せかぐるっ

天ぷら盛り

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第1幕~林の町にて、、先行く二人、雨揺らぎ騒林追うは一人と、また一人

こう、ドクロを浮かせてね?左に杖、右にショテルダガーなんてどうかしら?

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【フォリンズの種火】の裏手口から通路を辿り、武器の店舗へ、これまた裏手口から入る格好だった。
 サクイヤが居るお陰で、こうも好き勝手動けるとなると多少、悪い気分にもなる。
「あ…どうぞご遠慮無く、、
少し内情を話すとですよ?
腕のいい冒険者の方が命を落とすのは、組合としても、フォリンズの種火としても避けたいんですよね」
「ふうん?なるほどねえ、、
優れた人材は国宝にも勝る、か、、」
【ニチルイン王国】の何代か前の、国王が言った言葉らしかった。
「んー、征服王だったな、確か、、」
「そうです…征服王ダンクーワでしたね
さて…剣は、このコーナーです」
 案内された先は、様々な剣が立てられた区間だ。
 シンプルな短剣、長剣の類は言うに及ばず、手甲から剣身が伸びたもの、波打つ剣身を持つものから、片刃のやや婉曲した刃を持つ、刀と呼ばれるものもあった。
「あれ、これって、、
なんだか、見た事あるわ
、、何だったかしら?」
 そう言って、ユエリが手に取った短刀は刀身が半円を描く、ショテルと呼ばれる形状の短刀だ。
「あ…もう森で遭ったんですか?」
「ああ、そうそう、、
蜂よね、蜂だったわ
剣が生えてるやつよ、確か、、」
 昨日、《ニチリア、西の深木林》で二人を迂回させた蜂の尾と形状がよく似ていた。
「そうなんですよ…これ、、
【ショテルダガー・ビー】の針を加工したものなんです
そのまま、【ショテルダガー】ですね
投擲用としても、護身用としても…どうです?」
「んー、護身用か、、
ありかもな」
 言って、ルルヒラはユエリにショテルダガーを手渡す。
「うん?私?
そうねえ、、」
 手に持ち軽く振る。
 彼女は【外気法】に特化していて、【内気法】にそれほど適性は無い。
 大抵の場合、【プラーナ操気術】の才能がある者は、【内気法】か【外気法】の内、どちらかに適性が偏る場合がほとんどだ。
 近接を主体としない【外気法】寄りの彼女にとって、武器を手に取り戦うのは幾分、気が引けた。
 とは言え、【内気法】をまったく扱えないわけでも無い彼女が、護身用の武器を持つのも無駄ではない。
「ふうん?護身用ねえ、、
とっさに動けるのかしら、私?」
 ショテルダガーを小脇にサッと構え、彼女は言う。
「そうですね…構えはそんな感じで」
「んー、もう少し、こう、、
足を引いてだな、、」
 それなりに様になったが、ただし…若干、腰が浮いているように見えるのは気のせいでは無いだろう。
「もう少し…自然にですね?」
「あー、そうだな
足をこう、開いてだな?」
 隣でルルヒラが手本を見せる。
 つられ彼女の構えも、それなりのものになった。
「なるほど、こうね?
後ろ足を引きづる感じに、、」
 サッと足を踏み出す。
「ですね…まずまずです
買いですか?」
「んー、そうだな
あって困るものでも無いしな」
 言って、彼は長剣の棚へと向かう。
 続くのは女二人だ。
「さて…ルルヒラさんの使ってるものは、どちらかと言えば長めですね
【剣気】を扱えるとの事なので…
魔銀を混ぜた材質が良さそうなんですが、、
ここには置いてませんね
オーダーメイドなんて、どうですか?」
「んー、オーダーメイドか、、
いや、今度だな」
 長く使っていた彼のやや長めの剣も、使い始めの頃は長剣と言えたが、彼の今の背丈からすると、やや短いように思えた。
「教習所のやつよね、それ、、」
 士官教習所に入って都合五年、使っている事になる。
 よく手入れされていたのか、まだツヤはあるが、よくよく見れば小さく欠けた箇所が、けっこう見受けられた。
「んー、これな
さてな?どうするか、、」
 やはり少々、名残り惜しいようだ。
「まあ、買い替え時でしょうよ?
うん、で、、
オーダーメイドもあるのね?」
「はい…こちらで取り揃えた材質もありますが、、
自身で取ってきた素材で発注される冒険者の方も、多いですよ?」
「そうなるとねえ、、
ルルヒラ、あんたのその剣、、
鋳直して貰うのは?」
「むー、そうだな、、
鋳直しか、、
、、いや、ありか」
 思い直したのか、頷く。
「では…後日、という事で?」
「そうなるわね、、
さて、会計しときましょう
お値段、平気なんでしょうね?」
「ふふ…では、あちらの店に戻りますか」
 そう言って、武具の店舗を出、装具の店舗へ戻る。
 カウンターで店員から、先ほど指示したローブドレスを受け取り、品物を並べる。
 既にスリットを入れる工程は済んでいたらしい。
「では…ルルヒラさんは、、
チェインメイル下着用、上下、、
と、ガントレットの改良品ですね
それから、ユエリさんは、、
魔銀の気手繰りドクロ、、
と、肩剥きのローブドレス、スリット入り、、
ショテルダガーですか…
合わせて…どうします?」
 ニンマリ顔のサクイヤだ。
「んー、本当ならどれぐらいなんだ?」
「ふふ…聞かない方がいいですよ?」
 トントンと、ドクロを指で指し示す。
「これね、、
そうよねえ、、
少なくとも金貨で十枚分、ってところかしら?」
 因みに彼、彼女の全財産を合わせても、【旅の装束ともなり】で買った外套、靴を差し引いて銀貨二十枚にやや、届かない程度だ。
 仮に、ドクロが金貨十枚分としたら、全財産の五十倍の額に当たる。
「ふふ…そうですね
大体、それに色が付いた程度です
ドクロの分を差し引いたとしても、、
チェインメイルが銀貨二枚に銅貨三十枚、、
ガントレットが銀貨三枚、銅貨八十枚、、
ローブドレスは加工費含めて銀貨四枚に銅貨五十枚、、
最後にショテルダガーが銀貨一枚と銅貨三十枚、、
と、いった所…ですね?
合わせて、銀貨十一枚の銅貨九十枚になります」
 今更だが、【フォリンズの種火】の品には荷札が貼られていない。
 どうも、普段から客との相談で、値段を決めていくスタイルらしい。
 昨日、組合で売った【妖精の浮遊薬】の利潤を視野に入れた価格なんだろうか?
 だとすれば、なかなか際どいところを突いていると言える。
「んー、そうだな
どうだ?」
「まあ、ドクロの分が無ければね、、」
「そうですね…ドクロの方と、、
それと後日の剣のオーダーメイドですね
、、お二人への投資とでも思って頂ければ…」
 どうやら、サクイヤは二人をかなり高く買ってくれているようだった。
 サクイヤの提示した銀貨十一枚に銅貨九十枚、値切る事も無く支払った。
「さあて、、
それで明日よね
どうする?朝から?」
「んー?そうだな、さて?」
「そうですね…では、、
組合で早朝から、、
で、どうですか?」
「、、決まりね」
「あー、決まりか」
 明日の予定も立ち、二人はサクイヤと別れ、店を出た。
【フォリンズの種火】を出れば既に夕焼けで、【クアッキ大通り】を横切り、宿に帰ったのだった。
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