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一章:話の始まりはこうだった
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扉を開けて入ってきたのは、40歳手前くらいに見える女性だった。
同性というだけで、どこか安堵してしまう。
髪の毛は薄い茶色で、目が濃い青。鼻が高くて彫りが深いその顔は、どうみても日本人じゃない。
「〇▽*#〇、△%?」
まずいな。言葉が全く分からない。
英語ならそこそこは聞き取れるはずなんだけど、発音からして全く違う気がする。
「Ah、I don’t see what you say」
(何を言っているのか分かりません)
ダメ元で口にした言葉は、小首を傾げるという万国共有のジェスチャーであっさり返された。
英語が世界の共通語って嘘だったんだな。
「〇▽*#〇△%」
彼女は、また何かを言ってこちらへ近づいてきた。
その表情は優しく穏やかで、敵意は感じられない。
手には丸いお盆を持っていた。状況から判断するに、どうやら食べ物を持ってきてくれたようだ。
香ばしい匂いが鼻腔を掠める。
これは、お肉を焼いた時の匂いだ。
食費を切り詰めて自炊している私にとって、お肉は月に一度食べられるかどうかな贅沢品だった。
一か月の食費は一万円。その三分の一がお米代に消えてしまうので、とてもじゃないけど手が出せない。
ゴクリ、と喉がなってしまう。
よほど餓えた顔をしていたのだろうか、マダムは「ふふっ」と声を上げて笑った。笑い方も優しかった。
私のすぐ脇に、そっとお盆を置いてくれる。
木皿の上に乗っていたのは、鶏肉のようなものをちぎって炙ったらしい焼き料理と薄く引き伸ばされたナンのようなものだった。
――鶏肉……あの巨大鳥じゃないよね、これ。
食べられるかと思ったけど、こっちが食べる側だったのかな。
弱肉強食、という四文字が頭の中を過ぎる。
本当に食べちゃってもいいのかな?
すぐには手を出せず、目の前のお皿とマダムを見比べてると、彼女は手ぶりでぐいぐい勧めてきた。
さっきから胃は獰猛な音を立て、空腹を訴えてきている。
もう毒が入っていてもいいや、と捨て鉢な気持ちになった。
どうせ生きて帰っても、待ってる人なんかいない。
「ありがとう。メルシー。グラシアス。グラーツィエ」
英語以外の知ってる言葉で感謝の意を伝えてみる。
マダムは顔を曇らせ、首を振った。
お盆を膝に乗せ、両手を合わせて「いただきます」と呟く。
思い切ってかぶりついてみると、塩だけで味付けされたそのお肉は、とてもジューシーで美味しかった。
柔らかくて、でも皮の部分はパリパリしていて香ばしい。肉の旨味が口中に広がっていく。
続けてナンらしきものを口に運ぶ。
これはうっすら甘くて、もっちりしていた。薄味なところが素材の美味しさを引き出している。
空腹が満たされ気が緩んだのか、勝手に涙が滲んできた。
それまで黙って傍に立っていたマダムは、私の目尻から涙が数粒こぼれるのを見るやいなや、途端に慌て始めた。
自分の口元を指差し、両手を振る。
このジェスチャーは「美味しくなかった?」だろうか。
見ず知らずの私を助けてくれただけでなく、出した食事の味の好みまで心配してくれるってこと?
こんな良い人に拾って貰えてよかった、という気持ちと、いやまだ油断は出来ない。何か裏があるのかもしれない、という疑念がせめぎ合う。
どちらにしろ、食事を振舞ってくれたという事実に変わりはない。
私は木彫りのフォークを置いて、両手を合わせた。
そのまま拝んで頭を深く下げる。
「ありがとう」の思いは無事伝わったらしく、彼女はニコリと笑って胸をなで下ろす仕草をした。
言葉が通じなくても、表情と仕草である程度のことは分かるんだな。
ジェスチャーってすごく便利だ。
感慨に耽りながら、食事の続きに戻る。
ゆっくりどうぞ、というようにマダムは手の平でお盆を指し、軽く会釈して踵を返した。
その時初めて、私は彼女の背中を見た。
大きく目を見開き、彼女の肩甲骨辺りから生えている物体を凝視する。
それは、どこからどう見ても『大きな翼』にしか見えない。
背中の中央に寄せて折りたたまれた両翼は薄茶色で、天使の羽という感じはしない。
どちらかというと、鷲や鷹の翼に似ている。
この形と色艶……ついさっきどこかで目にしなかったっけ?
唖然としたまま固まった私を振り返ると、マダムは「ああ、コレ?」と言わんばかりに眉をあげ、背中の羽を軽く動かして見せた。
――動いた。……動いた!?
もしかしたら羽飾りを背負っているのかもしれない、という淡い希望が一気に消える。
彼女の羽は、自前だった。
自前って意味分かりますか。
私に腕が生えているように、あなたの背中には羽が生えているって意味ですよ!?
嘘だ、誰か嘘だと言って!
完全にパニックに陥った脳は思考を放棄し、ぷつりと外界を遮断した。
◇◇◇
「――ねえ、大丈夫? 私の声、聞こえてる?」
突然大きな手にペチペチと頬を叩かれる。
私の意識を覚醒させたのは、頬への刺激ではなく聴覚だった。
今の……今の、日本語じゃなかった!?
腹筋に力を込めて上体を起こした瞬間、激しい眩暈に襲われた。視界がぐるぐると回る。
このままだと吐きそうだ。
口を両手で押さえ、再びベッドに横たわる。
目前に映ったのは、男性用のズボンと簡素ななめし皮で作られたサンダルから覗く足だった。
「大丈夫? 気分が悪い?」
馴染みのある発音に、全身の力が抜けていく。
私は安堵しながら、小さく頷いた。
「大丈夫です、聞こえてます」
「そっか。成功したんだね、良かった」
優しく穏やかな声が上から降ってくる。
……ん? 成功?
途中混じった不穏な言葉に、引っかかる。
成功って、なにが?
「魔法の反動でしばらく辛いと思うから、そのまま横になってて。ベネッサに頼んで、口に出来そうなものを持ってきてもらうね。果物とかジュースなら大丈夫かな?」
――……ああ、また夢を見てるのか。
ぬか喜びさせられた気分になり、がっくり落ち込む。
「だめだよ、寝る前に何か口にしないと」
目を閉じた私に、彼は焦ったようだった。
再び頬を軽く叩かれる。
その手を振り払い、枕に顔を埋めようとしたのだが、今度は肩を掴まれ揺さぶられた。
なんという酷い夢だろう。
目眩がひどく、瞼が開かない。
私は半目状態で、ズボンに向かって抗議した。
「やめて、ゆすらないで」
「だって、寝ようとするから」
「寝てもいいでしょう、これは夢なんだから」
よく回らない舌を動かし、主張する。
ズボンの持ち主は、大きくため息をついた。
それから、縋るような声で訴えかけてくる。
「頼むよ。君がダメになったと知ったら、ベネッサ達がどんなにがっかりするか」
「ベネッサ……?」
「君にご飯を届けに来た女性だよ。覚えてる?」
途端、脳裏に背中から生えた翼が浮かんでくる。
「……羽の生えた人間に、魔法使い、か……すごい世界だね」
「そうかな? 私達にはこれが普通だから、よく分からない」
まあ、そうだろうな。
それにしても、長い夢だ。
明晰夢というのだろうか、全てがくっきりしていて、やけに現実味を帯びている。
「私が子供の頃、近所に落ちてきた『ただびと』は、結局ダメだったんだ。錯乱が酷かったし、ミトンさんは優し過ぎて、彼女をこの世界に繋ぎ止められなかった」
突然始まった昔語りに、眉根が寄る。
しかも初めて聞く単語ばかりで、訳が分からない。
「ただびとって、何……? ミトンさんって誰よ?」
「ただびとは、女神の祝福だよ。異世界から招かれた大切な客人だ。ミトンさんというのは、『ただびと』を拾った青年の名前。彼も可哀そうだったな……」
ズボンの人がしみじみと零す。
その痛ましげな声色に、ますます混乱は深まった。
「でも君は珍しいね。『ただびと』は大抵、東の島に落ちるのに。西の島にただびとが落ちてくるなんて、私が知る限りでは初めてだよ。みんな最初は『サリムの民』が間違ってここまで迷い込んできたのかと勘違いしたんだって。それだと、協定違反でしょ? だからつい威嚇しちゃったらしいんだよね。みんなも酷く驚いてたよ。君を怯えさせたこと、すごく悔やんでる。どうか許してあげて欲しいな」
誤解で嫌われるのはとても辛いものだし、出来ることなら許すと言いたい。
でも私は日本人だし、『サリムの民』とやらでは決してない。
……っていうか、早く覚めてよ。
この人の話してること、全然意味分からないよ。
早く現実に戻りたい。
巨大鳥も、背中から羽を生やした人も、魔法使いもいない、ただの日本に帰りたい。
「私の言う事、理解できる? 大丈夫?」
「理解なんて出来るわけないでしょ」
苛立ちがそのまま口調に表れる。キツい言い方に自分でもヒヤリとしたが、取り繕う気力はなかった。
とにかく疲れ過ぎて、何も考えたくない。
「あなたは、私の脳が勝手に作り出してるキャラなんでしょう? 分かったから、もう消えてよ」
「――……ああ、この子もダメなのか。いつまで持つかな、可哀想に」
彼は非常に残念そうな声でそういうと、静かに立ち去っていった。
遠ざかっていくズボンをぼんやりと眺め、すごい捨て台詞だったな、と思う。
腹が立たないわけではなかったが、私はようやく静かになったことに満足し、ゆっくり目を閉じた。
同性というだけで、どこか安堵してしまう。
髪の毛は薄い茶色で、目が濃い青。鼻が高くて彫りが深いその顔は、どうみても日本人じゃない。
「〇▽*#〇、△%?」
まずいな。言葉が全く分からない。
英語ならそこそこは聞き取れるはずなんだけど、発音からして全く違う気がする。
「Ah、I don’t see what you say」
(何を言っているのか分かりません)
ダメ元で口にした言葉は、小首を傾げるという万国共有のジェスチャーであっさり返された。
英語が世界の共通語って嘘だったんだな。
「〇▽*#〇△%」
彼女は、また何かを言ってこちらへ近づいてきた。
その表情は優しく穏やかで、敵意は感じられない。
手には丸いお盆を持っていた。状況から判断するに、どうやら食べ物を持ってきてくれたようだ。
香ばしい匂いが鼻腔を掠める。
これは、お肉を焼いた時の匂いだ。
食費を切り詰めて自炊している私にとって、お肉は月に一度食べられるかどうかな贅沢品だった。
一か月の食費は一万円。その三分の一がお米代に消えてしまうので、とてもじゃないけど手が出せない。
ゴクリ、と喉がなってしまう。
よほど餓えた顔をしていたのだろうか、マダムは「ふふっ」と声を上げて笑った。笑い方も優しかった。
私のすぐ脇に、そっとお盆を置いてくれる。
木皿の上に乗っていたのは、鶏肉のようなものをちぎって炙ったらしい焼き料理と薄く引き伸ばされたナンのようなものだった。
――鶏肉……あの巨大鳥じゃないよね、これ。
食べられるかと思ったけど、こっちが食べる側だったのかな。
弱肉強食、という四文字が頭の中を過ぎる。
本当に食べちゃってもいいのかな?
すぐには手を出せず、目の前のお皿とマダムを見比べてると、彼女は手ぶりでぐいぐい勧めてきた。
さっきから胃は獰猛な音を立て、空腹を訴えてきている。
もう毒が入っていてもいいや、と捨て鉢な気持ちになった。
どうせ生きて帰っても、待ってる人なんかいない。
「ありがとう。メルシー。グラシアス。グラーツィエ」
英語以外の知ってる言葉で感謝の意を伝えてみる。
マダムは顔を曇らせ、首を振った。
お盆を膝に乗せ、両手を合わせて「いただきます」と呟く。
思い切ってかぶりついてみると、塩だけで味付けされたそのお肉は、とてもジューシーで美味しかった。
柔らかくて、でも皮の部分はパリパリしていて香ばしい。肉の旨味が口中に広がっていく。
続けてナンらしきものを口に運ぶ。
これはうっすら甘くて、もっちりしていた。薄味なところが素材の美味しさを引き出している。
空腹が満たされ気が緩んだのか、勝手に涙が滲んできた。
それまで黙って傍に立っていたマダムは、私の目尻から涙が数粒こぼれるのを見るやいなや、途端に慌て始めた。
自分の口元を指差し、両手を振る。
このジェスチャーは「美味しくなかった?」だろうか。
見ず知らずの私を助けてくれただけでなく、出した食事の味の好みまで心配してくれるってこと?
こんな良い人に拾って貰えてよかった、という気持ちと、いやまだ油断は出来ない。何か裏があるのかもしれない、という疑念がせめぎ合う。
どちらにしろ、食事を振舞ってくれたという事実に変わりはない。
私は木彫りのフォークを置いて、両手を合わせた。
そのまま拝んで頭を深く下げる。
「ありがとう」の思いは無事伝わったらしく、彼女はニコリと笑って胸をなで下ろす仕草をした。
言葉が通じなくても、表情と仕草である程度のことは分かるんだな。
ジェスチャーってすごく便利だ。
感慨に耽りながら、食事の続きに戻る。
ゆっくりどうぞ、というようにマダムは手の平でお盆を指し、軽く会釈して踵を返した。
その時初めて、私は彼女の背中を見た。
大きく目を見開き、彼女の肩甲骨辺りから生えている物体を凝視する。
それは、どこからどう見ても『大きな翼』にしか見えない。
背中の中央に寄せて折りたたまれた両翼は薄茶色で、天使の羽という感じはしない。
どちらかというと、鷲や鷹の翼に似ている。
この形と色艶……ついさっきどこかで目にしなかったっけ?
唖然としたまま固まった私を振り返ると、マダムは「ああ、コレ?」と言わんばかりに眉をあげ、背中の羽を軽く動かして見せた。
――動いた。……動いた!?
もしかしたら羽飾りを背負っているのかもしれない、という淡い希望が一気に消える。
彼女の羽は、自前だった。
自前って意味分かりますか。
私に腕が生えているように、あなたの背中には羽が生えているって意味ですよ!?
嘘だ、誰か嘘だと言って!
完全にパニックに陥った脳は思考を放棄し、ぷつりと外界を遮断した。
◇◇◇
「――ねえ、大丈夫? 私の声、聞こえてる?」
突然大きな手にペチペチと頬を叩かれる。
私の意識を覚醒させたのは、頬への刺激ではなく聴覚だった。
今の……今の、日本語じゃなかった!?
腹筋に力を込めて上体を起こした瞬間、激しい眩暈に襲われた。視界がぐるぐると回る。
このままだと吐きそうだ。
口を両手で押さえ、再びベッドに横たわる。
目前に映ったのは、男性用のズボンと簡素ななめし皮で作られたサンダルから覗く足だった。
「大丈夫? 気分が悪い?」
馴染みのある発音に、全身の力が抜けていく。
私は安堵しながら、小さく頷いた。
「大丈夫です、聞こえてます」
「そっか。成功したんだね、良かった」
優しく穏やかな声が上から降ってくる。
……ん? 成功?
途中混じった不穏な言葉に、引っかかる。
成功って、なにが?
「魔法の反動でしばらく辛いと思うから、そのまま横になってて。ベネッサに頼んで、口に出来そうなものを持ってきてもらうね。果物とかジュースなら大丈夫かな?」
――……ああ、また夢を見てるのか。
ぬか喜びさせられた気分になり、がっくり落ち込む。
「だめだよ、寝る前に何か口にしないと」
目を閉じた私に、彼は焦ったようだった。
再び頬を軽く叩かれる。
その手を振り払い、枕に顔を埋めようとしたのだが、今度は肩を掴まれ揺さぶられた。
なんという酷い夢だろう。
目眩がひどく、瞼が開かない。
私は半目状態で、ズボンに向かって抗議した。
「やめて、ゆすらないで」
「だって、寝ようとするから」
「寝てもいいでしょう、これは夢なんだから」
よく回らない舌を動かし、主張する。
ズボンの持ち主は、大きくため息をついた。
それから、縋るような声で訴えかけてくる。
「頼むよ。君がダメになったと知ったら、ベネッサ達がどんなにがっかりするか」
「ベネッサ……?」
「君にご飯を届けに来た女性だよ。覚えてる?」
途端、脳裏に背中から生えた翼が浮かんでくる。
「……羽の生えた人間に、魔法使い、か……すごい世界だね」
「そうかな? 私達にはこれが普通だから、よく分からない」
まあ、そうだろうな。
それにしても、長い夢だ。
明晰夢というのだろうか、全てがくっきりしていて、やけに現実味を帯びている。
「私が子供の頃、近所に落ちてきた『ただびと』は、結局ダメだったんだ。錯乱が酷かったし、ミトンさんは優し過ぎて、彼女をこの世界に繋ぎ止められなかった」
突然始まった昔語りに、眉根が寄る。
しかも初めて聞く単語ばかりで、訳が分からない。
「ただびとって、何……? ミトンさんって誰よ?」
「ただびとは、女神の祝福だよ。異世界から招かれた大切な客人だ。ミトンさんというのは、『ただびと』を拾った青年の名前。彼も可哀そうだったな……」
ズボンの人がしみじみと零す。
その痛ましげな声色に、ますます混乱は深まった。
「でも君は珍しいね。『ただびと』は大抵、東の島に落ちるのに。西の島にただびとが落ちてくるなんて、私が知る限りでは初めてだよ。みんな最初は『サリムの民』が間違ってここまで迷い込んできたのかと勘違いしたんだって。それだと、協定違反でしょ? だからつい威嚇しちゃったらしいんだよね。みんなも酷く驚いてたよ。君を怯えさせたこと、すごく悔やんでる。どうか許してあげて欲しいな」
誤解で嫌われるのはとても辛いものだし、出来ることなら許すと言いたい。
でも私は日本人だし、『サリムの民』とやらでは決してない。
……っていうか、早く覚めてよ。
この人の話してること、全然意味分からないよ。
早く現実に戻りたい。
巨大鳥も、背中から羽を生やした人も、魔法使いもいない、ただの日本に帰りたい。
「私の言う事、理解できる? 大丈夫?」
「理解なんて出来るわけないでしょ」
苛立ちがそのまま口調に表れる。キツい言い方に自分でもヒヤリとしたが、取り繕う気力はなかった。
とにかく疲れ過ぎて、何も考えたくない。
「あなたは、私の脳が勝手に作り出してるキャラなんでしょう? 分かったから、もう消えてよ」
「――……ああ、この子もダメなのか。いつまで持つかな、可哀想に」
彼は非常に残念そうな声でそういうと、静かに立ち去っていった。
遠ざかっていくズボンをぼんやりと眺め、すごい捨て台詞だったな、と思う。
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