【完結】私は乙女ゲームで1番最初に婚約破棄される呼び水令嬢です。

里音

文字の大きさ
1 / 12

1 前世をおもいだしました。

しおりを挟む
私、アマリア・ジュタールは転生者だ。

転生者だと気づいたのは年の離れた弟カイルが少し大きくなって卵アレルギーだとわかった時だ。
その頃は卵アレルギーなんて言葉はなく、するりと頭に浮かんできた言葉と共に記憶が蘇った。
よく転生ものの小説であるように転んで頭をぶつけたり熱を出して倒れたりはしなかった。すんなり前世と今世の記憶が融合した。
それまでは何かにつけて違和感は感じてはいたが、理由がわからなかった。
だって、中世ヨーロッパのような佇まいなのに、どこか近代的なこの世界。
馬車ではなく車が発達しているし、バスや電車もある。シャワー、下水道もきちんと整備されている。電気も通っているが、街に電線などは見当たらない。前世を思い出した私にはご都合主義の世界に見えた。
前世を思い出したとはいえ全てを思い出した訳ではない。何かをきっかけにそれに付随する事だけが思い出されるのだ。それ以外はベールがかかったように思い出せない。

でも、前世の記憶から料理が好きだったようだ。いろんなレシピが思い出される。
最初は貴族の令嬢がお料理なんて。と止められた。
年の離れた弟カイルがアレルギーがあり、末っ子として甘やかされて好き嫌いも多く、身体が弱かった。
それを見かねてアレルギーでも食べられる美味しいお菓子を作って食べさせた。その後もカイルの嫌いな食べ物を使った料理を作って段々と好き嫌いを治していった。
食が細く、病弱気味のカイルが今ではすっかり健康になってオマケにシスコンになっている。

その知識を元に作った料理の数々はカイルを筆頭に家族に好評でとても喜ばれた。
今では料理は料理人にレシピを教えるだけにして私は趣味のお菓子作りをする。
ほぼ毎日お菓子を作り、兄と弟、両親や使用人達に食べてもらって楽しく暮らしていた。

よくある転生ものの小説のように魔物が出てくるから召喚しての勇者パーティとか転生チートで天下を取るとか乙女ゲームとかではないのだろう。穏やかに自然体で暮らしている。



そんな私も15歳で婚約した。お相手は2歳年上のジェラール・マノマリット侯爵子息。

婚約前から兄の友人として何度か家に来た時にお会いしていた。
兄から紹介された名前に聞き覚えがある気がしたが「侯爵子息だし、令嬢達の噂で聞いたのだろう。確かに噂になるくらい美形だわ」と感心したものだ。

だから婚約者となった時に彼の相手がなぜ自分なのか不思議に思った。だって私は身分だけは伯爵令嬢で、両親やシスコンの兄弟からは可愛いとは言われるものの容姿はそれなりの範疇で絶世の美女ではない。
だから何故私なんだ。と思った。
理由は簡単。年頃でマノマリット侯爵家より高位の公爵家や同等の侯爵家の令嬢には既に婚約者がいらっしゃる。そうなれば家格の釣り合いからも、伯爵令嬢の中から選ぶしかないのだろう。
彼の家にとって政略結婚というには何のメリットもない。それほどマノマリット侯爵家は家格、財産共にパーフェクトなのだ。伯爵令嬢の中には私より美人だったり、可愛らしい令嬢もたくさんいた。

そんなよりどりみどりの中、私が婚約者となったのは多分兄が彼の親友だったからだろう。
だからお茶会などでは婚約者になれなかった令嬢達から嫌味や意地悪は毎回だ。
もしかしたら、こんな虐めに耐えられる人物として名が上がったのではないか?とさえ思えてくる。実際耐えてはいるが、平気なわけではない。

婚約が結ばれて初めてのお茶会で令嬢方に嫌味を言われたからだ。
その時、「理不尽。どうせすぐに婚約破棄されるのに嫌味やイジメに1人で耐えなければならないのか?」と漠然と思った。
えっ!どうしてすぐに婚約破棄されると思ったのだろう。その時私の頭の中にある乙女ゲームが蘇ってきた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら

柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。 「か・わ・い・い~っ!!」 これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。 出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

ヤンデレ王子に鉄槌を

ましろ
恋愛
私がサフィア王子と婚約したのは7歳のとき。彼は13歳だった。 ……あれ、変態? そう、ただいま走馬灯がかけ巡っておりました。だって人生最大のピンチだったから。 「愛しいアリアネル。君が他の男を見つめるなんて許せない」 そう。殿下がヤンデレ……いえ、病んでる発言をして部屋に鍵を掛け、私をベッドに押し倒したから! 「君は僕だけのものだ」 いやいやいやいや。私は私のものですよ! 何とか救いを求めて脳内がフル稼働したらどうやら現世だけでは足りずに前世まで漁くってしまったみたいです。 逃げられるか、私っ! ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...