婚約破棄された悪役令嬢が辺境で美青年と出会う話

白雨あめ

文字の大きさ
1 / 4

はじまり

しおりを挟む
伯爵令嬢リーズはエステル王国第一王子アルフレッドの妃となるべく育てられた。
数多の令嬢たちを蹴落とし、圧倒的な美貌と実力でその場に上り詰めた彼女を待っていたのは、王太子となったアルフレッドの冷たい視線だった。

「リーズ、君がこんな低俗なことをする人だとは思ってもいなかったよ。コレット、…こんなに震えてかわいそうに。」

そう言い、右腕に抱くのは、まだ幼さの残る顔立ちの女生徒。名をコレット=二コラという。
最近、二コラ子爵家に迎えられた平民出の養子だという。
学園に入学早々、アルフレッドに付きまとい婚約者として看過できぬほどに親しくなっていた。

「殿下ありがとうございます……。」

囁くようにそう言い、アルフレッドの胸によりかかるコレット。
それを嬉しそうに抱き締めるアルフレッドを見据え、リーズは努めて冷静に言葉を返した。

「恐れ多くも、殿下。いったい何をおっしゃっているのか理解しかねます。私がいったいなにをしたというのです。」

「しらばっくれるな。コレットに酷いことをしたのはお前だろう。私はコレットから相談されてここにいるんだぞ。お前から悪質なイジメを受けているといわれてな!」

リーズはアルフレッドの物言いに本当に驚いた。
まったく身に覚えのないことだったからだ。
リーズはコレットをイジメたことなどない。確かに、アルフレッドとの距離が近すぎることに不満はあったが、リーズがこれまで培ってきた教養や知恵はリーズに絶対の自信を与えていた。

「そのようなこと本当に身に覚えのないことでございます。」

「黙れ! 嘘をつくなっ! このような低俗なおこないをするものと婚約者など王族の沽券に関わる! 解消だっ。お前との婚約をここで破棄する!」

「殿下っ! なにをおっしゃっているのです! 婚約破棄など……、この婚約は陛下の名の下に決められたものなのですよ! それを勝手に破棄するなどっ。」

「今回の件については陛下に申し上げ、許可もいいただいているさ。」

アルフレッドの言葉に目を見開く。
陛下の許可がでている? 
到底信じられることではない。リーズは困惑した。

この国の王太子であるアルフレッドと伯爵家令嬢であるリーズとの婚姻関係が、ありもしない嘘によって破棄されるなど信じられない。
リーズには弁解の場さえ設けられていないというのに。


「殿下! 本当に私はなにもしていないのです。学園のみなに聞けばわかりましょう。……私の話を聞いてくださいっ。殿下っ。」

アルフレッドは、リーズの言い分に耳をかさずコレットと共にその場を去ろうとする。
リーズはたまらずアルフレッドを追いかけたが、コレット付きメイド、衛兵たちに阻まれ、その背中をおうことはできなかった。



その後、リーズは無実を訴えるも国王、王太子の命により学園を追放。
アルデンヌ伯爵家は今回の事件で王家の怒りをかうのを恐れ、リーズを領のさらに辺境、ムスタム子爵がおさめる地へと送った。
王都のなにも届かぬ辺境へ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

敵対勢力の私は、悪役令嬢を全力で応援している。

マイネ
恋愛
 最近、第一皇子殿下が婚約者の公爵令嬢を蔑ろにして、男爵令嬢と大変親しい仲だとの噂が流れている。  どうやら第一皇子殿下は、婚約者の公爵令嬢を断罪し、男爵令嬢を断罪した令嬢の公爵家に、養子縁組させた上で、男爵令嬢と婚姻しようとしている様だ。  しかし、断罪される公爵令嬢は事態を静観しておりました。  この状況は、1人のご令嬢にとっては、大変望ましくない状況でした。そんなご令嬢のお話です。

婚約破棄がお望みならどうぞ。

和泉 凪紗
恋愛
 公爵令嬢のエステラは産まれた時から王太子の婚約者。貴族令嬢の義務として婚約と結婚を受け入れてはいるが、婚約者に対して特別な想いはない。  エステラの婚約者であるレオンには最近お気に入りの女生徒がいるらしい。エステラは結婚するまではご自由に、と思い放置していた。そんなある日、レオンは婚約破棄と学園の追放をエステラに命じる。  婚約破棄がお望みならどうぞ。わたくしは大歓迎です。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

気がついたら乙女ゲームの悪役令嬢でした、急いで逃げだしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 もっと早く記憶を取り戻させてくれてもいいじゃない!

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

処理中です...