紫電の射手 勇者パーティで無能扱いされて追放しかし、雷に打たれて世界最強の魔法剣士に!

秋水

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第二章 紫電の剣

act.39 追い込み漁

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 銀狼達がこちらの言葉を理解するかは別として、なるべき奴らにこちら側の思惑が伝わらないよう、小声でイグナールが閃いた作戦内容をモニカとマキナに話す。この作戦の最重要人物はモニカだ。

 怪我をした状態の彼女に頼むのは酷ではあるが、モニカにしか出来ない。モニカだから……これが非常に重要になってくる。

「出来そうかモニカ?」
「出来るもなにも……やらなきゃならないなら、やるまでよ!」

 モニカはマキナに借りた肩から離れ、1人で立ち上がる。その際、傷を刺激したのか苦悶の表情を浮かべるが、すぐさまいつものモニカに戻る。16歳ながらも自分が今まで修めた魔法に自信を持ち、目の前の困難にくじけることのない強いモーニカ・フォン・ハイデンライヒに。

「よし、頼む!」
「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」

 イグナールの声に応え、モニカは水弾を生成する。先程まで展開されていた、小回りの利く拳大や、人の頭程のサイズではない。5つの巨大な水弾が現れた。そのサイズは人が1人すっぽりと入れる程だ。それはモニカを取り囲むように配置される。彼女を中心に四方を取り囲み、最後の水弾は彼女の頭の上に浮かび上がる。

 モニカ1人を守るかのように築かれた水牢。

「よしマキナ。作戦はさっき話した通りだ。いくぞ!」

 水弾の配置が完了するのを見てイグナールとマキナは行動を起こす。それぞれ逆方向に四方を囲む銀狼へと向かっていく。持久戦に持ち込もうとじっとしていた銀狼達も、これでは対処せざるを得ない。

 だが、不用意に近づくことはない。イグナールの剣にしろ、マキナの膂力にしろ、捕まれば破壊のオーガごっこが開始された。しかし相手は疲れ知らずの作り物。マキナ同様、魔力と言う動力が必要であるのならば底があるのだろう。しかし、現状それを期待出来る程、悠長に構えていられない。

 イグナールは剣を構えながら1体に標的を絞り迫る。彼はマキナにもそうするように指示を出している。そして後ろの警戒も怠らない。一方に釘付けになったいてる間、もう一方に後ろから襲われるなんてヘマは全てが台無しになってしまうからだ。

「ほら、俺の剣が恐いだろう?」

 紫の雷光で彩られた剣を振り回し銀狼に迫る。やつは距離を取り、こちらに襲い来る気配はない。背後に気を配りながら、じりじりと奴らとの立ち位置を変える。イグナール達を取り囲む形を崩し、奴らを内側に追い込んでいくのだ。

「どうだ、追い立てれる気分は」

 生き物の気配を持たない銀の狼に、追い立てられる動物の代弁者だと言わんばかりに笑みを浮かべるイグナール。

 銀狼達がマキナとイグナールに挟まれるように内側に追いやられる。その中心点には水弾の牢に守られたモニカ。奴らは彼女が負傷していることを知っている。彼女の水弾では致命傷にならないことを知っている。仮に巨大な水弾に破れようとも、必ず隙が出来ると推測しているだろう。

 銀狼達は中心にいるモニカに向かって走り出した。

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