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第三章 紫電の命運
act.45 新しい目標
しおりを挟む「まぁダメならダメでしょうがない。確かに少し残念ではあるが……知ったからといって急激に強くなれるわけでもないだろうしな……」
自分のせいだと言うマキナをフォローすると言うよりも、落胆する自分を慮(おもんばか)る言葉に近い。感情を理論で押し込めるやり方だ。実際問題、知識だけで強くなれるわけはないのだから。
「ねぇマキナ、貴方じゃなくて他の人じゃだめなの?」
「何言ってんだよモニカ。どれだけ時間が過ぎてるかわかんないけど、生きてる奴なんていなだいだろう?」
この真新しくも古い建物。ここを管理していた人たちがどうなったかはわからない――おそらく魔王に敗北した結果だろう――が当時を生きる人間はいないのは確かだ。その証拠に研究所に入っての出迎えは侵入者を手厚く歓迎する守護者(ガーディアン)だけである。
全ての施設を見て回ったわけではないが、生命の反応は見られない。今もこうして彼女達と話していても訪れる者がいないのがその証拠だろう。
「ギルドで持たされたライセンスってあるわよね?」
「ああ、そうだな」
「あれって幻覚を見せる魔法なんかに惑わされないようにと言うギルドの工夫なのよ」
「うん、それで?」
「うーんと、だから探してる資料を見れる身分の人から、身分証みたいなのを貰えたら閲覧出来るじゃないかしら?」
彼女の言っていることは理解できるが、とどのつまりその借りる相手がいなければ意味を成さない。イグナールがそれについて言及しようとするとマキナがこちらに歩み寄る。
「良い提案ですが、恐らく不可能です。この研究所は当時最新と謳われた設備。情報管理においても二重三重にプロテクトされております。重要機密であれば生体認証は避けて通れないかと」
マキナの話すことは聞き覚えのない言葉の連続で難しい。だが――
「要はその偉い人が生きてないと意味がないってことだろう?」
戦闘人形である彼女は無表情でコクリと頷いて返した。
「そっかぁ……遺品を拝借出来れば問題解決かと思ったけどダメかぁ」
貴族育ちの娘とは思えない発言である。モニカはその方法が通じるのであれば墓荒らしも辞さないと言っているのだ。
少しは彼女を嗜めようと口を開きかけるイグナールだが、これはモニカが自分を思って考えてくれてるのだと思い至ると言葉が出てこなくなった。その代わりこれからの方針について話そうと考える。
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