限界社畜さんは怪異となかよし

あさの

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くもいの館 後編

1.

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やるべき事は定まった。

屋敷内に無数にある洋燈に灯りをつけてまわり、意識内でみた灯りを探し出す。

上手くくもいさんの失くしたものを見付け出せたなら、それで脱出の交渉手段とするわけだ。つまり大人の取引をするわけだな。
取引…。
え、取引?
取引ってどうすればいいんだ!?
そんな話術ないんだけど。

内心で焦りまくっている私の前で、朗らかにひつじさんが言う言葉に顔をあげた。

「安心してください。どうなってもあなただけは必ず無事に帰します」

「え?」小さく呟いた私を安心させるかのように振り返ったひつじさんが微笑む。

「そのためにわたしはいるのですから」

…先程からひつじさんの言動から薄々とは感じていたのだが。
かえる、というその中に、ひつじさん自身は含まれているのだろうか。

「一応聞くんですけど…、どうして私がひつじさんを探していたかわかってますよね…?」

ひつじさんは何を聞かれたかわからないという表情を浮かべ、すぐに険しい顔付きになる。

「…まさか、何処かお怪我を?」

何なら今すぐにでも怪我の有無を検分しそうなひつじさんを慌てて制し「違います」と頭を振る。話が噛み合わない焦りを感じながら言い募った。

「私がひつじさんを探していたのは、ひつじさんを助けるためです」

「………わたしを?」

「そうです。ひつじさんを囮にして私だけ逃げられるわけないじゃないですか」

ひつじさんが口許を押さえる。

「なんてことを…」
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