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85話 勇者パーティー

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 一夜を明かしゴブオ達の元へ向かう。

 「ついてきてる」
 昨日、憐れに思い逃がしてやったオークが後からついて来ており気になる。

 『気配察知』のお陰でついて来てるのは分かっていたが。
 時折振り返ってみると歩いている動きが止まり歩き出すとついて来る。

 フェイント入れて振り返るとオークは片足を上げた状態で止まっていた。

 「だるまさんが転んだ?」
 ゲーム?遊びなの?俺、オークに遊ばれてるの?
 
 別に害はないので放置したが、考えを変える。
 「餌付け出来るかな?」
 オークとの会話はまだ成立していない、雄叫びと悲鳴しか声を聞いてないからだ。

 マジックバックから果物やパン、チーズ、ソーセージを出して地面に置く。

 振り返ってオークに笑顔で地面を指差して声を掛けた。
 「これ、食べて良いよ」

 会話が成立していないので意味が伝わっているか疑問だが腹が減ってれば食べるだろう。

 オークは恐る恐る食べ物に近寄ると手に取り食べ始めた。

 その後は食べ物を時々地面に置く作業を繰り返しながら歩いた。

 初めの頃のように恐る恐るではなくガツガツと食べている様子から警戒心は薄れているようだ。

 只の実験でゴブオ達の元へ辿り着くまでの暇潰しなので成果の方は気にしない。

 「あの山を越えた辺りだったよね?」
 方向音痴の俺は自信がなく独り言を呟いた。
 カーナビが無いので本当に自信がなく迷っている可能性も否定出来ない。

 俺は合ってる、此処で合ってるはずたと山に向かって歩くと小川に出た。

 「ほら!合ってた」
 俺は喜んだ、小屋の近くに小川が流れていたから、是を辿れば容易に辿り着けるとと。

 煙の臭いが鼻につく。
 「クンクン」
 
 昼飯の準備か?
 ゴブオ達は生肉でも平気だが、マチルダ達は加熱しないと食えない。
 ジビエだから寄生虫が怖い。

 マジックバックに入っている食材は良いお土産になるだろう。お酒もあるし。

 それに、新鮮な肉もある。
 チラっと後を見ればオークがまだついて来ていた。
 一応餌付けには成功したようだが距離は縮まらない。未だに会話もなく暇潰しの時間は終わったようだ。

 殺さずに生きたままゴブオ達に渡そうと歩き出す。

 『気配察知』にも反応があり、此処で間違い無かったと安堵する。

 小さな反応が幾つもある、その周りを大きな反応が取り囲んでいた。

 「この反応は!」
 俺は慌てて駆けだした。この反応は人間だ。小さな反応がゴブオ達で大きな反応は冒険者か?

 小屋が見える場所まで駆け寄り『忍び足』を使い接近する。

 やはり、人間だった。
 冒険者風の者達がゴブオ達を取り囲み蹴っており顔はニヤついていた。

 ゴブオ達の体は汚れておりグッタリと横たわっている。
 蹴られるゴブオを庇うように前に出たゴブリンが居る、ゴブ太だ。

 ゴブオとゴブ太はまだ生きている。
 他にも新たに仲間に加わったゴブリンが3匹いた。

 今ならまだ助けられるが冒険者達の実力が判らない。
 
 冒険者達の見た目は冒険者らしからぬ格好をしている。
 普通、森や山の中で活動する冒険者は服装の色を茶系か黒系にしている、目立たない為だがあの冒険者達は白を基調とした服、防具を来ている。

 清潔な街中ではない森や山の中では直ぐに汚れてしまうのに白い格好の冒険者達。

 「貴族達かな?」
 格好を気にする冒険者なら貴族出身ではないかと思ったが判らない。
 単なる世間知らずの可能性もある。
 
 長身金髪イケメンで腰には剣を下げている男。
 がっしりとした体格で大きな盾を装備している男。
 軽装で忍者風の白装束で身を包む者は性別不能。
 神官風の格好で帽子を被っている若い女性。
 同じく神官風の格好で曲がった杖を持つ女性。
 典型的な冒険者パーティーだ。

 実力の方は未知数だがゴブオがヤラれてる事から初心者達ではないだろう。

 如何する?
 男達を殺す事に躊躇いはない。

 女達は殺さない。必要だからだ。
 俺にもゴブオ達にも。
 
 用途は記さなくても解るよね?

 たが、相手は5人抵抗されれば殺して仕舞い兼ねない。
 どう安全に無力化するか。
 出来れば傷つけずに捕獲したいと思った時に思い出した。

 『捕縛』のスキルの事を。
 スキルを習得後1度も使用していないスキル。
 性能は習得した時に見て知っていたがレベル1の効果がどれも程の物かまでは判らない。

 俺は残りのスキルポイントを使い捕縛のレベルを上げて魔法を発動しようと意識を向けた時に金髪が剣を抜いたので中断し広場に飛び出した。

 「待て!やめろ!」
 「お前達は何者だ!」
 俺は叫びながら前に出た。

 「邪魔をするな!」
 体格の良い盾戦士から一喝。

 「「俺達は勇者パーティーだ」」
 男達は叫んだ。
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