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第三章 紫電の命運
act.48 黒色の槍
しおりを挟む「それじゃ、マキナ。ここ以外に探索するべきところはあるか?」
情報の詰められたこの部屋からはこれ以上得られそうなものはないと判断し、他の部屋の探索を考える。しかし――
「はい、武器庫の方に、私共オートマトンに用意された武器がありますのでそれを確認したく思います」
マキナ達の武器……先の戦闘で彼女はその身1つで戦っていた。人の域を軽々と超えた彼女の膂力は凄まじいものだった。そんなマキナが武器を有して戦うなどオークに金棒である。
「よし、確認してみよう」
それに、これだけの技術を持った人々が魔王討伐のために作った武器だ。どれ程の物か単純な興味がある。イグナールは少しばかり心を弾ませながらマキナの後を付いていく。
◇◇◇
「これは……」
武器庫と言われるだけあって古今東西様々でイグナールの知らぬ武器が整然と立ち並ぶ。のを予想――妄想していたのだが、奥にたった1本の槍が存在するばかりだ。2人に気取られないよう小さな溜息をもらすイグナ―ル。
なんだかここに来てから落胆しかしていないな……俺。
雷魔法の情報に関してはいいが、今回の武器庫に対しては勝手に期待を膨らませた自分が悪い。だが、わかってほしい! 男たるもの武器に心躍らないはずがないだろう⁉ なんてモニカにそんなことを語っても共感を得られるわけはないし、マキナに至っては「わかりかねます」の一言だろう。
イグナールはその気持ち一切を自分の心の中に留め、表情に出ないように努めた。
マキナは奥にある1本の槍の前まで進み出て、制止する。
「識別名マキナ確認致しました。ロック解除」
どこからともなく、第三者――女性――の声が武器庫内に響き渡り、ガチャリと音が鳴る。間もなく、その槍をマキナが手に取る。そして、感触を確かめるかのように軽々と振り回して見せるマキナ。
「お待たせ致しました」
槍を手に、戻ったマキナが深々と頭を下げる。
「マキナ、もしよかったらその槍を見せてくれないか?」
「はい、問題ございません」
彼女から片手で受け取るが、槍はずしりと重くすかさずもう片方の手を添える。黒く闇を思わせる程のまさに異色。そしてこの槍は規格外に重い。どれだけの怪力自慢でもこの槍を自由自在に振るえるのはあれだけの膂力を有す彼女だけだろう。
一見では真っ黒で何の変哲もない槍に見えたが、なんという質量であろうか。両手で必死に支えながら細部を見ていくが、穂先から石突までが同一の金属で出来ているように見える。
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