異世界に来たんだから自分の欲望に忠実に生きる！

8話 活動を開始しなくては。

　さてと、リストを確認するまえに安全な場所へ移動しないと。
　俺は身を屈めて恐竜達の方へ視界を移した。まだレックスは生きているようだが動きが弱々しくなっていた。
　時折、炎が幾つかレックスに放たれている様子を視てると。

　｢あの炎はやっぱり魔法だよね。｣

　あんな巨大生物に魔法を使う勇気が果たして俺にも出来るだろうかと感じた。
　ハッキリしないが10人以上は居るようだ。人間かな？人型なのは解るがよく見えない。確認したいが近付くのは怖いな。

　歓声が上がった、どうやらレックスは斃されたようだ。

　レックスに群がる人型の生物。

　その様子を見届けたかのようにトリケラトプスは俺が居る方とは反対方向へ歩き出した。
　レックスが解体される様子を見たかったんだが何となくその場を離れた方が良い気がした。もし、見つかったらと思うと身震いした。
　
　人型に近寄るのは避けたかったから俺はレックス達とは逆方向へ山を下った。

　山を下った途中に岩が裂けたような場所があり屋根もあった事から中を覗いてみた。幸い動物の住処ではないりしいので休憩する事にした。

　｢剣と魔法の世界かあ。｣

　一人の読者としてあれこれ考えた事はあったけど自分が当人になると考えは纏まらないな。
　レックスへ使用した炎の魔法らしき物を見る限り剣などの直接攻撃する武器よりも間接攻撃の魔法や弓など投擲系のスキルの方が良さそうに思える。

　あの巨大生物に接近して攻撃とか無いわ、それは無い。踏まれてだけで死んでしまう。そもそもここから結構離れてるのに歩いた時の振動があった。あれは近くなら大地震並みの揺れなんじやなかろうか。

　｢魔法かあ、争い事は避けたいよなあ｣

　死んだら終わりと神様も言ってたよな。

　｢ぐうぅぅっ｣

　お腹減った、どんな状況や場面でも等しく空腹なはなるようだ。
　
　ちょっと可笑しくなった、まだ何処か夢の続きのような感じがしていたからだ。
　
　何かないかなっと辺りを観察しながら少し歩いてみる。
　日が傾いている事から昼はとっくに過ぎているようだ。腹も減るはずだ。朝から何も食べていないのだから。
　　
　歩いて先の山の斜面に幾つか果実発見した。匂いは甘い香りがする。　

　｢食べられるかな？｣

　表面をかじって中身を舐めてみた。

　｢あ、甘いかな？｣

　暫くしても舌ピリピリするような事もないので大丈夫と判断し少しだけ食べてみた。
　食べられる、食べられるが美味しくはなかった。ほとんど味がしない。
　他に食べられそうな物が無いのでズボンのポケットに入るだけ持ち帰る事にした。

　帰り道に炊き火に使えそうな枝や枯れ草を拾いながら岩の裂け目に戻った。

　直ぐに枯れ草にライターで火を付けようとした時に

　｢！！！！！！｣

　不意に何か感じた、気配というやつか。
　身を伏せて入り口から死角になる場所へ移動し息を潜めた。
　何かが近付いて来るのを感じた。巨大生物達のようの振動は感じなかった事からサイズ的にはそれほどでもないのかも知れない。
　しかしながら異世界にて初めて接近する生物に対して俺の心臓激しく動悸した。
　生物の足音よりも心臓の方が五月蝿いと思える程に。

　そしてその生物が姿を現した。

　｢チュウ、チュウ｣

　現れた生物はネズミだった。
　ネズミだったがサイズがおかしい。

　｢デ、デカい！｣

　子犬程あるネズミ。ヌートリアとはまた顔が違うネズミだ。
　ネズミだからと安心は出来ない、ここは異世界なのだから。
　ネズミは地面に鼻をヒクヒクさせながら此方を見る事もせずに立ち去って行った。

　今のところ現れた生物は3種だけだがどれも有り得ない大きさだった。

　｢この世界は大きさが変だな。｣

　果物は普通サイズだった事から生物が全て巨大な訳ではないようだが気を引き締めて行動しなければと心に誓った。