隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

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1年生:2学期編

第41話 久しぶりのデート

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林間学校の振り替え休日。
平日の街はどこか静かで、休日の賑やかさとも違う、落ち着いた空気が流れていた。通勤途中の人の足音と、遠くを走る車の音だけが、時間がきちんと進んでいることを教えてくれる。

晴は自分の部屋のベッドに仰向けになり、スマホを手に持ったまま、ぼんやりと天井を見つめていた。
身体の疲れはまだ少し残っている。脚の奥に、山道を歩いた感覚がうっすらと残っているのが分かる。それなのに、頭だけは妙に冴えていて、眠る気にもなれなかった。

(……あれから、ちゃんと話せてないな)

林間学校の二日目が終わってから、美羽とも、紗耶とも、どこか一線を引いたままだった。
学校に戻っても、普段通りの会話はできている。笑顔もある。けれど、言葉にされない“何か”が、確実に間に残っている。

考えないようにしても、キャンプファイヤーの夜のことが、ふとした瞬間に浮かんでくる。
炎に照らされた紗耶の表情。
真っ直ぐで、迷いのない声。

(逃げたわけじゃない。でも……)

自分に言い聞かせるように、晴は息を吐いた。

そのとき、スマホが小さく震えた。
画面に浮かび上がった通知に、心臓が一拍だけ早くなる。

《晴、今日これから空いてる?》

表示された名前は、美羽だった。

《うん、空いてるよ》

そう返すと、間を置かずに次のメッセージが届く。

《じゃあさ、久しぶりにデートしよ? 振り替え休日だし!》

その一文を見た瞬間、胸の奥に溜まっていた重たいものが、少しだけほどけるのを感じた。
同時に、逃げられない時間が来たのだとも思う。

《分かった、行こう!》

短い返事だったが、迷いはなかった。

映画館は、平日ということもあって人が少なかった。
ロビーには控えめなBGMが流れ、ポップコーンの甘い香りがふんわりと漂っている。学生の姿は少なく、大人ばかりの空間が、少しだけ背筋を伸ばさせた。

美羽は淡い色のワンピースに、肩から小さなバッグを下げて立っていた。
髪は自然に下ろされていて、光を受けて柔らかく揺れている。

林間学校で見た体操服姿とは違い、少し大人びた雰囲気。
晴は一瞬だけ、言葉を忘れた。

「お待たせ」

「ううん、今来たとこ」

自然なやり取り。
けれど、その何気な距離感が、今はやけにありがたく感じられた。

上映が始まり、館内が暗くなる。
スクリーンの光が、美羽の横顔を淡く照らす。

笑う場面では小さく肩を揺らし、切ないシーンでは、息を詰めるように静かになる。
その一つ一つを横目で追いながら、晴の胸の奥が、じんわりと温かくなっていった。

(……やっぱり、好きだ)

迷いようのない感情だった。
時間をかけて積み重ねてきたものが、簡単に揺らぐわけがない。

映画が終わり、二人は近くのファミレスに入った。
昼過ぎの店内は落ち着いていて、窓から差し込む光がテーブルを明るく照らしている。

ドリンクバーで何を取るか少し迷い、向かい合って席に戻る。
グラスの氷が、カランと小さく鳴った。

「映画、よかったね」

「うん。思ったより泣きそうになった」

「でしょ?」

美羽は楽しそうに笑う。
けれど、その笑顔を見つめながら、晴の胸の奥が、ちくりと痛んだ。

(……今、言わなきゃ)

料理が運ばれ、二人ともフォークを手に取る。
少し会話が途切れた、その瞬間。

晴は意を決して、フォークを置いた。

「美羽」

「ん?」

呼びかける声は、いつもより少し硬かった。

「林間学校でさ……紗耶に、告白された」

一瞬、時間が止まったように感じた。

美羽の手が、ほんのわずかに止まる。
表情は変わらない。けれど、瞳が揺れたのを、晴は見逃さなかった。

「……そっか」

短い返事。
それでも、その一言の中に、驚きと戸惑い、そして覚悟が混ざっているのが分かる。

「すぐに返事はしてない。できなかった」

晴は視線を逸らさず、続けた。

「美羽にちゃんと話さなきゃって思ってた。隠したくなかった」

美羽はしばらく黙ったまま、グラスの中の氷を見つめていた。
カラン、とまた小さな音が鳴る。

「……正直、動揺した」

そう前置きしてから、ゆっくりと顔を上げる。

「でも、言ってくれてありがとう」

その言葉に、晴は胸の奥で、深く息を吐いた。

「私たち、付き合ってるんだもんね」

「うん」

「だから、ちゃんと向き合おう」

それは強がりでも、軽い言葉でもなかった。
逃げずに、壊れる可能性ごと受け入れようとする、美羽なりの覚悟だった。

「晴は……どうしたいの?」

真っ直ぐな視線。
逃げ場のない問い。

晴は少しだけ間を置き、はっきりと言った。

「俺は、美羽と一緒にいたい」

迷いのない言葉。

その瞬間、美羽の肩から、ふっと力が抜ける。

「……よかった」

小さく、でも確かな声だった。

ファミレスの窓の外では、いつの間にか夕方の光が街を染め始めていた。
振り替え休日の一日は、静かに終わりへと向かっている。

まだ解決していない問題はある。
紗耶の気持ちも、曖昧なままだ。

それでも――
晴と美羽は、同じテーブルで、同じ時間を選んだ。

その事実だけが、今は何よりも確かで、大切だった。
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