禁断のrainbow rose

秋村篠弥

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偽善者~染谷 あゆめ~

その後に

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「空野ちゃん、まだ仕事続けるの?」
 後ろから掛けられた声に、ハイとだけ答えた。相手は分かっている。
「そっかー、このあと」
「私の事を考えて下さって言って頂けるのは嬉しいですが、結構です」
 私の言葉に彼はめげずに言う。
「じゃあ終わるまで俺が空野ちゃんと居てあげる」
 そう言うと、彼は横の椅子に座る。
「それはどうも」
 こうなると、テコでも動かない。彼を見ると、柴犬の様に人懐っこい笑みを浮かべこちらを見ていた。
「早く終わるとイイね♪」
 可愛いと思った。でも、ちょっとしつこい。

 ガラララッ
 すると、職員室のドアが開き白衣の男性が入ってくる。
「紅月先生!」
 思わず空野叶は立ち上がりその名を呼んだ。
「ん?まだ居たのか、仕事、手伝うか?」
 居るとは思わず、そう俺は聞いた。
 すると、彼女の脇にいた向井咲夜という同期が言った。
「空野叶さんには、俺がいますから!ご心配なさらず!」
 彼の瞳は輝かしかった。誰にでも好かれそうな雰囲気の彼は仕事も何なくこなし、担任も持っている。
 それが、特に羨ましいとかではない。やはり人は雰囲気なのだ。
「そうか?なら、手伝って早く帰らせてやれ」
「はい!そうします!」
 彼は大げさに敬礼すると、胸を張る。その横で、空野ちゃんが彼を睨んでいた。
 が、俺の視線に気が付くとニッコリして言った。
「あ、そうだ。染谷さんの件どうなりました?」
 「あぁ、一様悩みとか聞いて、今日のところはお開きかな。でも、また来てもらっても相手するし」
「ありがとうございます!やっぱり、紅月先生は頼りになりますね、また頼みます」
「俺に出来ることで、なら協力する」
「はい、お願いします!」
 向井は、明らかに自分の時と対応が違う空野に戸惑っていた。
「じゃあまた」
 白衣を畳み、鞄に入れると紅月はドアを閉めた。
「はぁ」
 空野は無意識にため息を漏らした。
 何故、あそこまでカッコイイのか。
「良いよ、帰って」
 空野は向井のその言葉に、彼を見た。彼は手元を見ながら言葉を続ける。
「あの人、電車だから駅だよ」
 そう言って顔を上げる。
 自分に、紅月先生を追えと行っているのだろうか?
「後の仕事は俺がやっとくから。ね?」
「でも、」
「大丈夫、あの人まだ独身だから!」
 そう温かい笑みを空野に向ける。
「あ、ありがとう……。」
「うん、どういたしまして」
 空野はまだ戸惑いながら、上着を着てカバンを持つ。
「モタモタしてると取られちゃうよ?」
 その言葉に、紅月に好意を抱いている事を彼は悟っていると分かった。
「本当にありがとう!」
 ドアを開けると、走り出した。
 今日に限ってタクシーとか使ってなければいいけど。
 紅月はだいぶ簡単に見つかった。校門を出ると、見慣れた白衣とは対照的な黒いコートを羽織っていた。
「紅月先生ー!」
 空野は年甲斐もなく、走った。彼に向かって。
「そ、空野先生、お仕事は終わったの?」
 静かに振り向く彼に、空野は急いで息を整え、言葉を紡ぐ。
「い、いいえ。向井さんが請け負ってくれました」
「へぇ、向井君はイケメンだ。早く帰れて良かったな」
 紅月は、口の端に慣れない笑みを浮かべる為、苦笑の様な顔になる。本人は微笑んでいると思ってるんだろうな。
 でも、自分に向けて何かしらの反応を示してくれていて、空野は嬉しかった。
 たわいも無い話をしていたが、やがて駅に着く。
「じゃあ、俺は向こうだから」
 紅月が案外あっさりな事に、今更驚く空野。
「は、はい。また月曜」
「ははっ、子供の別れ方みたいだな」
 そう言ってまた彼は微笑んだ…。
「あはっ」
 空野は戸惑った、彼にとって家に帰る事はそんなに嬉しいことなのだろうか?
 何故なら、彼は先ほどのものとは違い……目まで笑っていたから。



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