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王様の涙5
しおりを挟む「はぁ......。ほんとに、冗談の通じない人には困ったものですねぇ。」
腕を肩の高さにあげて、アメリカンジョークを言うように声音を変えて話す悠に、顔が険しくなるのは仕方がないと思う。
あの話し方と、あの表情。
腹が立たないほうがおかしいというものだ。
実際、隣に立つ会長からはぴりぴりと物言わぬ圧力を感じるし。
「あー、あーっ。会長様っ、怒らないでよ! これからいくらでも桜庭くんとイチャイチャしていいからっ!」
「あ......?」
「な、なに言ってるわけ、悠っ! 意味わかんないんだけどっ。......っていうか悠。俺たちに何か言いたいことあったんじゃないの?」
悠のいきなりの爆弾発言に驚きながらも、なぜか悠へ一歩近づいた会長を横目でみつつ、話を切り出す。
悠のさっきの言葉が気にさわったのか、明らか不機嫌になった会長は鋭い眼光で悠を見つめている。
「あー、うん! そう、そう。そうなんだよっ。流石、桜庭くんわかってるー!!」
......あーもう。そういうのいいから、早く話してくれないかな。
無言の会長が怖いんだけど。
「はいはい、話すったら。話すったら。もう、そんなに睨まないでよ。僕、ガラスのハートなんだよ。」
「えぇー? どこがぁ?」
「なおおおおぉーー!! ............っと。......あら?」
突然叫びだしたと思ったら、俺と会長のちょうど真ん中。そこ一点を見て、動かなくなってしまった悠に、遅れて後ろを振り返る。
あ、あれは。
「ーーおい、てめぇ。俺の大事な甥っ子を、なに名前でよっーー」
『緊急。緊急。これは理事長からの緊急連絡です。各生徒会役員は、至急速やかに生徒会室へ集まること。』
「んでっ」
『繰り返します。これは理事長からの緊急連絡です。各生徒会役員は、至急速やかに生徒会室へ集まること。』
「ん」
『繰り返します。繰り返します。これは理事長からの緊急連絡です。各生徒会役員は、至急速やかに』
「もうっいいだろーがぁ!!」
この学園の理事長。ではなかっただろうか。
......いや、俺の勘違いかもしれない。
この学園の理事長が、大声あげて暴れている。
校内放送が一方通行というのも当然しってるはずだ。
たぶん、きっと......。
「おい、おい。そこの美人さん。あからさまに目ぇそらすの止めてもらえる? おじさん結構傷つくんだけど。」
「え? いや、目なんてそらしてないっすよー。あ、僕のことじゃない? すんまそん。」
やばい。なんだかいろんな意味で、悠が最強に見えてきた。
「あー、あー。もうっ。ぐだぐだ喋んなくていいからぁ。いま、放送聞いたでしょー?」
悠のふざけた態度をぶった切るような勢いで、言葉を放った会計に、あぁ、そうだったとつい先ほどのことを思い返す。
黒いスーツに、オールバック。
この人が衝撃的すぎて、頭から一瞬消えかけていた。
「あぁ、そうだ。俺の名前で集合かけさせてもらったんだったな。じゃあ、これから生徒会室いくぞー。」
そう言い、どうしてか生徒会の会計の肩を抱いて歩きだした理事長に、一歩踏み出して止まる。
俺が立ち止まったことがわかったのか、こちらに振り向き首をかしげる会長にこちらも同じポーズを返す。
「あのさ、俺生徒会役員じゃないんだけど着いていっていいのかな?」
いまだ、どうしてか不機嫌な会長と。
これから理事長のもとで何かが行われるのであろう、生徒会室。
やはり俺としては、会長と居たいし、心配だし。
会長に何かが起きるなんて、そんなことを思っているわけではないけれど。
やっぱりこのまま一人では行かせたくなくて、なんだかすごく不安なのだ。要するに。
そんなことをぐるぐる考えながら、会長を見つめる。会長はーー、
「.....ぁ。」
うわっ。ぅあー。
なにそれ。なにそれっ。
なんで、そんな顔真っ赤なの。
耳まであかいよ!
なんか、もうやばい。
キスしてきたときは平然としてたくせに。
「ぁ、俺は、お前が一緒にきてくれたら。......嬉しい、というか。来てほしいというか。」
「え。」
こ、これが俗にいう不意討ちってやつなのだろうか。
予想の範疇を遥かに越えていった。
「うん、わかった。行くよ。一緒にいく。」
耳まで真っ赤に染めて、そんなことを言われたら断れるわけがない。これはなんとしてでも行かなければ。
会長に、必要とされることがこんなに嬉しいだなんて思わなかった。
会長が、こんなことを言ってくれるなんて思わなかった。
会長が、俺と同じ気持ちでいてくれてるなんて思わなかった。
「っ、」
いまだほんのり赤い頬をもって、歩きだした会長の後をそっと追う。
横に並び立って、触れ合う手。
びくり、と跳ねた肩に、もっと近づいていいものかと一瞬の足踏み。
けれど。
触れ合ったのは、一瞬。
繋がったのはーーーーーー。
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