りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

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171 頼れる仲間とリトがいれば

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泣いてしまうかもしれないから、早く戻ったのに。
セイリアにぎゅうぎゅう抱きしめられながら、私は困っていた。

「せいりあ、泣くひちゅようない」
「ひつ、必要、とかっ、不要、とかっ! そういうんじゃ、ないでしょっ!」

泣きながら怒られて、どうしようもない。
人に泣かれると、困るのだな。
どうりでリトも、いつも困っているわけだ。

「なんで我だけおいていったのぉー?! 我、ひとりでどれだけ心細かったか! 次は我が攫われるかと思うと、もう気が気じゃなくってー!」

……泣いている相手にもよるらしい、と思いつつ私たちの周囲を飛び回るファエルを眺めた。
カエルを攫ってはいかないんじゃないだろうか。あんまり装飾もないし。

「本当に、よかった……すみません! 私たちがついていながら!」
「いや、むしろ悪かった。こいつはトラブル体質だからな……」

あっちでは、リトがセイリアの両親に泣かれている。

「ごめんね、リュウ君を着飾ったりしたもんだから、こんなに目立ってしまったんだよね」

しょんぼりするセイリアに、首を振る。

「りとが、よよこんだから、りゅーはこれでいい。お礼しゅべきこと」
「……何というか、ほんっとーにリュウ君は動じないね。今攫われかけたのに、どうしてそんな通常運転なの。泣きもしないんだから」
「今回は、べちゅに命の危機なない」
「お前は命の危機でも、通常運転だろうが」

ひょいとリトの腕に抱き上げられ、確かに、と頷いた。
私はまだ、『そういうところ』で恐怖を感じない。リトがいなくなる方が、よほど怖い。
命の危機があれば、私よりもリトがきっと嫌だろうと思うから。だから、避けようとするけれど。
もちろん、せっかくだから大人になりたいと思うし、リトの役に立ちたいのだから、可能な限り長生きはするつもりなのだ。

「ねえあの野郎、私この辺りで見たことあるんだけど! パパの商売敵とか、そういうの?」
「え……? そうなのか? 私は知らないが。商売敵は犯罪者じゃないぞ」
「セイリアちゃんが見たことあるなら、この辺りの小悪党ってところじゃないかしら。もしかすると、最初から店の商品を狙って、うろついていたのかもしれないわね」

それなら、今日で良かった。セイリアの家が狙われたら大変だった。
ちなみに気を失った男は、駆け付けた衛兵にそのまま担がれていった。
真剣な顔で警備の増強を検討しているセイリア家を横目に、私も男の顔を思い返してみるけれど、残念ながら私とは完全なる初対面だ。

リトがさっきから私を抱えたままうろついているのは、もしかして装飾の値段を確認しているのだろうか。私はいらないと思うけれど……リトも欲しいのかもしれない。
リトは、私と違って色が濃いけれど、これはこれでとても映えそうだ。
きっとリトが身に着けても、大人気になるに違いない。そして、私と違って決して攫っては行かれないだろうな。

「じゃあ、世話になったな。代金はこれで合ってるか?」

キョトンと振り返ったセイリア家が、テーブルに置かれたお金とリトを交互に見て、ぽかんとしている。
いち早く立ち直ったらしいセイリア父が、リトが立ち去る前に慌てて声をかけた。

「あ、あの! 何でしょうこの代金は?! 何にせよお返しします!」
「何の? コイツが身に着けてるものだが」
「ええっ?! ご入用で?! いえそのっ、それならばもちろんお渡ししますし、代金など不要ですよ?! ご迷惑をおかけしたお詫びになればよろしいのですが……」

どうやらリトはこれらを丸ごと持って帰るらしい。

「りと、ちゅかう?」
「俺が使うわけねえだろ。お前に随分似合ってるから、あった方がいいかと思ってな」
「客寄せに?」
「いや、それはまあ……いつ使うかは考えてなかったが」

でも、リトがいる場なら、素晴らしい客寄せとして今後も使えるかもしれない。
投資としては、無駄にならない判断だ。

お金はいりませんよ?! いやいらねえ意味がわからん、と押し問答しているリト達を眺めながら、その腕を下りてセイリアに装飾を外してもらう。きちんと覚えておいて、私もリトを飾ってみたい。
綺麗に箱に入れられるひとつひとつを覚えながら、ようやく笑うようになったセイリアが私の頭を撫でた。

「あのお兄さんがそばにいる時じゃないと、これを出しちゃダメだよ。見た目ほど高価なものじゃないんだけど、キラキラして豪華でしょ? さっきみたいに悪党に狙われちゃうからね」

こくりと頷きながら、悪党と言えば、セイリアの父に聞きたいことがあったのだと思い出した。

「せいりあ、りゅーの石のこと、聞きたい」
「石? ……ああ! ねえパパ、この石知ってる? 古井戸のそばで見つけたんだけど、リュウ君が、この石を盗られるんじゃないかって心配してるから」
「どれ、そんな高価な石には見えないが……」

私のカバンに取りつけた石を、セイリア父がまじまじと見つめる。

「ふむ、これは緋晶石かな。きれいな石だからね、大事にするといいよ」
「えっ、じゃあこれ、悪い人が欲しがるものなの? リュウ君が、港でたくさん持ってるのを見たって」
「ああ、それなら赤琥珀だろう。最近よく出回っていると聞くね」
「もしかして、これとそっくりなの? じゃあ、ぶら下げてたら危ないんじゃない? 間違って狙われるかも!」

セイリアが鼻息も荒く、カバンの緋晶石を外そうとするので、慌てて私の背後に隠した。

「いやあ、そういう商売してる者が見間違うことはないよ。待ってなさい、確かあったはず……」

ややあって、奥のケースから取り出してきた箱には、確かに赤い宝石が納まっていた。
似ている、といえば似ているのだろうか? 私には、違うものに見えるけれど。

「これ? 確かに色は似てるわね……。でも、やっぱり違うわ。重み? 色の深さっていうのかな、こっちの方が高そう!」
「ほほう、さすが我が娘、よい目利きじゃないか。赤琥珀は産地が限られているからね、値段も相応になる」

じゃあ、私もよい目利きかもしれない。赤琥珀は、磨かれてなお、こっくりした艶をもつ石だけれど、緋晶石は、もう少し石らしい透明感がある。結晶構造などがわかれば、もう少し分析できるのだけれど。

「確かに、私でも分かるんだもの、これなら商人が間違うことはなさそうね。リュウちゃん、安心して大丈夫よ」

私の心配をしたわけではなかったけど、それならもういいだろう。
こくりと頷いて、もう一度赤琥珀を見た。

「うん、心配はいらないだろう。価格が全然ちがうからね」
「あら、これも一応値はつくのね。もっと探そうかな」
「ここらでは見つからないはずだけどなあ。そうだね、ちょっとセイリアの思うのと使い道は違うだろうがね。たくさんあれば、絵具の元になったはずだよ」
「ええー装飾品じゃないの? 夢がない!」

絵具は夢がないんだろうか。どっちでもいいような気がするけれど。
それなら、あの人たちは絵具のために集めていたのかもしれない。だって、私が見たのは、赤琥珀ではなく緋晶石だったから。


「お前、おちおち他所の人に預けられねえな……すげえ迷惑がかかる」
「みんないるから、大丈夫」

セイリア父にお金を押し付けることに成功したリトが、ぼやきながら夕焼けの中を歩く。
その代わりに、まだ読んでいない本や、キンタロ用の色々な紐をたくさんもらって、私とキンタロもほくほくだ。ガルーとパン、そしてペンタはそれぞれおやつをもらって、こちらも大満足している。
この頼れる仲間がいれば、大体のことは大丈夫になりそうな気がする。
ただ、リトも必要だけれど。

「大丈夫だとは思えねえなあ……」
「我、そこらに弟子と放置されるくらいなら、過保護者と一緒にダンジョンでも潜ってる方が安全な気がしてきた」

溜息を吐くリトと、なぜか王冠をもらったファエルは、揃って首を振っていた。
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