地味教師とヤンキーくんのチグハグな2人の逢瀬

もちもちもちお

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僕の気持ち

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胸元で何やらゴソゴソと動く気配がありつつも、まだまだ眠っていたいという欲求に苛まれてグダグダとしていること数分。

「…………ぁれ。」

まだまだ眠気が振り払われていない状態であるのだが、何とか上体を起こした。この時間帯は薄暗いようで、カーテンの隙間からは陽の光が差し込んでくることはなかった。
そしてどういう事だろうか…夜には絢斗くんを抱き締めながら眠っていたはずなのだが。辺りを見回すと何処にも見当たらないみたいだ。
トイレかな。
そう思い近くに置いていた眼鏡を掛け、再度見回してみたがやはり見当たらない。
帰ってくるまで待つのもありかと思えたが、昨日の夜飲みすぎたせいもありトイレに行きたい。
二階にもトイレはあるが、絢斗くんが使用しているかもしれないなと考え一階の方を使う事に決めたのだった。

「っとと…危ない。」

僕と雄大の部屋の中に敷き詰められた布団は、みんなの寝返りやらの寝相によって割とひっちゃかめっちゃか状態だった。部屋から出る時も注意しなければ、誰かしらを踏み潰してしまいそうであった。
こうして友人達でぎゅうぎゅう詰めの部屋を改めて見てみると…僕は今の学校に来て良かったなと、そう思えた。
幸せ者だなって。



下にいる父さんと母さんを起こす訳にもいかず、ゆっくりと階段を降りて行く。
下に向かう度にご飯と味噌汁の香りがしてきた。そうか、母さんだいぶ早い時間帯から用意をしてくれていたみたいだ。…申し訳ないな。昨日の段階で朝、出前を取るなり何かしら買ってくるなりしてくれば良かった。三が日くらいゆっくりさせるようにもっとちゃんと伝えておくべきだった。
やっちまったなぁ…と罪悪感が込み上げてきてしまった。

「………、………。」
「…、………、…。」
「…………………、…。」

話し声が聞こえてきた。
よくよく耳を澄ませてみると、父さんと母さんと…絢斗くんの声がする。
え。
まさか。

足音を殺し、そして素早く声のする台所に歩を進めた。出入口近くの壁に身体を寄せて息を潜めた。
チラッと中の様子を見たが…やはり絢斗くんが母さんのエプロンを身に着けて何かを調理していた。父さんも母さんもその様子を微笑ましそうに見守っているみたいだ。
良かった、変な空気にはなっていないみたいだ。
きっと心優しい彼の事だから、あれだけの人数の食事を用意する母さんの事を気遣ってくれたのだろう。良い子すぎる。本来ならば僕がもっと気を使わなければならないのに。僕がダメダメ過ぎる。

「………深くは追究しないけどね、割とバレバレよ?」
「っはは、そうだな。昨日の夕飯の時は俺は酒に酔って眠っちまったけど。初めから結構分かってたぞ。」
「え、え…。」

いやなってた。
今なったぞ。
……やっぱり、昨日の彼とのやり取りは不自然だったか。
何も言ってこなかったが、二人も引っかかっていたらしい。このままここで盗み聞きをしていても大丈夫だろうか。今すぐにでも室内に入り事情を説明するべきだろうか。

「可能ならば、お兄ちゃん…優志が困らない様に今後はして欲しいなって思うかなぁ。」
「………。」
「昨日みたいにね、分かりやすいときっと困る事もあると思うし。世間的に見たら優志の方が悪い立場なのは分かってるんだけどね。……うん。」

………。
それは、確かにそうだ。
母さん達の言いたいことは理解できる。
親としてはせっかく息子が教員になったというのに、生徒との恋愛で立場が危うくなりその仕事を辞める可能性が浮上してきたのだ。そりゃぁ…不安に思ってしまうのは当然だよね。
…………もう少し、慎重に事を進めるべきだったのだろうか。

でもな…。
絢斗くんと一緒になりたいと心から思う気持ちを隠すことも、押し込めることも出来ない。
そこは…せめて伝えるべきなのかな。
情けないな、こんな年齢になっても両親の前では子どもっぽさが出てしまう。


「俺、絶対に優志を幸せにします。これからも笑顔を沢山見せ合えるような関係性になるって決めてます。だから…認めなくても良いので、見守ってて…欲しいなって………。」


!!!!!
な、何なんだよ僕の彼氏くんは!!
なんで弟の雄大の時も、藤本くんの時も、今も…。
なんでこんなにも格好良いんだ!!!!
うぅぅっ…む、胸が……締め付けられる。
十歳も年下の男の子に護られているだなんて、幸せにしますだなんて。
あぁぁ…もう、顔が、身体が熱い。
イケメンが過ぎるのではないのか。

「せっかく未来のお嫁さんが頑張ってるのだから、お兄ちゃんもさっさと入りなさいな。」
「いや違ぇよ母さん。嫁さんが頑張ってる所を見て涙してんだろ。」

うぐっ、ば、バレとる。
流石母さんと父さんだ。
ここまで来たらだいぶ恥ずかしいのだが、致し方ない。
心を決めて中に入り、息を多めに吸い込んだのだった。

「僕も絢斗くんのこと幸せにするからね!!」
「「「!!!」」」

い、言ってやったぞぉ!!
僕だってやる時はやるんだ。



「それでね……?」
「……ふふっ。」

わぁ…母さんと将来の僕のお嫁さんがニコニコと微笑み合いながら朝食を作っているよ。しかも絢斗くんから珈琲まで淹れてもらっちゃったし。今日ほどこんなにも美味しい珈琲を口にした事は無いのでは。

「優志、二人の関係は分かった。大丈夫そうなのか?」
「……自信持って大丈夫とは言えないよ、やっぱり。泊まりに来てくれたみんなやクラスの子達は理解があるけど。それにずっと甘える訳にもいかないしね。」

対面で新聞を眺めていた父さんが静かにそう言ってきたのであった。
大丈夫…大丈夫か。
大丈夫、ではないのだろうな間違いなく。

「絢斗くん卒業した後に付き合うでも良かったんじゃなかったのか?」
「………普通は、そう考えるよね。」

誰が僕達の関係性を見ても、そう思うだろう。正常な思考だと言える。
けど、僕は……きっと彼に出会ってしまってから随分と欲深くなってしまったのだろうな。

「彼を………絢斗くんを誰にも渡したくなかったんだ。」

ただ、それだけだ。
誰からも良くも悪くも目を惹いてしまう彼を誰よりも早く自分の傍に置きたかったのだ。取られたくなかった。こんな激しい感情、今まで生きてきて初めてだった。
だが、それだけの僕の思考に周りを巻き込んでしまったのは本当に申し訳ないとは、思っている。



「だってさ。母さん、絢斗くん。」
「え゛っ。」
「随分と男らしい事を言うようになっちゃってまぁー。生意気ね。」
「……ゆ、ゆぅしっ…!!」

全力で二人は聞いていたみたいだ。
非常にこの場から逃げ出したい僕である。
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