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stern reality
しおりを挟む俺と伯父さんが後部座席に座るのを確認すると、父は車のエンジンをかけて家まで向かい始めた。
結構な坂道のためあまり進まないらしい。そして、車内は相変わらずシーンと静まり返っていてエンジン音だけが響いていた。そんな中、伯父さんが口を開いた。
「なぁ、光哉。茜ちゃん高校に行くことになってもいいよな?」
それを聞いた父はミラー越しに険しい顔をしていた。それを見ていた俺はこの話題は禁句だと気づいてしまった。父は、深く溜息をつき閉ざしていた口を開いた。
「どうせまた、騒ぎでも起こして辞めるんじゃないのか」
父は呆れているみたいだ。
「そもそも、学費はどうするんだ? まさか、兄貴が出してくれるのか?」
伯父さんはそれを聞くと、聞いてくれと言わんばかりに話し始めた。
「いやーそれがな。茜ちゃん特待生で入れるらしくて、学費は学校側が免除してくれるんだ」
どうだー凄いだろっと伯父さんが褒めていると気に食わないのか、父はさらに険しい顔をしている。
「それは、助かるが。続けられるという保証はあるのか?」
学校側に迷惑がかかったらどうするんだとごにょごにょ父が言い始めると俺は流石に耐えきれなくなった。
「あの、やっぱり高校行くのやめます」
ふと出た言葉に自分自身。そして、伯父さんも驚いていた。父は、ほらやっぱりそうなるだろうと思っていたかのように口を開いた。
「じゃ、俺から後で断りの連絡をしておくよ」
家に着くと、父は先生に電話をかけた。それは、断りの連絡だった。俺に代わるように言われた様だが、「いいえ。大丈夫です」っと言って一方的に電話を切った。
それを見ていた俺は、何も言うことも出来なくて、そのまま食事の支度を始めた。
いつもと同じ、いつも通りのありふれた料理をただ作って、食卓に出すだけ。
ただ違うのは、今日は伯父さんがいることだった。
「茜ちゃん手際がいいねー。是非、夏はうちの店に来てよー」
俺が料理している姿を見ていた伯父さんはそう言ってきた。伯父さんは夏になると、海の家で働いている。何故そうしているのかは知らないが、そもそも、どう生活をやりくりしているのかが謎だったりする。
「たいした事ないですよー」っと俺が言うとそんな事ないと思うんだけどなーっと返してくる。何となく、今日は気分がよかった。だからか少しだけ豪勢にしてしまった。
いつも、終始無言の食卓なのに、今日だけは会話が花開いた。勿論、伯父さんが話を盛り上げてくれただけなのだが、それはそれで俺は助かった。
食事を終えて、俺は食器の片付けをし、リビングにいる父と母を確認する。それを見届けると同時に、自室に戻った。
深くため息を吐きながら、自室のベッドに横たわった。
「俺は、なんでこうなんだろう」
今にも泣きたいが、泣いたって誰も助けてくれない。伯父さんだって、手を差し伸べられない。実質、他人なのだから……。
俺は、父とは血が繋がっていないらしい。言わば、母の浮気相手の子。だから、父には嫌われ、そして母には無いものとされた。出来の悪い俺は、お姉ちゃんにも嫌われてしまった。
なぜ生きているのかを、見出す為に理由を作りいつしか、可愛い女の子を好きになり、そして末期状態だった。
トントンっと、ドアのノック音が聞こえると、俺はガバッと体を起こした。伯父さんが来たのかと思ったからだ。だが、来たのは伯父さんでは無かった。
「ねぇ、あんた。本当はどうしたいの?」
綺麗な顔をしたソレはドアの間から顔を出した。俺はビックリして声が出なかった。だって中学高学年以降、部屋の訪問など無かったからだ。
「言わなきゃ、わかんないんですけど」
体全体が部屋に入ると、バタンとドアを勢いよく閉めた。ソレは正しくお姉ちゃんだった。
「あんたは反抗心がないのよ」
綺麗な顔をしたお姉ちゃんの顔が怖い。
「お父さんが何言ったっていいでしょ。大事なのは、あんたの意思よ」
綺麗な顔をしたお姉ちゃんの顔が近づいてきて今にも発狂しそうだ。
「ね。あんた、高校行きたいの?行きたくないの!?」
綺麗な顔をしたお姉ちゃんは、かなり珍しく、とてつもなく恐ろしい顔をしている。
「行きたいよ!!! 行きたいに決まってるじゃん!!!!?」
そう必死に言う俺を見たお姉ちゃんは「じゃ、電話してこい」っと俺を思い切り部屋から追い出した。あとの面倒ごとは任せなと、まるで別人の様に。
そんな夢のような、出来事に困惑しながら、俺は階段を駆け下り、電話がある廊下に飛び出した。
せっかく、お姉ちゃんがこう言ってくれるんだ。諦めてはダメだと、己に言い聞かせながら。ドクンドクンと胸を高鳴らせて、俺は受話器を手に取った。
「お世話になっております。私、服部 茜と申します」
それが全ての始まりだと知らずにーーーーーー…。
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