俺と君の結婚できない理由。

空野らん

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ep.6

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正直に言うと、朝、桜子ちゃんに起こされたのは気まずかった。
友樹さんに昨晩言われた言葉を思い出してしまい。平常心ではいられなかった。だけれど、桜子ちゃんの朝の行動を見ていたら何だかそう思っていたのが馬鹿らしく、朝食を取ってる今は穏やかな気持ちだ。

「真文と知り合いってどういうこと?」


友樹さんの息子であるひいらぎくんがそういう言うと、友樹さんはこう諭す。

「元に止められててね。ほら、田舎のコミュニティーって狭いからすぐ広まってしまうし、穏やかに暮らすにはそれが一番だからね」


「まぁ、確かに真文が知り合いってだけで家族経営の花屋に沢山人が押し寄せてもさばききれないか」

それを聞いてふむふむと味噌汁をすする柊くんは、その隣にいる桜子ちゃんを見てニヤリと笑う。
それを見た桜子ちゃんは、頬を赤らめると柊くんに怒っている口調で言葉を発する。

「ひいちゃん。何か言いたいなら、目で訴えるんじゃなくてちゃんと言いなさいよ」

そういうと柊くんはクスクスと笑う。

「え? 言ってもいいの? 真文さん知ってますか? さっちゃんが……」

柊くんの言葉を聞いていた桜子ちゃんがちょっと待ってと柊くんの口を両手で塞ぐと、友樹さんが桜子を虐めるんじゃないと柊くんを諭してるようだ。
俺は何を言おうとしていたのか、気になりはしたが桜子ちゃんの必死な様子を見ていると聞き出すことは出来なかった。
というよりも、仲のいい2人を見ているとどうしようもなくモヤモヤとした気持ちになる。あだ名で呼び合っているし、羨ましくもある。

そんな中である事を思い出した。
思い出してはいけないとは思うがあの現場で聞いてしまった俺を呼んだのであろう。桜子ちゃんの言葉。


「…じろちゃん」

俺がそう囁くと桜子ちゃんはハッと俺の方を向いた。


「え…聞こえてたんですか?」

戸惑った様子で俺の方をみている桜子ちゃんに俺はニコリと笑いかける。


「聞こえたも何も、聞こえるに決まってる。じろちゃんって俺のあだ名だよね?」


何となくむず痒い。懐かしさも感じるその俺のあだ名を桜子ちゃんにリクエストする事にした。


「是非、じろちゃんって呼んで欲しいな」

桜子ちゃんは戸惑っている様で、中々言葉を発せないみたいだ。
見ていられなかったのか友樹さんが口を開いた。


「昔、そう呼んでたんだし。本人からお願いされてるんだから、勿体ぶらなくてもいいんじゃない?」

桜子ちゃんは眉を八の字にしながら、うぅっと声を唸らせる。そんな様子を見ていたら何だか申し訳なく思ってしまった。無理して呼ばなくても大丈夫だよと言おうと言葉を発しようとした時だった。



「じろちゃん」


俺をそう呼んだ桜子ちゃんの様は今にもタコになりそうな程に真っ赤だった。


「はい。ありがとう桜子ちゃん」

俺がそう言うと桜子ちゃんは元々小さな身体なのに、どんどん萎んでいく。


「さっちゃん。毎度そうなってたら、色々支障でるよ?」

柊くんが嘲笑うとバシンと柊くんの背中を叩く桜子ちゃん。仲がいいなぁっと勝手に羨ましく思っているそんな中で桜子ちゃんと柊くんの言葉が飛び交う。


「慣れてないだけだもん」

「昔、呼んでるなら慣れてるよね?」

「昔と今は違うじゃん」

「違わないでしょ?」

「違うわよ」

「だって今も好きじゃん」


柊くんのその言葉に、んっ?っと俺も含め友樹さんと桜子ちゃんが戸惑っていると柊くんは、何だこの大人達はと思ってもいるのか目を細めた。


「俺は子供なので大人の事は分からないんですけど、思い悩むならさっさと行動しろって思うんですよね。ま、子供なので本当に大人の事は分からないんですけど」

言ってやったっと満足しながら朝食を完食した柊くんが、食卓を後にした。
友樹さんがハッとなって、フォローに入る。

「ごめんね次朗くん!今、柊の言ったことは気にしないでいいから!!」


気にしないも何もなんの事だか俺自身分かっていないので大丈夫と言えば大丈夫なのだが、目の先にいる桜子ちゃんの様子が何だかおかしい。

「…桜子ちゃん大丈夫?」


桜子ちゃんは俺の声に気づいてハッと目を見開いた。


「すみません。二日酔いみたいでちょっと気分悪くて」

そう言う桜子ちゃんの昨日の飲みっぷりを思い出した。今になって思えば桜子ちゃんは振られたばかりで、傷心したばかりなのに昔馴染みにヅケヅケされてるんだよな。俺だったら絶対に嫌だなっと今更、反省をしてしまう。


「ごめん。かなり久しぶりに会ったなのに馴れ馴れしくしてしまって…」

そう謝っている俺に桜子ちゃんは違うと手を横に振った。


「謝らないでください。じろちゃんに会えて私は嬉しいです」


「本当に?」


桜子ちゃんは二日酔いで辛いはずなのに、ニコニコと笑顔でこう言った。


「はい。本当です!」





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