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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第33話 魔法ってなんだろう
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「どうした? 貴様がボードを見たいなんて珍しいな」
「ああ……ちょっと『冷たい風』の技性能見直したくて」
ノアに頼むと彼は俺の目の前にステータスボードを出してくれた。
『冷たい風』……敵に氷の結晶攻撃を与えるグループ攻撃。決して敵に目眩しする魔法ではない。「氷の結晶」と書いているが、俺が出しているのはただの雪だ。まあ、雪も結晶だが……本来ならもっと攻撃力があるはずだ。
――待てよ。
そういえば、最初にあの魔法を打った時、粉雪くらいしか出てなかったはず。
それが今は雪くらいまで大きくなった。この違いはなんだろう。異世界に来てまだ二日目とはいえ魔法も、クラスの能力も、正直いまいち掴めていない。それに、このバトルフォークのことだって。
「あ、おい」
ノアが声をかけて来たが、頭の中は考え事でいっぱいだった。だから、目の前に岩があることに気づいていなかったのだ。
「ムギちゃん! あぶな――」
「え?」
アンジェの声で我に返るが、気づいた時にはもう遅く、俺は岩に顔面をぶつけた。
「いってー……」
ぶつけた鼻を手で擦る。
そんな俺を見て、アンジェは「あらあら」と苦笑した。
「大丈夫? 考え事?」
「ああ……そんなとこ」
「まあ。でも、ここは暗いから余所見は危ないわよ。そろそろ次の燭台が見える頃だけど……あ、あった」
燭台を見つけたアンジェは剣の切っ先を向け、火を放つ。
その光景に俺は違和感を抱いた。
「なあ、なんでアンジェは呪文なしで火を出せるんだ?」
俺は呪文を唱えないと雪を出せない。だが、アンジェはこれまで一度も呪文を唱えていない。詠唱を破棄しているのか?
俺の素朴な疑問に、アンジェは「え?」と素っ頓狂な声をあげる。
「そう言われると難しいわね……これも割と無意識だし」
「え? 無意識? それでそこまで使えるのか?」
さらに問うとアンジェは腕を組み、人差し指を自分のあごに当てて考え始めた。
「たとえば……そうね。やってみるのが早いかしら」
そう言ってアンジェは次の燭台に切っ先を向け、火を放って明かりを灯す。彼にとってはなんの造作もない行動だ。
「こうやって物体に火を纏わせたり、物体を媒体にして放射をするのは得意なの。でも――」
アンジェは手のひらを上に向け、手に力を入れる。だが、ただ力んでいるだけで手には何も変化はない。
アンジェが何をしようとしているのかわからずにいると、疲れたのか彼も深く息を吐いた。
「……こんな感じで、火球にするのは苦手――というか、できないのよ。せいぜい手が熱に籠るくらいね」
「そうなのか? 火ならなんでもできそうなイメージなんだけど」
しかし、アンジェは首を振って否定する。
「属性魔法とクラスの特性なんでしょうけど、魔法にも型があるらしいわ。逆に言えば、型と属性魔法がハマればこうやってイメージだけでも魔法を使えるのよ」
「へー、魔法にも型があるのか」
「しかも同じクラスでも得意・不得意がある。十人十色ってことよ」
つまり、同じ属性の魔法や同じクラスでも細分化されていて、扱えるものも限られているもいうことか。
「型……型ねえ……」
魔法に型があることも目から鱗だったが、なおさら俺の型はなんなのだろうか。
腕を組んで考え込んでいると、アンジェが目をパチクリさせてこちらを見ていた。
「もしかして、魔法のことを悩んでたの?」
「あ、うん……」
アンジェに図星を突かれたが、素直に頷く。しかし、アンジェは俺の悩みを茶化すことなく、一緒に頭を抱えてくれた。
「『冷たい風』が範囲攻撃だったから、型はあたしと似ている気がするのよね……でも、ムギちゃんのクラスって前衛タイプなのかしら」
「前衛……なのか?」
アンジェが言っているのは前衛か後衛かでまた型が決まってくるということなのだろう。
そう言われてみると、俺のクラスはどちらに当てはまるのだろうか。というか、マジで【赤子の悪魔】ってなんなんだ。最早、哲学。
考えに行き詰まり苦悩していると、アンジェは「あらあら」と生温かい眼差しで俺を見守っていた。
「焦らなくても大丈夫よ。練習すればきっと上手くなるし、コツも掴んでくるわ」
フフッと笑いながら、アンジェは再び剣を燭台に向けて火を放射する。
そこで、彼の動きがピタリと止まった。明るくなった洞窟の先に広い空間が現れたからだ。
「ああ……ちょっと『冷たい風』の技性能見直したくて」
ノアに頼むと彼は俺の目の前にステータスボードを出してくれた。
『冷たい風』……敵に氷の結晶攻撃を与えるグループ攻撃。決して敵に目眩しする魔法ではない。「氷の結晶」と書いているが、俺が出しているのはただの雪だ。まあ、雪も結晶だが……本来ならもっと攻撃力があるはずだ。
――待てよ。
そういえば、最初にあの魔法を打った時、粉雪くらいしか出てなかったはず。
それが今は雪くらいまで大きくなった。この違いはなんだろう。異世界に来てまだ二日目とはいえ魔法も、クラスの能力も、正直いまいち掴めていない。それに、このバトルフォークのことだって。
「あ、おい」
ノアが声をかけて来たが、頭の中は考え事でいっぱいだった。だから、目の前に岩があることに気づいていなかったのだ。
「ムギちゃん! あぶな――」
「え?」
アンジェの声で我に返るが、気づいた時にはもう遅く、俺は岩に顔面をぶつけた。
「いってー……」
ぶつけた鼻を手で擦る。
そんな俺を見て、アンジェは「あらあら」と苦笑した。
「大丈夫? 考え事?」
「ああ……そんなとこ」
「まあ。でも、ここは暗いから余所見は危ないわよ。そろそろ次の燭台が見える頃だけど……あ、あった」
燭台を見つけたアンジェは剣の切っ先を向け、火を放つ。
その光景に俺は違和感を抱いた。
「なあ、なんでアンジェは呪文なしで火を出せるんだ?」
俺は呪文を唱えないと雪を出せない。だが、アンジェはこれまで一度も呪文を唱えていない。詠唱を破棄しているのか?
俺の素朴な疑問に、アンジェは「え?」と素っ頓狂な声をあげる。
「そう言われると難しいわね……これも割と無意識だし」
「え? 無意識? それでそこまで使えるのか?」
さらに問うとアンジェは腕を組み、人差し指を自分のあごに当てて考え始めた。
「たとえば……そうね。やってみるのが早いかしら」
そう言ってアンジェは次の燭台に切っ先を向け、火を放って明かりを灯す。彼にとってはなんの造作もない行動だ。
「こうやって物体に火を纏わせたり、物体を媒体にして放射をするのは得意なの。でも――」
アンジェは手のひらを上に向け、手に力を入れる。だが、ただ力んでいるだけで手には何も変化はない。
アンジェが何をしようとしているのかわからずにいると、疲れたのか彼も深く息を吐いた。
「……こんな感じで、火球にするのは苦手――というか、できないのよ。せいぜい手が熱に籠るくらいね」
「そうなのか? 火ならなんでもできそうなイメージなんだけど」
しかし、アンジェは首を振って否定する。
「属性魔法とクラスの特性なんでしょうけど、魔法にも型があるらしいわ。逆に言えば、型と属性魔法がハマればこうやってイメージだけでも魔法を使えるのよ」
「へー、魔法にも型があるのか」
「しかも同じクラスでも得意・不得意がある。十人十色ってことよ」
つまり、同じ属性の魔法や同じクラスでも細分化されていて、扱えるものも限られているもいうことか。
「型……型ねえ……」
魔法に型があることも目から鱗だったが、なおさら俺の型はなんなのだろうか。
腕を組んで考え込んでいると、アンジェが目をパチクリさせてこちらを見ていた。
「もしかして、魔法のことを悩んでたの?」
「あ、うん……」
アンジェに図星を突かれたが、素直に頷く。しかし、アンジェは俺の悩みを茶化すことなく、一緒に頭を抱えてくれた。
「『冷たい風』が範囲攻撃だったから、型はあたしと似ている気がするのよね……でも、ムギちゃんのクラスって前衛タイプなのかしら」
「前衛……なのか?」
アンジェが言っているのは前衛か後衛かでまた型が決まってくるということなのだろう。
そう言われてみると、俺のクラスはどちらに当てはまるのだろうか。というか、マジで【赤子の悪魔】ってなんなんだ。最早、哲学。
考えに行き詰まり苦悩していると、アンジェは「あらあら」と生温かい眼差しで俺を見守っていた。
「焦らなくても大丈夫よ。練習すればきっと上手くなるし、コツも掴んでくるわ」
フフッと笑いながら、アンジェは再び剣を燭台に向けて火を放射する。
そこで、彼の動きがピタリと止まった。明るくなった洞窟の先に広い空間が現れたからだ。
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