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story 1
I'm lost
しおりを挟む入学式。それは誰もが不安を抱えつつも、期待を抱く晴れ晴れとした日だった。
そんな日に俺は、何をしているのかと地面に張り付いていた。
私立戌野岡学園っと書いてある校門をくぐったのは覚えていた。だがそこから以降の記憶が全く無かった。
新入生を迎えるために、在校生が出迎えてくれて、そのまま、そう、案内されたはずだ。ただ、案内したのが男子だった。恐怖に怯えながら、できるだけ離れて、歩いているとたどり着いた先は広い庭で、案内していた男子はそこにはいなかった。完全にはぐれてしまっていた。
そうだ、つまり俺は迷子になった。
そして途方にくれていると、足元を疎かにしていた俺は思いっきり転けた。
それと同時に、付けていた眼鏡を落としてしまった。
不運に不運を重ねた俺は、入学初日に絶望の縁に立たされ、今にも泣きそうな状態だ。そもそも、なんで共学なんだなどと、今更後悔したって仕方ない。
俺は言わば、男性恐怖症だった。男性と言っても、極限られた男性である。未成人男性、言うならば男子。
何故そうなったかは覚えていないが、知っている内にはなっていた。迷惑をかけないようにと女学院に通っていたのだが、そう簡単に上手くはいかないらしい。現に今だってこんな状況なのだ。
地面を這いつくばって、自分の眼鏡を探せど見つからない。諦めかけていた時だった。
「どうしたの?道でも迷った?」
突然の声にびっくりして飛び上がった。
「ふぁっ?!!」っと我ながら変な声を出してしまったと口を塞ぎながら、その声の主から遠ざかった。声からして女子生徒だろうと安心はしていたが、突然声を掛けられたこともあってしどろもどろになる。
「えっと、確かに迷ってて…」
そう俺が言うと優しい声で「はい。」と返事を返してくれた。それに、安心して気が抜けてきた俺は全部声に出してしまった。
「迷った挙句に、こけて眼鏡落としちゃって…」
全部吐き出した後に、はっと我に返りながら、何だこの3パンチどんなドジっ子だよっと真面目に自分に突っ込みを入れていると心配そうにその女子生徒は言葉を返した。
「それは、災難だったね」
何だこの人、女神か女神なのか。そう思っていると、思いついたかのようにその女子生徒は言葉を放った。
「一緒に探してあげるよ」
ああ、女神だ。間違いなく女神かもしれないが、こんな素敵な女神の手を汚すなど言語道断である。
「え!? 申し訳ないので、いいですよ。もうすぐHRなんじゃ…」
絶対汚してなるものかと言わんばかりに必死だった。必死に断ったつもりだったのだ。
「いいの。私がそうしたいだけだから、勝手に探させてよ」
なんてことだ。この女神、かなり手強い。俺はこういう、押しには弱い方だった。ノーとは言えず有難く受け取るしか出来ないではないか。実際、1人で探すには厳しい状態だった俺は、こう返すしか他なかった。
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、女子生徒は喜んでいるようで、探しているところを見ると何だか楽しそうに見えた。
昔もこうやって誰かと何かを探し回った気がする。何だか俺は懐かしい気分になっていた。
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