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第一章 紫電の射手
act.9 勇者の紹介状
しおりを挟むイグナールとモニカは登録のためにバージスにある討伐ギルドへとやってきていた。人類の拠点であるバージスのギルドには、人間界から猛者ばかりが集まる。目的の多くは魔界へ行くための認定を貰うためだ。
勇者一行以外が魔界への道を切り開くには討伐ギルドで依頼をこなし、信頼と実績を積み認められなければならない。主に依頼として出されるのは魔物被害から来るものがほとんどだ。そして各地によって依頼の難易度は異なり、魔界との距離が近くなるにつれて高くなる。
勿論バージスで取り扱っている依頼の難度は軒並み高く、ギルド認定の最終テストと言っても差し支えない。イグナールやモニカのように路銀目当てで依頼を受けに来るものは少ない。
「取りあえず来てみたけど、俺たちの実力で依頼を寄越してくれるのかよ……」
「それは問題なんじゃないかな。ディルクが口利きしてくれたみたいだし」
するとモニカは凶器にもなるカバンから高級そうな羊皮紙を取り出した。勇者直筆の紹介状だ。
「またディルクに借りが出来たな」
「それだけイグナールの将来に期待してるってことじゃないの?」
俺に兄がいたならあんな感じなのかなとイグナールはディルクの顔を思い出していた。
「すみません」
モニカが受付の一人に尋ねる。
「勇者ディルクの紹介で来たモーニカ・フォン・ハイデンライヒとイグナール・フォン・バッハシュタインです」
受付の女性はニッコリと笑顔を見せ、少々お待ちくださいと受付の奥へと消えていった。しばらくして戻ってくると彼女の手には小箱がある。モニカに向けて開いて見せると中には均等な距離で美しく並べられた3つの宝石が輝きを放っていた。
見る限り宝石の種類は2種、内2つは無色透明で屋内の光を増幅するように反射してキラキラと輝いている。もう一つは紅く燃えるような輝きを自らが放っているようだ。
「失礼ですが、紹介状の確認を致します」
受付の女性がモニカから羊皮紙の紹介状を受け取り広げるとそこには何も書かれていない。その羊皮紙に紅い宝石を乗せると、たちまち燃えるように文字が浮かび上がる。そこには勇者ディルクから討伐ギルドへのイグナールとモニカについての基本的な情報や耐えうる依頼難度などについて書かれてあった。
「はい、確認が取れました」
これは秘密文書。偽造や紛失からの悪用を防ぐため、魔力を込めた羊皮紙と宝石を使って施す魔法の一種だ。両方が揃わないとただの白紙と色味が綺麗な石くれに過ぎない。
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