掌中の珠のように Honey Days

花影

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甘い誘惑

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ハニーの1話目、サプライズギフトの後日譚。
ありがちな内容ですみません。


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「沙耶様、お待たせしました」
 バレンタインの2日後、午後のお茶の時間に用意されたのは料理長の黒崎特製のパンケーキだった。上品なきつね色に焼き上げたパンケーキに生クリームと数種類の果物が添えられている。
 そして沙耶の頼みに応じて綾乃が持って来てくれたのが、バレンタイン用に作ったものの配合が悪くて全く固まらなかった生チョコである。昨日、1日遅れでそれを義総に渡したのだが、彼はそれを全く気にせずにドロドロの生チョコをスプーンで掬って食べたり、コーヒーに混ぜて飲んだりして完食してくれた。
 本当は幸嗣のも用意してあったのだが、義総の代理で海外に行っており、帰国は1週間先になる予定だった。失敗しているし、日にちが経ったものを渡すのも気が引ける。彼の分はまた改めて作る事にし、残ったドロドロのチョコレートはソース代わりにして食べてしまおうと考えたのだ。
「美味しそう」
 ソースと化した生チョコをパンケーキにかけていくと、辺りには固まらなかった原因となったブランデーの香りが漂う。義総が好きだからと多めに入れすぎてしまったのだ。
「頂きます」
 綾乃が淹れてくれた紅茶を飲み、上品に切り分けたパンケーキを口に運ぶ。甘さを抑え、ブランデーを利かせた大人の味がするチョコレートはふんわりとしたパンケーキと甘いホイップクリームに良く合った。
「おいひぃ~」
「それは良うございました」
 幸せそうな沙耶の姿に側につかえる綾乃も塚原も目を細める。そんな2人に見守られながら、沙耶はたっぷりとチョコレートを絡めたパンケーキを頬張る。
 最初はきつく感じたブランデーの香りも次第に気にならなくなり、次第にパンケーキにかけるチョコレートの量は大胆になっていく。そしていつの間にかチョコレートが入っていた器は空になっていた。
「チョコ、なくなっちゃった……」
 寂しげにつぶやく沙耶の姿に綾乃は違和感を感じる。
「沙耶様?」
「チョコ……」
 沙耶の顔を覗き込んでみると、彼女の顔は赤らみ、目はトロンとしていた。



 仕事を早く終えた義総は、家路を急いでいた。今日は青柳も幸嗣もいないので、珍しく自分でハンドルを握っている。待っている人がいると思うと自然と心が躍り、思わず制限速度も赤信号も無視して家に急ぎたくなる。
「お帰りなさいませ」
 理性を総動員し、どうにか事故を起こさずに帰ってきた義総が玄関に入ると、少し慌てた様子の塚原が出迎える。
「ああ、沙耶はどうした?」
 今日は出かける予定は無かったはずである。家にいる時はいつも出迎えてくれる愛しい少女だけでなく、更には忠実な綾乃の姿も無い。訝しんだ義総が尋ねると、塚原にしては珍しく歯切れの悪い答えが返ってくる。
「リビングにおられるのですが……」
「具合でも悪いのか?」
「それが……」
 義総は荷物を全て塚原に預けると、そのままリビングに足を向ける。広いリビングの中で最も沙耶が気に入っている窓際のソファに彼女は座っていた。その傍らには綾乃がいるのだが、何故か非常に困り果てた表情を浮かべている。
「沙耶」
 義総が呼びかけると、愛しい少女は顔を上げる。だが、どこか違和感を覚えた。
「あ、義総様だぁ」
 どこか幼げな口調の彼女は立ち上がると、義総に駆け寄ろうとする。だが、足がふらつき歩くこともままならない様子である。そして近づいて気付いたのだが、彼女の口元も手もチョコレートで汚れている。そして服にも零したらしく、淡い色のニットのワンピースにはチョコレート色の染みがいくつもできていた。
「沙耶?」
「義総様ぁ~」
 義総が近寄ると沙耶は自ら抱きついてくる。辺りにはチョコレートの甘い匂いと共にブランデーの香りが漂っていた。テーブルに置かれた皿の上には食べかけのパンケーキにこれでもかというくらいチョコレートがかかっていた。そしてチョコレートが入っていたと思われる器を見て、義総は全てを理解した。
「あのチョコを食べて酔ったのか?」
「おしゃけ……飲んでないもん」
 幼げな彼女の口調に義総は苦笑しながら、彼女の口元についたチョコレートを舐めとる。そしてそのまま唇を合わせると、沙耶は積極的に舌を絡めてくる。
「先ずはその手を洗って、着替えようか?」
「うん」
「じゃあ、部屋に行こう」
 抱きついたままの沙耶を軽々と抱き上げ、義総はリビングを出て2階へと上がる。そして自分の寝室へ彼女を連れて行く。
「もっとだっこぉ……」
「汚れた服を脱いでからな」
 いつもなら抱き上げて運ぶと恥ずかしがるのだが、今日は義総の首に腕を回したまま離れようとはしない。いつもと違う沙耶に義総は苦笑しながらも彼女をなだめてベッドに降ろし、チョコレートでべたべたになったニットのワンピースを脱がす。そして綾乃が用意してくれたおしぼりで顔や手についたチョコレートを拭いていく。
「義総様もぉ」
 綺麗になったところで綾乃が汚れ物を持って部屋を出ていくと、沙耶は義総の上着を引っ張って脱がそうとする。
「こらこら、我慢が出来なくなるだろう?」
「義総様も脱ぐの」
 口で言う程嫌がらずに義総は沙耶の隣に座って彼女のやりたいようにさせる。まずはたどたどしい手つきで上着を脱がせて床に放り投げ、今度はシャツのボタンに取り掛かる。悪戦苦闘をしながら3つほどボタンを外すと、顕わになった首筋に沙耶は軽く吸い付いてくる。
「このいたずらっ子」
「動いちゃだーめ」
 沙耶の行動に思わず下半身が反応してしまう。酔った状態の彼女を抱くのは本意ではない。引きはがして止めさせようとするのだが、逆に彼女に押し倒される。しかも下着姿で義総に馬乗りになり、上気して頬を染め、それでいて無邪気な笑みを浮かべて小首をかしげているのだ。もう下半身は完全に臨戦態勢に入っている。
「じっとしてるの」
 だが、そんな彼の事情もお構いなしに沙耶はシャツのボタンを全て外してしまい、その下に着ていたTシャツもまくり上げて肌を曝す。鍛え上げられたその体に沙耶はしなやかな指を這わせ、唇を寄せる。
「沙耶、そろそろやめなさい」
「やーだぁ」
 駄々をこねるように嫌々と首を振り、彼女は義総の胸に吸い付いていくつも痕を付けていく。
「沙耶」
「もっとつけるの」
 いつの間にそんなテクニックを身に付けたのか、チュッ、チュッと音をたてて吸われたかと思うと、その赤い舌でチロチロと舐められる。どうやらいつもされている事を真似しているらしい。
「っ……」
 押し寄せる快感に思わず艶めいた声が漏れでていた。張り詰めた欲望は既に限界に達しており、義総は少女の体を引きはがすと、体を反転させてベッドに抑え付ける。

くー……

「沙耶?」
 いつの間にか彼女は眠っていた。体を揺すって起こそうと試みるが、うーんと唸っただけで目が覚める気配もない。
「……信じられん」
 沙耶に煽るだけ煽られてお預けされるとは思わなかった義総は、諦めきれずに体を揺するが彼女は完全に寝入ってしまっている。
「……義総しゃま……だいしゅき……」
 無邪気な寝顔を見てしまえば、最早無体な真似をする気にもなれなくなる。義総は諦めて沙耶の体をベッドの中央に寝かせると、夜具をかけて額に軽く口付けた。
 そして彼は持て余した欲望を処理する為に、1人バスルームに向かったのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


酔っぱらった沙耶に煽るだけ煽られた挙句、寝落ちされてしまった義総。需要があれば義総の逆襲編も書くかも。
沙耶は直接飲んでませんが、お酒は20歳になってから飲みましょうw
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