限界社畜さんは怪異となかよし

くもいの館 中編

7.

至るところに取り付けられている洋燈に蝋燭の火を灯す。
電球ではなく昔ながらの火を使うランプでよかった。

しかし、目についたランプに灯りを灯し続けることしばらくして、私は異変に気付くことになった。

「うぉーい、全然明るくなんないんだけど…」

LEDの圧倒的な光量に慣れてしまったからか？　確かに灯りは灯る。が、辺りをぼうっと照らすだけで、付けても付けても明るくならない。
まるで点けたそばから闇が灯りを呑み込んでしまっているかのような…。

もはや躍起になって片っ端からランプに灯りをつけて暫く経った頃だろうか。

ミシ…と床が軋む音がして、私はびくりと肩を戦慄かせその場で棒立ちになった。

家鳴り？

そんな一縷の希望を木っ端微塵にするように、固唾を呑む私の耳に、ミシ、ギシ、明らかに意思を持ったナニかが動いて床が軋む音が続く。

違う。ナニかがいる。

近くではない。だがそう離れてもいない。
心臓が竦み上がる。得たいの知れないナニかが側にいると思うと、硬直したように身体が動かない。

何気なく辺りを見渡してはっとする。
灯りに照らされた私の影が壁に映し出されている。
やばい…！  恐怖で固まっている場合じゃない。慌てながら、しかし音を立てないよう細心の注意を払いながら身を屈めて灯りの届かない廊下の角へしゃがみ込む。

暗がりにじっと息を潜めている私の前にそれが現れたのは直ぐだったと思う。