隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

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1年生:2学期編

第45話 中間テスト1日目

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朝の空気は、いつもより少しだけ張りつめていた。
雲ひとつない青空が広がっているのに、不思議と胸の奥が落ち着かない。

空はこんなにも澄んでいるのに、心の中には薄く靄がかかったような感覚がある。
登校する生徒たちの足取りも、どこか重たく見えた。

「……ついに今日だね」

美羽が小さく呟き、隣を歩く晴を見る。
肩にかけたスクールバッグは、いつもと同じ重さのはずなのに、やけにずしりと感じた。

「国語、英語、社会……初日から詰め込みすぎだろ」

晴は苦笑しながら答える。
昨夜遅くまでノートを見返していたせいで、目の奥が少しだけ熱を持っている。

「でも、ちゃんと勉強したでしょ?」

「……ちゃんと勉強した、と思いたい」

自信がないわけじゃない。
ただ、テスト本番特有の不安が、じわじわと湧いてくる。

そんな会話を交わしながら歩いていると、後ろから聞き慣れた声がした。

「おはよう~!」

振り返ると、紗耶が少し早足で近づいてくる。
制服姿はいつも通り整っているのに、表情はどこか硬い。

「おはよ、紗耶ちゃん」

美羽は自然に手を振った。
けれど、晴はほんの一瞬だけ間を置いてから、短く頷く。

「……おはよう」

三人で並んで歩き始める。
それでも、会話は自然と少なくなった。

(……テスト、だな)

晴は自分にそう言い聞かせる。
それ以上の意味を考えないように。

紗耶もまた、前を向いたまま黙って歩いている。
視線はまっすぐなのに、その横顔からは、どこか張りつめた空気が伝わってきた。

校門をくぐると、校舎全体がいつもより静かに感じられる。
廊下ですれ違う生徒たちも口数が少なく、ノートやプリントを抱えている。

「おはよう」と挨拶しても、返ってくる声はどこか小さい。

教室に入ると、すでに何人かが最後の確認をしていた。
英単語をぶつぶつ唱える声。
社会の年号を指でなぞりながら、必死に覚え直す姿。

晴は自分の席に座り、机の中からペンケースを取り出す。

(やれることはやった)

そう思おうとするが、心臓の音は少しだけ早い。
耳の奥で、どくどくと脈打つ感覚がはっきり分かる。

美羽は静かにノートを閉じ、深呼吸をしていた。
その横顔は落ち着いて見えるが、指先がほんのわずかに震えている。

前の席の紗耶は、背筋を伸ばして前を向いていた。
ペンを整え、机の上をきれいに揃える仕草が、彼女の緊張を物語っている。

やがてチャイムが鳴り、監督の先生が入ってくる。

教室の空気が、一気に引き締まった。

「では、中間テスト一日目。国語から始めます」

問題用紙が配られ、開始の合図が響く。

――国語。

用紙をめくる音が、教室に一斉に広がる。
晴は一問目から慎重に文章を追っていった。

選択肢を一つずつ潰しながら、根拠を確認する。
林間学校の帰り道、バスの中で読んだ評論文が頭に浮かび、少しだけ安心する。

(……いける、かも)

不安が、ほんの少しだけ和らぐ。

隣を見ると、美羽は落ち着いた表情でペンを動かしていた。
迷いのない筆運び。それを見て、素直にすごいなと思う。

前の席の紗耶も、集中して問題に向き合っている。
ときどきペンが止まり、文章を読み返すが、すぐにまた書き始めた。

終了のチャイム。

小さなため息が、教室のあちこちから漏れる。

続いて英語。
内容は長文、文法のみでリスニングはなし。

(頼む……覚えててくれ)

晴は必死に記憶を引き出しながら答えを埋めていく。
勉強会でやった問題がそのまま出たとき、思わず心の中でガッツポーズをした。

美羽も一瞬だけ顔を上げ、問題文を確認してから、静かに書き進めている。

最後は社会。
内容は年号、用語、資料問題。

(ここが一番不安……)

紗耶は途中で少し眉を寄せていたが、消しゴムを使いながら、最後まで諦めずに書き込んでいた。

そして、中間テスト1日目のテストが終わった。

「……終わったぁ」

晴は机に突っ伏しそうになるのを、ぎりぎりでこらえた。

「お疲れさま」

美羽が小さく微笑む。

「どうだった?」

「正直、英語はちょっと怪しい」

その会話に、紗耶も加わる。

「社会、思ったより問題量が多くて時間が足りなかった……」

「だよな。油断してた」

三人は苦笑し合う。
気まずさよりも、同じ一日を乗り切った安堵感のほうが大きかった。

「今日は早めに休んで、明日に備えようね!」

美羽が言う。

その言葉に、晴と紗耶は素直に頷いた。

(まだ続く。でも――)

少なくとも今日という一日は、ちゃんと前に進んだ。
三人で並んで、同じ緊張をくぐり抜けた。

中間テスト一日目は、
そうして静かに、確かに、幕を閉じた。
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