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乗り間違い
1.
しおりを挟む「あんの上司め、いつか絶対パワハラで訴えてやるからな…」
おどろおどろしい声が漏れ出た。
我が声ながら地獄の底から響く地響きの如しだ。ははあ私ってこんな低い声が出せたんだな。
幸いにして、ひとでごった返す駅のホームにおいては、草臥れた私のひとりごとは誰に聞かれることはない。
時刻は夜10時を過ぎた。
私のように仕事帰りの同志たちが並ぶ列に加わり、おもむろにデカイ通勤鞄を漁る。目当てのスマホを取り出し、画面をぽちぽちと叩いた。
---ねむい、眠すぎる。あくびが止まらん
裏垢でもあるまいし、仕事の愚痴を具体的に呟くのはなんだか気が引ける。しかし呟かずにはいられないので、結局呟く内容はこんな語彙力の欠如した文字の羅列になる。
しかしながら心優しい我がフォロワーの面々は、今にも力尽きようとせん社畜の心の声を拾いあげて、反応を返してくれるのだ。なんと有難い。
---わかる。
---わかりみしかない。
---私も今朝電車の中で立ちながら寝てた
---それストレスじゃないですか?
ストレス。
それだな。間違いなく。元凶はわかっている。探偵も警察も必要ない。会社だ会社。やっぱ燃やすしかないな。うん。
満場一致で賛成の拍手が脳内に響き渡るなか、車内整理が終わり、電車の扉が開く。
スマホに夢中になりすぎて、ついこの間も乗る電車を間違い知らない駅のホームで膝から崩れ落ちたばっかのくせに、学習することのない私はこの時も電車の行先を確認することなく乗り込んでいた。
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