madder story

空野らん

文字の大きさ
4 / 13
story 0

stern reality

しおりを挟む


俺と伯父さんが後部座席に座るのを確認すると、父は車のエンジンをかけて家まで向かい始めた。

結構な坂道のためあまり進まないらしい。そして、車内は相変わらずシーンと静まり返っていてエンジン音だけが響いていた。そんな中、伯父さんが口を開いた。

「なぁ、光哉。茜ちゃん高校に行くことになってもいいよな?」

それを聞いた父はミラー越しに険しい顔をしていた。それを見ていた俺はこの話題は禁句だと気づいてしまった。父は、深く溜息をつき閉ざしていた口を開いた。

「どうせまた、騒ぎでも起こして辞めるんじゃないのか」

父は呆れているみたいだ。

「そもそも、学費はどうするんだ? まさか、兄貴が出してくれるのか?」

伯父さんはそれを聞くと、聞いてくれと言わんばかりに話し始めた。


「いやーそれがな。茜ちゃん特待生で入れるらしくて、学費は学校側が免除してくれるんだ」

どうだー凄いだろっと伯父さんが褒めていると気に食わないのか、父はさらに険しい顔をしている。

「それは、助かるが。続けられるという保証はあるのか?」

学校側に迷惑がかかったらどうするんだとごにょごにょ父が言い始めると俺は流石に耐えきれなくなった。

「あの、やっぱり高校行くのやめます」

ふと出た言葉に自分自身。そして、伯父さんも驚いていた。父は、ほらやっぱりそうなるだろうと思っていたかのように口を開いた。

「じゃ、俺から後で断りの連絡をしておくよ」



家に着くと、父は先生に電話をかけた。それは、断りの連絡だった。俺に代わるように言われた様だが、「いいえ。大丈夫です」っと言って一方的に電話を切った。

それを見ていた俺は、何も言うことも出来なくて、そのまま食事の支度を始めた。
いつもと同じ、いつも通りのありふれた料理をただ作って、食卓に出すだけ。
ただ違うのは、今日は伯父さんがいることだった。

「茜ちゃん手際がいいねー。是非、夏はうちの店に来てよー」

俺が料理している姿を見ていた伯父さんはそう言ってきた。伯父さんは夏になると、海の家で働いている。何故そうしているのかは知らないが、そもそも、どう生活をやりくりしているのかが謎だったりする。

「たいした事ないですよー」っと俺が言うとそんな事ないと思うんだけどなーっと返してくる。何となく、今日は気分がよかった。だからか少しだけ豪勢にしてしまった。
いつも、終始無言の食卓なのに、今日だけは会話が花開いた。勿論、伯父さんが話を盛り上げてくれただけなのだが、それはそれで俺は助かった。
食事を終えて、俺は食器の片付けをし、リビングにいる父と母を確認する。それを見届けると同時に、自室に戻った。

深くため息を吐きながら、自室のベッドに横たわった。

「俺は、なんでこうなんだろう」

今にも泣きたいが、泣いたって誰も助けてくれない。伯父さんだって、手を差し伸べられない。実質、他人なのだから……。

俺は、父とは血が繋がっていないらしい。言わば、母の浮気相手の子。だから、父には嫌われ、そして母には無いものとされた。出来の悪い俺は、お姉ちゃんにも嫌われてしまった。
なぜ生きているのかを、見出す為に理由を作りいつしか、可愛い女の子を好きになり、そして末期状態だった。

トントンっと、ドアのノック音が聞こえると、俺はガバッと体を起こした。伯父さんが来たのかと思ったからだ。だが、来たのは伯父さんでは無かった。

「ねぇ、あんた。本当はどうしたいの?」

綺麗な顔をしたソレはドアの間から顔を出した。俺はビックリして声が出なかった。だって中学高学年以降、部屋の訪問など無かったからだ。

「言わなきゃ、わかんないんですけど」

体全体が部屋に入ると、バタンとドアを勢いよく閉めた。ソレは正しくお姉ちゃんだった。

「あんたは反抗心がないのよ」

綺麗な顔をしたお姉ちゃんの顔が怖い。

「お父さんが何言ったっていいでしょ。大事なのは、あんたの意思よ」

綺麗な顔をしたお姉ちゃんの顔が近づいてきて今にも発狂しそうだ。

「ね。あんた、高校行きたいの?行きたくないの!?」

綺麗な顔をしたお姉ちゃんは、かなり珍しく、とてつもなく恐ろしい顔をしている。


「行きたいよ!!! 行きたいに決まってるじゃん!!!!?」

そう必死に言う俺を見たお姉ちゃんは「じゃ、電話してこい」っと俺を思い切り部屋から追い出した。あとの面倒ごとは任せなと、まるで別人の様に。
そんな夢のような、出来事に困惑しながら、俺は階段を駆け下り、電話がある廊下に飛び出した。


せっかく、お姉ちゃんがこう言ってくれるんだ。諦めてはダメだと、己に言い聞かせながら。ドクンドクンと胸を高鳴らせて、俺は受話器を手に取った。



「お世話になっております。私、服部 茜と申します」

それが全ての始まりだと知らずにーーーーーー…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

もう一度、やり直せるなら

青サバ
恋愛
   告白に成功し、理想の彼女ができた。 これで全部、上手くいくはずだった。 けれど―― ずっと当たり前だった幼馴染の存在が、 恋をしたその日から、 少しずつ、確実に変わっていく。 気付いた時にはもう遅い。 これは、 「彼女ができた日」から始まる、 それぞれの後悔の物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─

七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。 「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090 ◇あらすじ 主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。 まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。 そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。 それぞれの未来が動き出す。 ◇前作のあらすじ◇ 主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。 卒業して再会した夏雄は別人のようだった。 夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。 様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...