溺愛外科医ととろける寝室事情

ヒロロ(秋桜ヒロロ)

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1巻

1-3

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「じゃ、まずは添い寝からだね」

 怜はそう言い、布団の中でなつきを抱きしめた。
 向き合うのはずかしいというなつきの希望により、うしろから抱え込まれるような形で身体を密着させている。
 布団に入るということで、なつきは先ほどシャワーを浴びてきた。
 怜とお揃いのガウンが気ずかしく、なんだかそわそわと落ち着かない。

「さっきは適当に五分って言ったけど、そのぐらいでよかった?」
「いえ。五分で十分じゅうぶんだと思います。普通は一分もかからずに寝ちゃうので」
「そっか。でも念を入れて十五分間目をつむってみようか。それでダメなら、もう一つの方法だね」
「わ、わかりました」

 もう一つの方法、その言葉に声が引きった。
 なつきは暴れ回る心臓をガウンの上からぎゅっとつかむ。そして目を閉じ、深呼吸をした。
 自分が落ち着かなければきっと怜も落ちつくことができないだろうという、彼女なりの心配こころくばりである。

(大丈夫、すぐに怜さんは寝る!)

 今まで、彼氏から同級生、さらには友人のペットまで寝落ちさせてきた。通用しないわけがない。
 それから十五分間、なつきは目を閉じたまま怜が眠りに落ちるのを待った。
 ――しかし……

「怜さん、寝てませんよね?」
「うん。寝てはないかな」

 怜は一向に寝る気配を見せなかった。
 返ってきた声も、先ほどと同様元気だ。
 なつきはぐるりと身体を反転させると、怜の顔を見上げた。涼しげな瞳は、じっとなつきのことを見つめていた。

「……もしかして、ずっと目を開けてました?」
「いや、つむってたけど。というか、なつきちゃんの体質って俺が目をつむっていようが開けていようが関係ないって話じゃなかった?」
「そ、そうなんですけど……」

 なつきは視線を彷徨さまよわせた。正直、こんな状況は初めてで、どうしたらいいのかわからない。
 狼狽うろたえていると、怜の手のひらがなつきのガウンの合わせ目からするりと入ってきて、背中をくすぐった。

「ひゃ!」
「それじゃ、もう一つの方法に協力してもらおうかな?」

 どこか楽しそうに怜は笑う。指で円を描きながら背中をでられて、なつきの肩は跳ね上がった。ゾクゾクと背中をなにかが駆け上がり、思わず怜にすがりつく。

「ん。大丈夫。優しくしてあげる」

 まるで子供をあやすように声を落とし、怜はなつきのひたいにキスを落とした。
 そこから熱が生まれて、一瞬で全身の血液が沸騰ふっとうしそうになる。
 背中をまさぐる手のひらに、なつきの身体は小刻みに反応した。

(こ、このまま私、一線越えちゃうの!?)

 未体験な事柄に挑む恐怖と、優しい手のひらから感じる少しの安堵あんど
 そして、胸の奥からせり上がるわずかな興奮。
 いろいろな感情がせめぎ合い、頭が混乱した。
 しかし、嫌ではなかった。
 なつきとしても処女は捨てたいと思っていたのだ。
 しかも、怜なら初めてのなつきに合わせて、きっと優しくしてくれるだろうという確信もある。
 けれど――……

(でも、私と寝ても怜さんって二‌、三時間しか連続で寝れないんだよね……)

 なつきが知る限り、自分の体質で眠りについた人は八時間以上余裕で寝てしまう。普段睡眠が短いと言っていたトモだって、なつきと一緒に寝れば、目覚まし時計の音に気付かないぐらい熟睡している。
 それならば、怜だって自分の体質によって眠ったほうがいいだろう。
 そのほうが、ゆっくり睡眠が取れるのかもしれない。
 なつきは、そう考えた。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 いつの間にか首筋に顔をうずめていた怜を、渾身こんしんの力で押しのける。
 怜はびっくりしたように目をまたたかせていた。

「もう十分じゅっぷん、時間をください! 頑張って怜さんを寝かせてみせるので!」
「……十分じゅっぷんでも、三十分でも、いくらでもどうぞ」

 ふっと、困ったような笑みを浮かべて、怜は身体を離してくれた。背中をでる手も、ガウンから引き抜かれる。
 離れていってしまう熱が、少し寂しかった。
 そんな感情に頭を振って、なつきはぎゅっと怜の手を握った。
 そして、温めるように息を吹きかけ、さする。

「なにをしてるの?」

 怜は不思議そうな声を出す。

「前にテレビで専門家の人が『眠れない時は手足を温めるといい』って言っていたので、温めてるんです! 怜さんは目をつむっていてくださいね。気持ちも身体もリラックスさせてください。すぐに眠たくなると思うので!」
「……必死だね」
「だって、寝れないのって辛いじゃないですか。私には不眠の経験はないですけど、一日徹夜しただけで辛いですもん。だから、怜さんはもっとしんどいんだろうなぁって」
「俺のため?」
「他になにがあるんですか?」

 なつきが首を傾げたところ、怜は大きく目を見開いて固まっていた。

「私の体質で眠った人って、眠りが深いみたいなんです。だから……」

 はー、と手のひらに息を吹きかけると、頭上で怜が笑う気配がした。
 見上げると、眉根を寄せつつも口元には笑みを浮かべる彼の姿。

「なんか、最高に悪いことをしている気分だ」
「……よくわからないです」
「俺は、君の処女を捨てたいっていうのにつけ込んで、自分のために君をいいようにしようとしてるんだよ? よくそういう男の身を案じられるよね」
「だって、それは……」

 その指摘に、なつきは言いよどむ。
 怜は自分だけがエゴによって行動しているように言うが、なつきにも下心がないわけではないのだ。
 怜は冷静な瞳でなつきを見つめる。

「本当は嫌なんでしょう? だから『もう十分じゅっぷん時間がほしい』なんて言ったんじゃないの?」
「ち、違いますよ! 時間がほしいって言ったのは、怜さんに私の体質で安眠してもらいたかったからで、怜さんとそういうことをするのが嫌ってわけじゃ……」
「好きな人がいるのに?」
「……好きな人がいるからです」

 ずかしくて瞳がうるんだ。
 好きな人がいるのに、他の男性と身体を繋げるのは平気なのかととがめられたような気分だ。
 なつきだって、処女を捨てられるなら誰でもいいと思っていたわけじゃない。だけど、怜にはそう見えてしまうのも頷ける。
 うつむいたなつきの顔を怜の手が優しく上げさせる。
 そして彼は、申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「ごめん。今の質問は意地悪だったね。なつきちゃんだって、そりゃ最初は好きな人がよかったよね」

 目尻に溜まった涙を吸い取るように口づけられる。
 なつきがこすっていた手を引き抜かれ、肩をつかまれた。
 そして、そのまま両肩を押さえつけられ、押し倒された。

「優しくするね。本当に優しくする」
「えっと……」
「ごめん。もう自然には寝れないかも」

 怜はぴったりと身体を密着させてくる。すると、なつきの太股に硬いなにかが当たった。ぐりっ、と太股のやわらかいところを押すそれに、なつきも見当がついた。

「――っ!」
「いい?」

 耳元で囁かれる声に、なつきは頷く代わりに彼のガウンをぎゅっと握りしめた。


 怜は肩口に顔をうずめ、ちゅ、ちゅ、と首筋に口づけをする。
 そのたびになつきの身体は強張り、怜をぎゅっと抱きしめた。

「嬉しいけど、そんなに抱きしめられたら動けないよ」
「だって……」

 なつきは泣きそうな声を出し、唇を噛みしめた。
 初めてのことなので、どうするのが正解かわからないのだ。
 身体を硬くしていないと、ちょっとの刺激で跳ねてしまいそうになるし、あられもない声が出てしまいそうになる。
 なつきの表情で理解したのか、怜は長い指でなつきの唇をなぞり、安心させるように微笑んだ。

「そっか、なつきちゃんは初めてだもんね。じゃ、ゆっくり教えながらいくよ」
「お願いします」

 律儀りちぎに頭を下げるなつきに怜はふっと笑い、ひたい同士をぴったりとくっつけた。

「まず、キスからしてみようか。なつきちゃん、キスの経験は?」
「少し……」
「ん、そう。じゃあ、どのくらい慣れているのか確認」

 まずは唇を合わせるだけのキスだった。
 小鳥が、えさをついばむような優しいキス。
 なつきは怜にこたえるように、何度も唇を差し出した。

「ん。これぐらいは余裕だね。じゃあ、次はどうかな」
「んっ」

 唾液が混ざり合うような深いキスが落ちてきた。
 唇のやわらかい感触が、先ほどよりもしっかりと伝わってくる。
 まるで味わうように何度も吸われて、甘く噛まれた。
 そのたびに鼻にかかった声が漏れてしまう。

「んっ、ぁ」
「これぐらいでを上げてたら、先がもたないからね。頑張って」

 怜はおとがいつかみ、なつきの口を開かせた。そして、次は舌をねじ込んでくる。

「あっ、や……」

 怜の舌は、なつきの口腔こうこう内をかき混ぜた。
 舌と舌が絡まり、くちゅ、という卑猥ひわいな音が耳に届く。
 からめ取られた舌はいつの間にか怜の口内に誘い込まれていて、お互いの唾液を交換するかのようにうごめいた。

「ん、んん、ぁ……」
「ほら、もうちょっと大きく口を開けて。舌を出して」

 とろける声になつきは従い、口を開けて舌を出した。

「ん。いい子」

 怜は妖しく微笑み、自身の上唇をめる。
 そして、まるで食べるようになつきの唇に噛みついた。
 歯は立てていないけれど、激しく舌を吸い、口の中を味わっている。

「んっ、んんっ、ぁ、あぁっ」

 最初のキスのようにこたえることなどできなかった。
 ただただ翻弄ほんろうされ、呼吸だけはしようともがく。
 怜はそんな乱れていくなつきを見ながら、楽しそうに目を細めていた。

「……なつきちゃん、可愛いね。あんまりにも可愛いからいじめたくなっちゃうけど、今日はダメだね」
「れい、さん……?」
「優しくするって言ったからね。約束は守るよ」

 とろりととろけた顔をするなつきに、怜は喉仏のどぼとけを上下させた。
 怜はなつきの身体に指をわせ、ガウンを開いた。
 そして、ブラジャーの真ん中を人差し指で持ち上げる。

「これ、邪魔だね。取るよ」

 そう宣言するやいなや、手をうしろに回し、あっという間に下着のホックを外してしまう。
 人より少し小さめな二つの丘が、白い大地の上で大きく揺れた。

「ひゃっ!」

 いきなりさらしてしまった両胸を、なつきは必死に隠す。
 心臓がこれでもかと跳ね回り、胸を突き破ってしまうかというほどだ。
 怜はなつきの手をやんわりとどかし、なつきの胸を手で揉みしだいた。

「ん」
やわらかい」

 率直な感想に、顔から火が噴き出そうだった。
 怜は揉むと同時に爪を立て、赤い先端を引っ掻く。
 そのたびになつきは、あられもない声を上げた。

「あ、あ、あぁ」

 気が付けばもう一つの乳房は怜に吸われていて、それがまた快感を呼び起こす。
 下半身がじゅくじゅくと熱を持ち始め、なにかがどろりと零れ出るような感触がした。

「ぅん……」
「ほら、下着の上からでもわかるぐらいよろこんでるよ」

 怜の指が、下着の上からなつきの秘所をでた。

「はぁう!」

 初めての刺激に、なつきは首をすくめ、腰を引いた。
 しかし、逃がさないとばかりに怜は腰をつかみ、みずからのほうに引き寄せる。
 そしてなつきの足を割り、身体を滑り込ませた。

「本当になにも知らないんだね。ここを自分で触ったこともないの?」
「ない、です」

 下着の上から怜は、何度もなつきの下の口を指でこすった。
 ピリピリとした刺激が、電気のように全身を駆け巡る。
 なつきは変な声が漏れないようにと自分の口を押さえたまま、必死にその刺激に耐えていた。

「ん、んん、ん……」
「その割には感度がいいみたいだね。びちゃびちゃだ」

 怜はなつきのそこから手を離し、彼女に見せつけるように広げてみせる。
 指と指の間には透明な糸の橋がかっていた。
 このどろどろの粘着質な液体が自分の身体から出たのだと信じられず、なつきはぎゅっと目をつむった。
 激しくはない行為だが、優しすぎて逆に卑猥ひわいに感じてしまう。

「下着がぐちゃぐちゃだね。もう脱ごうか。意味ないし」
「や、やだ!」

 未知への恐怖に、なつきは両手で下着を押さえた。
 うるんだ瞳を怜に向けたところ、彼はひたいに唇を寄せた。

「ん、じゃあ、穿いたまましようか」

 怜は下着を横に避け、そこから指を差し入れてくる。
 彼の指は、くすぐるようになつきの入り口をでた。
 なつきはシーツをつかみ、首をいやいやと振る。

「ちが、そういうことじゃ……」
「わかってるよ。なつきちゃんは下着を脱ぐのが嫌ということじゃなくて、これ以上進むのが怖いってことだよね」

 なつきは何度も頷いた。
 このままでは自分も知らない自分が姿を見せて、身体を乗っ取られてしまいそうだった。
 あられもない姿をさらし、上げたくもない声を上げてしまう。

「でも、ごめん。それは無理」
「や……」

 ちゅく、と指の先が割れ目の中に侵入してくる。
 まだ入り口のところで、彼は何度も往復させた。

「ごめんね」
「や、ぁ、あ、あぁ……」

 頭の芯が熱くなり、なつきは抵抗できなくなっていた。
 足にはもうあまり力が入らないし、シーツをきつくつかんでいた手も、今では開いてしまっている。

「やぁん。こわい……」
「なにが怖いの? 俺?」

 なつきは首を横に振った。
 生理的な涙が瞳に浮かぶ。

「いっぱい変な声が出ちゃうから――っ! ひゃぅんっ」

 怜の太くて長い指が、遠慮なくなつきの中に入ってくる。
 ずんずんと進んでくる中指に、なつきは腰を上げた。

「や、だから。れいさぁ……んんっ! ぁん!」
「ん。声、いっぱい出していいよ」

 長い指が一本、最奥まで入る。そして、ぐりぐりと内壁をでられた。
 そのままゆっくりと出し入れを繰りかえす。

「しっかり慣らさないとね。痛いのは嫌でしょ?」
「あ、あぁ、ぁあ、ぁ」

 少しずつ広げられる秘園に、もうなにも考えられなくなっていく。

「すごいね、もうトロトロだ。これなら、すぐに二本目の指を入れられるかな?」
「ぅあっ……」

 今まで誰も迎え入れたことのない隘路あいろを押し広げられ、なつきの息は詰まる。
 しかし、でられているうちに、圧迫感も痛みも少しずつ消えていく。
 その後からやってくるのは、なにも考えられなくなるほどの浮遊感だ。
 これが快感というやつだろうかと、なつきは頭の隅で考えていた。

「中は確かに狭いけど、こんなに感じるなんて。意外にえっちなんだね、なつきちゃんは」
「ちが……。これは、怜さんが……あっぁ……」
「俺のせい? それなら、なおさら嬉しいね」

 怜はなつきから指を引き抜き、ガウンを脱いだ。
 均整の取れた筋肉質な肉体があらわになり、なつきの視線は、思わず釘付けになる。

「なつきちゃんって、やっぱりえっちだね」

 視線に気が付いた怜が、冗談ぽくそう言う。
 なつきは両手で顔を隠し、「ご、ごめんなさい!」と声を上げた。

「冗談。いいよ見て」

 なつきの顔をおおう両手を取り、怜は自分の胸にわせる。

「これが今から君を抱く男の身体だよ」

 触れた肌の感触に、全身から火が出そうになった。
 怜はショーツ姿のなつきを、ぎゅっと抱きしめる。

「あったかい……」

 なつきの染み入るような言葉に、怜は笑みを零した。

「どう? 少しは安心した? 人の体温っていいものだよね」
「……怜さんって、優しいですよね」
「優しく抱くって約束したからね」

 約束をしていなくても、怜はきっとなつきを優しく抱いてくれただろう。
 そう思えるほどに、彼の行動は一つ一つが温かい。

「あと。これからは優しくできないから、今のうちに優しさを堪能たんのうしといて」
「え?」
「三本目の指が入ったら、最後までするから」

 怜はなつきから身体を離し、膝を立てさせた。
 そして、その間に顔をうずめ、ショーツの上から秘所をめる。

「ひゃっ!」
「やっぱり邪魔だね。取るよ」

 怜はなつきのショーツを取り払い、ふたたび足の間に顔をうずめた。

「や、やめ……」
「やめない」

 茂みをかき分け、怜は舌先を中心にうずめた。

「あぁっ!」

 そのまま指と一緒に、中をぐちゃぐちゃとかき混ぜ始める。
 先ほどまでの気遣いとは無縁な行為に、なつきは怜の頭をつかんで首を振った。

「や、はげし、あぁっ、あっ、ぁんっ」

 怜は無言で蜜壺を攻め立てる。
 じゅっじゅっ、ととろけ出た液体を吸われ、なつきの羞恥しゅうちは最高潮に達してしまう。

「はずか……やぁっ!」

 曲げられた二本の指が内壁のいい所にあたり、なつきの身体は跳ねた。
 首を反らして快感をのがすと、彼女の足元で怜が笑う。

「ここがいいんだ」

 その低い声に、背筋が粟立あわだった。
 知られてはいけない人物に、己の秘密を知られたような危機感が全身を包む。

「あ、あぁ……」
「とりあえず、一回イッておこうか」

 妖しく笑う怜は、そのままそのいい所を重点的に攻めだした。
 押して、でて、かき混ぜて、引っ掻く。
 卑猥ひわいな水音と翻弄ほんろうされるなつきの嬌声きょうせいだけが部屋に響き渡る。

「あぁっ、あ、やぁ、あんっ」
「もっと刺激がほしいの? 腰が動いてるよ」
「あぁ……」

 ずかしくて顔をおおいながら、なつきはあえいだ。
 びちゃびちゃになったシーツが冷たく臀部でんぶを濡らす。

「あぁ――!」

 怜の唇がなにかを吸った瞬間、なつきの視界が真っ白になった。
 全身が一瞬にして強張り、身体が小刻みに震えた。
 達したのだ。そう理解して間もなく、なつきの意識は深い暗闇に落ちていってしまった。


 なつきが目覚めた時には、もう太陽が高く昇っていた。外では早朝を告げるように小鳥がさえずっている。
 身体を起こし、部屋を見渡す。見覚えのない部屋に、なつきは首をひねった。

「あれ、ここ……どこだっけ……?」

 呟いた直後、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。その音につられて、なつきは隣を見る。そうして、固まった。


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