高校教師◆近所のガキんちょがJKになったら高校教師の俺が担当するクラスの生徒になった◆

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

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08_保健室の刺客

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「富成先生?今日、お暇ですか?」

「え、あ、まぁ…」

「では、さっきの件についてお話を伺いたいので……」

「は、はい……」

「飲みに連れて行ってください」

「はいぃぃ!?」


なんか色々とまずいことになっていた。




話の始まりは、保健室に風邪薬をもらいに行ったことだった。


「大丈夫ですか?富成先生」

「あ、はい。ちょっとしんどいだけなので、早めに薬飲んでおこうと思っただけで」


彼女は、保険医の胡桃沢先生。
生徒にも先生方に人気の美人先生だ。

俺は単に、家には風邪薬がなかったので、学校でもらえればお得と考えただのけど。


「では、これ。学校ってあまりちゃんとした薬を置けないので、普通の風邪薬ですけど」

「十分です。ありがとうございます」


ウォーターサーバーから水をもらうと、風邪薬を飲んだ。


「あ、富成先生?少しだけお話良いですか?」


まあ、授業もないし、次の授業の準備も終わってる。
お茶を飲む程度ならば問題ないだろう。


「はい、どうかしましたか?」

「先生は、十連地紗弓さんをご存じですか?」


この名前を聞いた瞬間、腰の辺りから頭まで一気に血が沸き上がった。
なぜ、保険医が紗弓の名前を出すのか?

頭はくらりとして、軽いめまいがした。
鼻は殴られたような衝撃で、この先の話のヤバさを一瞬で理解した。


「もちろん、知ってますよ?彼女のクラスの担任ですから」

「あぁ、そうでしたね。では、個人的なお付き合いはありますか?」

「え?どういうことですか?」


ちゃんと誤魔化せているだろうか。
なんですか、その質問、まるで意味が分かりませんという具合に誤魔化せているだろうか。

マンガだったら汗の描写で言っていることが嘘だとすぐに分かる。
ただ、現実ではそんな急に汗はでない。

それよりも表情から読み取れる情報の方が多い。
俺は出来るだけいつも通り、笑顔を絶やさない。


「保健室って色々な情報が集まるんです」

「へぇ」

「十連地さんと箱崎さん、学内でもかなりの人気みたいで、色々と噂を耳にしますよ?」

「はあ……」

「十連地さんは、学内にお付き合いしている方がいるのだとか」

「へぇ、そうなんですか」


受け持ちの生徒の名前を知っていても、誰と付き合っているかまでは知らないのが普通だろう。
適当な相槌で、なんとなく流す。


「先生は、ピンキーリングをご存じですか?」

「小指用の指輪ですよね?」

「よくご存じですね。本来、幸運を招く指輪というイメージなのですが、この学校ではカップルがペアのピンキーリングをつけるみたいですね」

「そ、そう言えば、そうですね……」


しまった。
そうなのか?
知らんけど。


「普通は、シルバー製の比較的安いリングをしている子が多い中、十連地さんはプラチナのリングをしているのだそうです」

「へぇ。彼氏は頑張ったんですかねぇ」

「…なぜ、十連地さんのピンキーリングが彼氏からだと思われたんですか?」

「え?この学校では、彼氏からもらうものなのでしょう?」

「十連地さんは自分で買ったかもしれないじゃないですか」

「ああ、そうですね。てっきり……」


なんか腹の探り合い見たいな会話、落ち着かない。
早く職員室に逃げ帰りたい。


「私、十連地さんの指輪と同じデザインをどこかで見たと思っていたんです」


ぎくりと俺の中で音が聞こえた。


「ただ、誰の指だったか……」


そのまま思い出さないでくれ……


「ハッと気づいたんです。指じゃなかったな、と」


俺の中で警戒音が鳴り響き続けている。
そして、この次に出てきた言葉が、『富成先生?今日、お暇ですか?飲みに連れて行ってください』だったのだ。


そりゃあ行くよ。
行くしかないのだから。
風邪薬を飲もうと思った程度には調子悪かったけど、一瞬で治ったわ!





■□■■□■
そして来たのが、居酒屋。
カウンターで横並び、落ち着かない……

胡桃沢先生は俺の左側に座ったけど、右側は壁だから追い詰められた感がある。
真実を話しやすくなるのが右だったか、左だったか、心理学的にも押さえてあったら怖いな。
とにかく、逃げることは出来なさそうだ……

あと、肩とか肘とかが当たってるんだよなぁ。
カウンターだからしょうがないけど、めちゃくちゃ気になるんだよ。

そのうち、ビールが運ばれてきた。
胡桃沢先生はハイボールらしい。


「かんぱーい!」

「かんぱい……」

「嫌だなぁ、先生。そんなに警戒しないでくださいよぉ」

「警戒だなんて……ははは……」


胡桃沢先生は、Vネックの胸元が開いた服を着ていた。
普段の白衣とは違って、私服は新鮮に映った。

しかも、大きな胸とミニスカート。
大人の色気むんむんだ。
紗弓とは全く違う感じ。


「それで、話って……」

「まあ、まずは飲んでくださいよぉ」



ビールの後は、日本酒がコップに注がれる。
日本酒とは、お猪口で飲むものでは!?

それにしても、胡桃沢先生飲むなぁ。
そして、俺を酔わせて口を軽くする作戦とか!?


「先生、箱崎さんからも告白されたそうじゃないですか」

「はぁ……」

「どんなお気持ちなんですか?生徒からそんなに好かれるって……」

「いや、あいつは俺が好きというか……」


箱崎が好きなのは、紗弓だ。
友達になりたいって言ってたしな。


「先生のあのキーホルダー……私は良いと思いますよぉ?」


ついに核心に触れてきたな。


「キーホルダーですか?」


一応とぼけてみせた。


「先生、カギ出してみてください」


ポケットからカギを取り出し、テーブルの上に置く。

「このカギに……あら?」


家のカギと、自転車のカギ、自動車のカギ、カラビナ、あと輪っか。

『二重カン』『二重リング』『キーリング』正しい名前は分からないけど、カギとカラビナをつなぐあの輪っか。

俺は事前にあの輪っかを1つ多めに付けておいた。
今までは紗弓と一緒に買ったピンキーリングを付けていたのだけれど、そのままにしておくほどバカじゃない。

ピンキーリングを外して、あの輪っかに変えておいた。
胡桃沢先生は、カギを手に取って、よく調べていた。


「カギがどうかしましたか?」

「いえ……」


『決定的証拠』を隠滅されたのだ。
その後、追及は尻すぼみだった。

所詮、高校の保険医、探偵ではないのでそんな本気で何とかしなくても、何とかなるものだ。
よかった、事前にピンキーリングを隠しておけて。


「あ、スマホの写真!見せてください!富成先生ってどんな写真撮るんですか?」


紗弓とのラブラブ写真を期待しているのか!?
俺は普段から紗弓の写真は撮らないから、二人の写真など1枚もない。

GoogleMAPのレビューに写真を投稿するくらいなので、行った場所の店の写真とかがほとんど。
たまに料理の写真も撮る。
ちなみに、紗弓の料理の写真は撮ろうと思ったら、めちゃくちゃ嫌がるので撮っていない。


「わー!いろんなところに行かれてるんですねー」


見て喜んでいるっぽいけど、明らかに肩透かしだったリアクション。
そのうち、ちょっと様子が変わってきた。


「先生は、独身ですよね?」

「はい、そうですね」

「お付き合いしている方は……?」


ここで紗弓のことを変に探られるのも……


「いや~、なかなか出会いがなくて……」

「そう!そうなんです!」


なんか、めちゃくちゃ食いついた。


「学校って狭い空間ですよね!?」

「あ、はい(汗)」

「先生は、私のことどう思いますか!?」

「どうって?どういうことですか?」

「もう、30歳も超えてしまったし、そろそろ結婚しないといけないんです!」

「はあ、そうですか……」

「生徒は子供だし、先生たちは年頃の方も多いんですけど、あんまり踏み込んできてくれないので、寂しいんです……」


ずいっと詰め寄られて、プレッシャーを感じる。


「胡桃沢先生なら美人だし、いい人がたくさんいるでしょう……」

「その『いい人』ってどこにいるんですか!?」


食い気味に返された。
そして、益々詰め寄られてる。
これは、あれだ!
胡桃沢先生は酔っぱらっている!

そういえば、飲み始めてそろそろ2時間。
ペースは落ちても、ずっとお酒が切れてない。
お互いかなりの量を飲んでいるのでは!?

胡桃沢先生を改めてみると、耳まで真っ赤になっている。
目はとろんとしていて、俺の腕によりかかることも多い。

これはダメなパターンでは!?

対して、俺はずっと疑惑を回避することに集中していて、あまり酔っていない。

この胡桃沢先生のぐでんぐでんぶりを見てしまったら、『お持ち帰り』できてしまいそう!
『お持ち帰り』しないにしても、家に帰す術がない。
胡桃沢先生の家なんて知らないし、タクシーに乗せるだけでは帰り着かないだろう。

それは人としてどうなのか。
しかも、相手は女性。
無責任だろう。

もしかしたら、これはハマっているのでは!?
既に退路がない。

店の前でわかれる→ 酔っ払い胡桃沢先生は放置できない
家まで送っていく→ 家の中まで入らざるを得ない可能性が高い
うちに連れていく→ 泊めることになる


はい、終わりー。
送っていくか、うちに泊めるか、くらいの2択だ。
ホテルとか……いよいよダメだ。


店の会計を済ませて、胡桃沢先生を引っ張って店を出た。
胡桃沢先生は、すでに一人では立てないほど酔っている。
俺が腕を支えてやっと立っている状態だ。
とりあえず、タクシーを……


「おっと」


バランスを崩して、抱きしめるような形になってしまった。
すると、胡桃沢先生の口が俺の耳に近づいて、俺にだけ聞こえるくらいの声で言った。


「すいません、うちまで送っていただけますか?」


その言い方は、『さーせん、酔っぱらったから送ってちょ!』というものとは明らかに違う。
これは、誘われている!

胡桃沢先生、美人だし、胸が大きいし、エロいし、お互い酔ってるし、美人だし……
美人を2回言ってしまったような気がするが、俺も酔っているみたいだ。
考えがうまくまとまらなくて、頭がクラクラしている時だった。


「晃大さん、大丈夫ですか?ずいぶん飲んでますね」


そこに、えらいべっぴんさんが立っていた。
そして、名前を呼ばれた?
あれ?百合子さん?

百合子さんは、紗弓のお母さん。
なぜ百合子さんが……?

いや、服は百合子さんのだけど、違う!
化粧しているうえに声色を使っていて、およそ高校生とは思えないような大人びた服を着ている彼女は、紗弓だった。

いつもの部屋でごろごろしている生き物はここにはおらず、大人の女性がいた。


「うちの富成がいつもお世話になっています」


そういうと、紗弓(変装)は胡桃沢先生を助けるように起こした。
ここで一番反応したのは、胡桃沢先生だった。


「はっ、はひっ!いえ、こちらこそ、いつもお世話になっています!」


さっきまで、グデングデンだった胡桃沢先生はピシッとした。
紗弓を俺のパートナー的な何かだと勘違いしたみたいだ。
まあ、パートナー的な何かなのだが……


要は、不倫的な修羅場を想像したのか、危機感からピシリとしたようだ。
酔いと、焦りで紗弓だと気づいていないようだ。
元々、直接かかわりがある訳じゃないから、気付くことはなかったのかもしれないけど。


「先生も随分飲まれているようですから、タクシーでご自宅までお送りしましょうか?」

「いっ、いえっ!これくらい日常茶飯事なので大丈夫です!失礼します!」


敬礼でもしそうな勢いで直立した胡桃沢先生が、回れ右して逃げるように去って行った。


「……」

「……」


なんとなく視線だけ交わす俺と紗弓。
紗弓が腕を組んできた。


「先生、浮気ですか?」

「バカ、割と危機だったんだぞ?」

「貞操の?」

「違うわっ!」

「それより、どうですか?大人バージョン」


紗弓が少し離れて、くるりと1周回った。
これまで子供子供と思っていたが、大人びた服を着たらそれなりに見える。

なんか、普段仕事で着物を着ている人が、休みの日に洋服を着たみたいな……
姿勢がいいのでピシッとして見える感じ。
それでも、そのまま褒めると天空まで図に乗るわけで……


「まだまだだな。胡桃沢先生くらい色気がないとなな」

「先生、胸を見て言ってますね。胸は発展途上なのです。開発が必要です」

「整地されてフラットにならないか?」

「先生、とても失礼です」


『つーん』と向こうを向いてしまった。
どうしてここにいるんだろう?
なぜ、変装しているのだろう?

色々疑問もあるし、ツッコミどころもあるが、とにかく助けに来てくれたのだろう。


「ありがとな」


頭を撫でてやる。


「せっかくセットしたのにグシャグシャになる!きー!」


それにしても飲み過ぎた。
紗弓がきれいに見える……


「先生、酔ってるんですか?」

「相当酔ってるらしい」

「じゃあ、私が腕を組んで帰ってあげます」

「よろしくお願いします」



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