめてポロポロと涙を零していた。喧嘩が強いけども、本当は喧嘩が大の苦手だと彼は言っていた。それを知っていた彼の友人達が今年度から喧嘩をさせないように手を回していたとも、言っていた。だから、長らくしなかった期間があった。久しぶりの恐怖に直面する形になっていたと思う。より怖かっただろう。それでも最後まで諦めずに闘い抜いてくれたのだ。
絢斗くんは…困難に立ち向かえる子なのだな。
わしゃわしゃと髪を撫でてしまった。

まだまだ全然身体の震えが止まらない。きっと帰るのも一苦労だろう。そう判断し、彼の背と膝裏に腕をまわし、抱え上げて立ったのだった。

「っぅえ!?ゆ、ゆーし?!?ままままって!!えぇ!?」
「よし、帰ろうか。」
「いや、帰ろうかじゃなくて!!!おぉお姫様抱っこって…!」

抱えると途端に手足をバタバタと振りながら声を震わせ、お顔を真っ赤にさせていた。慌ててる。かぁいい。

「?立てなさそうだからこうした方が良いかなって…。」
「ふぇぇ……。」
「それに、これなら絢斗くんのお顔も見れるし。良いでしょ?」
「ーーーっか、かっこいいよぉ…。」
「そ、そうかな。絢斗くんの方が格好良いよ!」
「ぁ、ありがと…。」

きっと抱えられた事が恥ずかしかったのかも。でもこんな状態の彼を放置する訳にもいかないし。離れてしまっていた分、こうして触れたかったのも事実だ。
触れる度に僕の荒んでいた気持ちも癒えてくるし。うん、やっぱり僕にはこの子が必要不可欠なのだ。この子が居ないと安定しない。絢斗くんも…そうだと良いなぁって思う。



「待て待て待て、おい。高城お前そんな事するやつなのか。知らねーんだけど。」
「浅見くん…ここまで乙女になっちゃうんだね…。」

その後藤本くんと桐谷くんから全力でブーイングをされてしまったが、取り敢えず今回はこれで解散をする事に。
後日改めてこの件についての処理をする事となった。
あとやはり姫路先生と田中先生は興奮していた。こういう時でも通常運転なお二人は、ある意味最強だなと思えたのだった。



色んなことがあったが、浅見家に無事帰る事が出来た僕達。幸いな事に明日明後日は休みだ。お互いに心身共にゆっくりと休むには丁度良かった。本当に助かる。

ゆっくり風呂に入り、夕食は今日は出来合いのもので軽く食事を摂り、早めの時間に布団に潜ることにした。
寝室に籠る頃には絢斗くんの体の震えはもう収まっていた。ぎゅーぎゅーと抱き締めてくれるので、僕もそれに応えて抱き締め返させてもらった。彼の温もりが、何時もよりも強く感じる。

「…もう、身体は大丈夫そうだね。」
「ん。へーきだ。」
「手首は?痛くない?」
「これくらいなら、慣れてるし大丈夫だ。」

帰る時に田中先生に軽く診察して貰ったが、軽い擦り傷程度であるので問題はないらしい。だとしても出来た要因が要因だから…どちらかというと精神面の方が心配なのだ。

「そっかよかっ……んむっ…。」
「んーーーーっ、んーーー……ぷはぁっ♡」

肩に手を置かれ、むちゅっ!♡と可愛らしい音を立て、僕の唇に彼のプルプルとした唇を押し付けてきたのだった。
夕方の恐怖心を引きずっているのかと思ったのだが…僕が思った以上に彼は強かだったらしい。目の前には愛らしくムッとしたお顔の絢斗くんがいたのだった。

「絢斗くん…?」
「ふ、藤本に……ちゅー……されてたから。消毒!」
「あ、あーーー……ごめんね、本当にそれは。」
「なにかしらされるとは思ってたけど…。ゆーしに手を出してくるとは思わなかった。次会ったらデコピンしてやる。」

そう言うとすりすりと胸元に頬を擦り付けてきたのだった。にゃんこだ。完全に嫉妬心マシマシのにゃんこちゃんだ。腹の奥がずくっ…と疼くのを感じる。

「絢斗くんのなら破壊力凄そうだね…。」
「しかも、ゆーしも…なんだ、ちょっと顔を赤くしてたのもムカつく。」
「え゛!?そうだったぁ!?」

マジか!?
そ、そうだったとしても彼にその場面を見られてしまったのは…非常に申し訳ないな。僕が絢斗くんの立場であれば間違いなくブチギレている自信がある。

「そーだった。なに、本当はあーいうのがタイプなのか?」
「そんな訳ないでしょ!!僕は絢斗くん以外の人とお付き合いする気は微塵もないよぉぉ!!」
「ふはっ!そーだもんな。ゆーしはけんとだけだもんなぁ?」
「そうだよ…。不安になったよね…ごめんね……。」

再度腕に力を込めて抱き締めた。もう二度とそんなことがないようにする、という気持ちを込めて。
すると、絢斗くんが首筋にちゅっ♡ちゅっ♡と口付けをしてくれ、そっと上目遣いで見つめてきた。かぁいい猫目がキラキラとしている。
……俺を満たせと強請るような、そんな眼差しだ。

「……なら、不安にさせたと思うなら安心させて?」
「……………任せて。」

君が頑張ってくれた分、僕も応えないとね。
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