隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034

文字の大きさ
44 / 47
1年生:2学期編

第44話 あの日の答え

しおりを挟む
週末の朝。
晴は自分の部屋のベッドに仰向けになり、スマホをいじっていた。

画面を流れていくのは、短い動画と、誰かのどうでもいい日常。
面白くもないのに、指だけが惰性で動いている。
スクロールして、止めて、また流す。その繰り返し。

――中間テスト。
――林間学校の夜。
――紗耶からの告白。

考えないようにしても、頭の中には同じ言葉ばかりが浮かんでは消え、また戻ってくる。

「……はぁ」

小さく息を吐き、スマホを胸の上に置く。
天井を見つめながら、晴はゆっくりと目を閉じた。

美羽と付き合っている。
それは揺るぎない事実だ。
好きだし、大切だし、一緒にいるのが当たり前になっている。

でも――
紗耶の気持ちを聞いてから、心のどこかが落ち着かないままなのも、確かだった。

断ったわけじゃない。
答えを出したわけでもない。
曖昧なまま、時間だけが過ぎている。

それが一番よくないと、分かっているのに。

「……よし」

晴は勢いをつけるようにベッドから起き上がり、机に向かった。
参考書を開き、ペンを持つ。

――ちゃんとしないと。
――逃げたままじゃダメだ。

そう思った、その瞬間。

スマホが震えた。

机の端に置いたスマホに、視線が吸い寄せられる。
画面に表示された名前を見て、晴の指が一瞬止まった。

「紗耶」

胸の奥が、きゅっと縮む。
少し迷ってから、通話ボタンを押した。

「……もしもし」

『あ、晴くん?今、大丈夫?』

受話口から聞こえてきたのは、いつもより少しだけ緊張した声。
それだけで、彼女が何を言いたいのか、なんとなく察してしまう。

「うん、大丈夫だけど」

『よかった。あのね……よかったら今日、図書館で一緒に勉強しない?週末だし、集中できるかなって』

一拍、間があった。
その沈黙の中に、彼女の不安と期待が混じっているのが分かる。

断る理由は、正直あった。
美羽の顔が一瞬、頭をよぎる。

でも――
このまま避け続ける方が、もっと無責任だ。

「……うん、いいよ」

そう答えた自分の声は、思ったより落ち着いていた。

『ほんと?ありがとう。じゃあ、いつもの市立図書館で』

通話が切れる。
画面が暗くなり、部屋の静けさが戻ってきた。

晴はスマホを机に置き、深く息を吸う。

――今日、ちゃんと話そう。
――逃げない。

そう、心に決めた。

市立図書館は、週末らしくそこそこ人がいた。
それでも全体に静かな空気が流れていて、足音やページをめくる音さえ控えめだ。

窓際の席で、紗耶はすでに待っていた。
白いシャツに淡い色のカーディガン。
制服とは違う私服姿は、どこか大人びて見える。

「お待たせ」

「ううん、今来たところ」

そう言って、紗耶は微笑んだ。
その笑顔を見た瞬間、晴の胸が少しだけ痛んだ。

――この人を、傷つける。

その事実から、目を背けられなくなる。

二人は並んで座り、黙々と勉強を始めた。
ページをめくる音、ペンが紙を走る音。
それだけが、静かに響く。

時々、ふと視線が合う。

そのたびに、紗耶は小さく笑って、すぐにノートへ視線を戻した。

――何も言わない。
――でも、何かを待っている。

それが、はっきりと伝わってくる。

数時間後。

「……今日はここまでにしよっか」

紗耶が時計を見て言った。

「そうだね」

教科書を閉じた瞬間、
さっきまでの静けさが、急に重く感じられた。

図書館を出ると、夕方の空気がひんやりとしている。
西の空はオレンジ色に染まり始めていた。

並んで歩きながら、二人とも言葉を探している。
沈黙が、さっきよりもずっとはっきり存在していた。

そして、人通りの少ない場所に来たとき。

「……晴くん」

紗耶が立ち止まる。

晴も足を止め、彼女を見る。

「この前のこと……覚えてる?」

その問いに、逃げ場はなかった。

「うん」

晴は、ゆっくり頷く。

「そろそろ、あの時の答えと聞きたくて.....」

紗耶の声は震えていた。
でも、その目は真っ直ぐで、迷いがなかった。

晴は、深く息を吸う。

「紗耶」

名前を呼ぶだけで、胸が締めつけられる。

「告白してくれて、すごく嬉しかった。それは本当だよ」

紗耶の表情が、ほんの少しだけ和らぐ。

「でも……」

その一言で、彼女はすべてを悟ったようだった。

「俺、やっぱり美羽が好きなんだ」

はっきりと、逃げずに言った。

「付き合ってるのもあるけど、それ以上に……迷ったり、比べたりすること自体が、違うって思った」

紗耶は唇をぎゅっと噛みしめる。

数秒の沈黙。
夕方の風が、二人の間を静かに通り抜ける。

やがて、彼女は小さく息を吐いて、笑った。

「……そっか」

その笑顔は、少しだけ無理をしていた。

「ちゃんと答えてくれて、ありがとう」

「ごめん」

「ううん」

紗耶は首を振る。

「振られるの、覚悟してたし。でも……」

一歩、前に出て、はっきりと言った。

「私、まだ諦めないから!」

晴は目を見開く。

「今すぐどうこうするつもりはないよ?でも、気持ちは変わらない」

少し照れたように、でも強い目で。

「だから……覚えてて」

夕暮れの光が、二人を包む。

晴は、ゆっくりと頷いた。

「……うん」

それ以上、言えることはなかった。

紗耶は最後にもう一度微笑むと、軽く手を振った。

「じゃあね、晴くん」

その背中を見送りながら、
晴は胸の奥に残る、複雑な感情を噛みしめていた。

答えは出した。
でも、すべてが終わったわけじゃない。

この恋は、まだ静かに続いていく――
そんな予感だけが、夕暮れの空に残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【朗報】俺をこっぴどく振った幼馴染がレンカノしてたので2時間15,000円でレンタルしてみました

田中又雄
恋愛
俺には幼稚園の頃からの幼馴染がいた。 しかし、高校進学にあたり、別々の高校に行くことになったため、中学卒業のタイミングで思い切って告白してみた。 だが、返ってきたのは…「はぁ!?誰があんたみたいなのと付き合うのよ!」という酷い言葉だった。 それからは家は近所だったが、それからは一度も話をすることもなく、高校を卒業して、俺たちは同じ大学に行くことになった。 そんなある日、とある噂を聞いた。 どうやら、あいつがレンタル彼女なるものを始めたとか…。 気持ち悪いと思いながらも俺は予約を入れるのであった。 そうして、デート当日。 待ち合わせ場所に着くと、後ろから彼女がやってきた。 「あ、ごめんね!待たせちゃっ…た…よ…ね」と、どんどんと顔が青ざめる。 「…待ってないよ。マイハニー」 「なっ…!?なんであんたが…!ばっかじゃないの!?」 「あんた…?何を言っているんだい?彼女が彼氏にあんたとか言わないよね?」 「頭おかしいんじゃないの…」 そうして、ドン引きする幼馴染と俺は初デートをするのだった。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

処理中です...