異世界の姫さまが空から降ってきたとき

杉乃 葵

文字の大きさ
39 / 73
第四章 麗美香

第三十八話:SEARCH

しおりを挟む
 屋上は閉鎖されている。そう言っても、麗美香は、いいからいいからと聞きやしなかった。
 途中、麗美香は自分の教室に寄り、例の長物を取って来た。
 おいおい、それ教室に置いてたんだ。よく置いて置けたな。
 それにしても、それを持ち出すということは、それぐらい危険があると言うことか?

 お昼休みが残り少ない事もあってか、麗美香はダッシュでエレベータに向かった。あいつ、足、はええな。引き離されない様にするのがやっとだった。後ろに居るニーナに振り向くと、ニーナは余裕で付いて来ている感じだった。そうだ、ニーナも足速いんだったな。

 三人でエレベータに乗って屋上へ向う。
 屋上への扉は、前に見た通り、重い鎖と、鍵で厳重に閉ざされていた。

 ほらね。って感じで、麗美香に合図するが、麗美香は徐ろに扉に近づいて、胸元に手を突っ込んで鍵を取り出し、鍵をガチャリと開けた。

 お、おい。なんで、おまえが、鍵持ってるんだ。

 そして、重い鎖を紐を解くように軽々と扱い、ポイッと脇へ投げた。
 ドシャっと重苦しい音をたてて、鎖が転がった。

 なんというパワーなんだ、こいつ。

 「ポチは、この扉の所で待機、ニーナちゃんは、階段の下で待機してて。」

 「ポチじゃねえ。」

 「ええっと、なんだっけ? モウちゃんだっけ?」

 「ちがう、コウちゃんだ。」

 自分で、ついコウちゃんとか、言っちまったじゃねえか。

 「そうだそうだ、コウちゃんだ。」

 麗美香は、うんうんと頷く。

 「もし、わたしに何かあったら、この扉をすぐに閉めてね♪ よろしく。」

 「なんかあったら、ってなんだよ? それに、閉めたら、おまえはどうなるんだよ?」

 「大丈夫。たぶんなにもないよ。万が一のためだから。それに、なんかあったときは、もうわたしは終わってるはずだから、気にする必要はないよ。」

 ちょっ、どういうことだよ、と聞く声を無視して、麗美香は扉を開けて屋上へ出て行った。
 追いかけようとしたとき、いつの間にかカバーを外した例の長物の切っ先が鋭く鼻先に光った。

「そこを動くと、斬っちゃうぞ♪」

 満面の笑顔で云われた。でも、冗談ではなく、本気であることが彼女の放つオーラからわかった。
 麗美香は、長物を軽やかに、舞を踊るかのように振り回しながら、屋上をぐるぐると回っていた。
 何をしているのかさっぱりだ。

 後ろからニーナが、ひょっこりと顔を出して屋上の様子を覗いた。
 おいおい、ニーナさんよ、持ち場離れたら、ザックリ斬られるよ?
 まあ、あいつが、ニーナを斬るとは思えないが。

 「ねえ、麗美香さんは、何をしているの?」

 聞かれても困る。
 わからないという、ジェスチャーで応える。

 屋上は、特に異常は無い様に見える。掃除されてないせいか、結構汚れていた。
 まあ、何ヶ月も放置状態だったからな。

 しばらく舞を眺めていたが、麗美香は踊りを止めてこちらに戻って来た。

 「ニーナちゃん、いけない子。こっち来たらダメでしよ。」

 子供を諭すようなふりで、おどけてみせる。
 随分態度がちがうよな、おまえ。

 「そろそろ、お昼休み終わっちゃうから、ニーナちゃんは、もう戻って。」

 おお、もうそんな時間か。
 教室に戻ろうとすると、制服の袖を摘まれた。

 「ポチは、ステイ。」

 ポチじゃねえと、突っ込む気力が失せた。それよりも、

 「ステイってなんだよ!」

 「英語で、留まれって意味だよ。ごめん、英語苦手だった?」

 「ちがうわ!」

 あーもう、めんどくせえ。

 「まだ、なんかここでやるってんだな。で、ここにまだ居て、見張ってろと。」

 「すごーい。ひょっとして、頭良かった?」

 あかん、まともに相手してたら、こいつのペースに飲まれる。

 ニーナも残ると言い出したが、さすがに初登校初日からサボりはまずいだろうと説得して、引き上げさせた。

 「あ、でも、おまえも初日だろ? いいのか?」

 麗美香も、登校初日だ。まあ、気にしてやることもないのかもだけど、一応な。

 「別に、いいよ。勉強嫌いだから。」

 おい、そこは、こっちが優先だとか言っとけよ。

 「そっか、まあいいや。で、何をするんだ? また、舞を続けるのか?」

 麗美香は、違うと首をふるふるとふり、ちょっと瞑想するから、今度は、何かあったら、大声で呼んで欲しいと言った。瞑想中は、周り事が分からなくなるらしい。

 「なあ、いったい何をしてるんだ?」

 応えないとわかっていても、聞かずにはいられなかった。

 「なに? 気になっちゃう? だぁーめ。乙女の秘密だよ♪」

 予想通り、いや、予想より、いろいろ余計なものが付いて返ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...