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1年生編:1学期
第7話 中間テスト発表
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5月の風が、少しずつ初夏の気配を運び始めていた。
開け放たれた教室の窓からは、運動部の掛け声と、グラウンドを駆け抜ける風の音が聞こえる。そんな中、担任が黒板に「中間テストの日程」を書き始めた瞬間、教室の空気が一変した。
「……は?」
晴は、手にしていたシャーペンを思わず落とした。
黒板には、無情にも《来週の月曜から中間テスト》の文字。
「早くない!? まだ、一学期が始まったばっかじゃん!」
隣の席で叫ぶ晴に、前の席の男子が苦笑しながら振り返る。
「お前、毎年それ言ってるタイプだな」
「だって早いだろ!? せめてあと二週間は欲しいって!」
「晴、そういうこと言ってないで、今のうちにノート整理しときなよ(笑)」
隣で笑いながら言ったのは、美羽。
春の日差しに透けるような桜色の髪が、窓から差し込む光を受けてやわらかく揺れていた。美羽はペンを走らせながらも、淡々と黒板を写している。
「お前、こういうの、全然焦らないよな……」
「焦っても点数上がるわけじゃないし。落ち着いて準備するのが一番だよ!」
「いや、それができないんだって俺は!」
「ふふ。知ってる(笑)」
美羽は頬杖をつきながら、楽しそうに笑った。
晴は頬をかきながらため息をつく。
恋人になってまだ数日。少しずつ、彼女との距離が変わっていくのを感じていた。けれど、こうして話していると、今まで通りの幼馴染のままのようでもある。
「はい、日程はこの通りだ。各自、計画的に勉強しておくように!」
担任の声が教室に響く。
生徒たちの間からは、「終わった……」「やばい……」「今回は頑張る!」など、悲鳴と決意が入り混じったような声が上がった。
チャイムが鳴り、授業が終わると同時に、晴は机に突っ伏した。
「死んだ……。英語と数学、完全に終わってる……」
「ふふっ。ちゃんと授業聞いてれば、そんなことないのに」
「うっ……。耳が痛い……」
「じゃあ、今度うち来る? 一緒に勉強すれば?」
さらりと告げた美羽の一言に、晴は思わず顔を上げた。
「えっ……お前んち!?」
「うん。どうせ一人でやっても集中しないでしょ?」
「そ、そんなこと……」
「昨日も夜ゲームしてたでしょ」
「……なんで知っているの.....?」
美羽はくすくすと笑う。その笑顔はどこか楽しげで、けれど優しかった。
晴の心臓が、わずかに高鳴る。
「ま、でも……助かるかも。美羽のノート、わかりやすいし」
「じゃ、決まり。金曜の放課後ね」
「……はい」
了承した瞬間、晴は心の中でガッツポーズをした。
(いや、勉強会なんだけどな。けど……美羽の家か……)
放課後、昇降口を出るころには、日差しが少し傾いていた。
二人は並んで歩きながら、学校前の道を下る。
周囲には部活帰りの生徒たちがちらほら。美羽は制服のスカートを軽く揺らしながら、ゆっくりと歩調を合わせてくれている。
「中間テスト終わったら、またどっか行こうよ」
「いいけど、今度は勉強サボらないでね?」
「お、おう……」
「じゃないと、赤点コースだもんね」
「うっ……! その通りです!」
軽口を叩き合いながら歩く道。その途中、ふと美羽が小さくつぶやいた。
「でも……晴が隣で頑張ってるの、ちょっと楽しみかも」
「え?」
「な、なんでもない!」
頬を少し赤らめた美羽が、慌てて前を向いた。
晴は照れ隠しのように頭をかく。
夕方の光が二人を包み、ゆるやかに影を伸ばしていた。
木曜の放課後の図書室。中間テスト前とあって、いつもより人が多い。美羽は静かにノートを開き、ペンを走らせていた。晴はその隣で英単語帳と格闘している。
「……晴、そこ間違ってる。これは受動態」
「え、あれ? これじゃないの?」
「違う違う。動詞が変わってるでしょ?」
「あー……」
「ちゃんと覚えようね?」
「は、はい……」
まるで先生と生徒のような空気。だけど、美羽は時折楽しそうに笑い、晴が理解すると嬉しそうに頷く。その表情を見るだけで、晴の疲れも少し吹き飛んだ。
「……なに?」
「いや、楽しそうだなって思って」
「そりゃあ、晴がちゃんと頑張ってるからね」
「なんか子ども扱いされてる気がする」
「ふふ、実際そうだもん」
「ぐぬぬ……」
小声で笑い合うふたりの間に、静かな空気が流れた。
窓の外では、夕日が沈みかけている。
美羽の髪が光を反射して、淡く桜色に染まっていた。
「ねぇ晴」
「ん?」
「今回、ちゃんと頑張ろ。中間テストが終わったらまたどっか行けるように」
「……ああ、頑張るよ」
その瞬間、晴は小さく笑ってうなずいた。
教室でも、放課後でも、どんなときでも。
隣で笑う彼女がいる――そのことが、何よりも嬉しかった。
帰り道、日がすっかり沈み、街灯がひとつ、またひとつと灯り始める。二人は肩を並べて歩く。歩道を吹き抜ける風が少しだけ涼しくて、季節の変わり目を感じさせた。
ふと、美羽が晴の手をそっと取る。
「……テスト終わるまで、頑張ろうね」
「おう。今回の中間テスト、絶対赤点取らない!」
「そこは“取らないように頑張る”でしょ」
「……そうとも言う」
「もう(笑)」
笑いながら、美羽は少しだけ晴の手を強く握った。
その温もりが、春の夜風の中に溶けていく。
――恋人になって、少しずつ始まる“いつもと違う日常”。
晴はその瞬間、自分の中に芽生えた小さな変化を感じていた。
開け放たれた教室の窓からは、運動部の掛け声と、グラウンドを駆け抜ける風の音が聞こえる。そんな中、担任が黒板に「中間テストの日程」を書き始めた瞬間、教室の空気が一変した。
「……は?」
晴は、手にしていたシャーペンを思わず落とした。
黒板には、無情にも《来週の月曜から中間テスト》の文字。
「早くない!? まだ、一学期が始まったばっかじゃん!」
隣の席で叫ぶ晴に、前の席の男子が苦笑しながら振り返る。
「お前、毎年それ言ってるタイプだな」
「だって早いだろ!? せめてあと二週間は欲しいって!」
「晴、そういうこと言ってないで、今のうちにノート整理しときなよ(笑)」
隣で笑いながら言ったのは、美羽。
春の日差しに透けるような桜色の髪が、窓から差し込む光を受けてやわらかく揺れていた。美羽はペンを走らせながらも、淡々と黒板を写している。
「お前、こういうの、全然焦らないよな……」
「焦っても点数上がるわけじゃないし。落ち着いて準備するのが一番だよ!」
「いや、それができないんだって俺は!」
「ふふ。知ってる(笑)」
美羽は頬杖をつきながら、楽しそうに笑った。
晴は頬をかきながらため息をつく。
恋人になってまだ数日。少しずつ、彼女との距離が変わっていくのを感じていた。けれど、こうして話していると、今まで通りの幼馴染のままのようでもある。
「はい、日程はこの通りだ。各自、計画的に勉強しておくように!」
担任の声が教室に響く。
生徒たちの間からは、「終わった……」「やばい……」「今回は頑張る!」など、悲鳴と決意が入り混じったような声が上がった。
チャイムが鳴り、授業が終わると同時に、晴は机に突っ伏した。
「死んだ……。英語と数学、完全に終わってる……」
「ふふっ。ちゃんと授業聞いてれば、そんなことないのに」
「うっ……。耳が痛い……」
「じゃあ、今度うち来る? 一緒に勉強すれば?」
さらりと告げた美羽の一言に、晴は思わず顔を上げた。
「えっ……お前んち!?」
「うん。どうせ一人でやっても集中しないでしょ?」
「そ、そんなこと……」
「昨日も夜ゲームしてたでしょ」
「……なんで知っているの.....?」
美羽はくすくすと笑う。その笑顔はどこか楽しげで、けれど優しかった。
晴の心臓が、わずかに高鳴る。
「ま、でも……助かるかも。美羽のノート、わかりやすいし」
「じゃ、決まり。金曜の放課後ね」
「……はい」
了承した瞬間、晴は心の中でガッツポーズをした。
(いや、勉強会なんだけどな。けど……美羽の家か……)
放課後、昇降口を出るころには、日差しが少し傾いていた。
二人は並んで歩きながら、学校前の道を下る。
周囲には部活帰りの生徒たちがちらほら。美羽は制服のスカートを軽く揺らしながら、ゆっくりと歩調を合わせてくれている。
「中間テスト終わったら、またどっか行こうよ」
「いいけど、今度は勉強サボらないでね?」
「お、おう……」
「じゃないと、赤点コースだもんね」
「うっ……! その通りです!」
軽口を叩き合いながら歩く道。その途中、ふと美羽が小さくつぶやいた。
「でも……晴が隣で頑張ってるの、ちょっと楽しみかも」
「え?」
「な、なんでもない!」
頬を少し赤らめた美羽が、慌てて前を向いた。
晴は照れ隠しのように頭をかく。
夕方の光が二人を包み、ゆるやかに影を伸ばしていた。
木曜の放課後の図書室。中間テスト前とあって、いつもより人が多い。美羽は静かにノートを開き、ペンを走らせていた。晴はその隣で英単語帳と格闘している。
「……晴、そこ間違ってる。これは受動態」
「え、あれ? これじゃないの?」
「違う違う。動詞が変わってるでしょ?」
「あー……」
「ちゃんと覚えようね?」
「は、はい……」
まるで先生と生徒のような空気。だけど、美羽は時折楽しそうに笑い、晴が理解すると嬉しそうに頷く。その表情を見るだけで、晴の疲れも少し吹き飛んだ。
「……なに?」
「いや、楽しそうだなって思って」
「そりゃあ、晴がちゃんと頑張ってるからね」
「なんか子ども扱いされてる気がする」
「ふふ、実際そうだもん」
「ぐぬぬ……」
小声で笑い合うふたりの間に、静かな空気が流れた。
窓の外では、夕日が沈みかけている。
美羽の髪が光を反射して、淡く桜色に染まっていた。
「ねぇ晴」
「ん?」
「今回、ちゃんと頑張ろ。中間テストが終わったらまたどっか行けるように」
「……ああ、頑張るよ」
その瞬間、晴は小さく笑ってうなずいた。
教室でも、放課後でも、どんなときでも。
隣で笑う彼女がいる――そのことが、何よりも嬉しかった。
帰り道、日がすっかり沈み、街灯がひとつ、またひとつと灯り始める。二人は肩を並べて歩く。歩道を吹き抜ける風が少しだけ涼しくて、季節の変わり目を感じさせた。
ふと、美羽が晴の手をそっと取る。
「……テスト終わるまで、頑張ろうね」
「おう。今回の中間テスト、絶対赤点取らない!」
「そこは“取らないように頑張る”でしょ」
「……そうとも言う」
「もう(笑)」
笑いながら、美羽は少しだけ晴の手を強く握った。
その温もりが、春の夜風の中に溶けていく。
――恋人になって、少しずつ始まる“いつもと違う日常”。
晴はその瞬間、自分の中に芽生えた小さな変化を感じていた。
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