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第三章 紫電の命運
act.44 制限
しおりを挟む「マキナ、本当にここが情報の保管場所なのか?」
モニカを下ろしながらマキナに尋ねる。
情報を得るための場所と聞いていたのですっかりどでかい書庫かと思っていた。しかし、この部屋にはそういった書物の影はない。物を置くスペースがほとんどない、変わった形の机だけが並べられているだけのように見える。
「はい、間違いありません。ただいまアーカイブを参照致します」
マキナは手近にあった歪な机に手を伸ばす。すると机の上に出っ張った箱のような部分が黒から白に変わり、文字が浮かび上がる。
「それは見たものを記録するアーティファクトなのか?」
記憶を魔力と共に宝石に閉じ込め、記録する類の魔法。それと似たような役割を果たすアーティファクトがあると聞いたことがある。
「いえ、これは記録を参照する道具でございます。用途としましては劣化しづらい書物とお考え頂ければと思います」
「なるほど」
こういったことに疎いイグナールは深い関心を持っていないようだが、モニカは周囲を注意深く観察しながらマキナの言葉に耳を傾けているようだ。
「お知りになりたいことは雷魔法についてでよかったでしょうか?」
「ああ、どんな些細なことでもいい。手掛かりになるのなら大歓迎だ」
彼女は机にある複数の突起をカタカタと音を立てながら押していく。呼応するように白の中に文字が浮かび上がっていく。
ビー!
突如、箱の中の白が赤に変わり警告を促すような音が響く。
「なんだ!」
イグナールとモニカは身構える。この音には聞き覚えがある。先程モニカが扉を破壊した時と似た音だ。2人は揃って部屋の扉に目を向ける。今にも何かが侵入してくるのではないかと睨み付け待機している。
「申し訳ございません」
「どうしたんだマキナ! 何か問題か⁉」
マキナの方に向き直りイグナールが尋ねる。しかし、扉付近の警戒は怠らない。腰に携えた剣の柄に手をかけた。
「どうやら私ではアクセス不可のようです」
「それはどういうことだ?」
「マキナにはそれを見る権利が無いってことじゃないの? ほら、貴重な魔法の資料とかって実績のある魔法使いにしか公開してなかったりするじゃない」
「モーニカ様の言う通りでございます。ご足労して頂き大変申し訳ないのですが、これは私のミスでございます。申し訳ございません」
感情のこもらない声で淡々と詫びの句を告げるマキナ。彼女のせいではないと言っても落胆の色を隠せないイグナールはうな垂れた。
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