転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第3章 青年剣士の過日

第42話 魔法の修行、開始?

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 ――演奏が終わり、愉快な音色のバックグラウンドミュージックがなくなった。

 噴水の近くでは子供たちがピエロに「ばいばーい」と手を振って別れを告げている。あれだけ明るいオーラだったのに演奏が終わった途端、一気に静かになってしまった。そして、俺たちの間にも少し気まずい空気が流れた。

 そんな空気感を壊したのは、ミドリーさんのほうだった。

「……演奏会、終わってしまったな」

 そう言ったミドリーさんは両膝に手をついてゆっくりと立ち上がる。

「買い物途中に引き留めて悪かった。また怪我をしたらいつでも来なさい」

 フッと小さく笑ったミドリーさんは俺に背中を向けて歩き出した。

「あ、はい……さよならっす」

 ワンテンポ遅れてミドリーさんにお辞儀をすると、ミドリーさんは軽く手を挙げて去って行った。

 それにしても、魅惑の【踊り子ダンサー】イルマか……俺も一回くらい踊りを観てみたかったものだ。

「なあ、ノア……お前はどう思う?」

 頭の上にいるノアに話を振る。だが、返ってきたのは欠伸した声だった。

「お前……ミドリーさんの話、聞いていたか?」

「いや、全然。それよりもりんごが食いたい」

「あ、そうっすか……」

 このノアの能天気具合にため息が出る。

 とはいえ、これ以上ここに留まっている理由もない。ノアの言うことを聞くのは癪だが、仕方がなくりんごを買いに行くことにした。


 ◆ ◆ ◆


 結局、お留守番生活一日目は買い物を終えたあと、干していた洗濯物を片づけているうちに夕食時になってそのまま終わってしまった。

 勿論、ノアの発言から予感されていた心霊現象もなく、夜も静かな眠りに着くことができた。本当、何事もなくてよかったと心底思う。

 さて、お留守番二日目の今日だが、洗濯をしなくていい分、時間に余裕が生まれた。ここでようやく、ずっと手をつけたかったことができそうだ――そう、修行だ。

 外は今日も晴れ渡っていた。風も穏やかだし、修行に持ってこいのいい天気だ。

 さっさと部屋の掃き掃除を終えた俺は、さっそく修行に取りかかった。

 バトルフォークを手に持ち、「冷たい風コルド・ウィンド」を唱える。だが、出てくるのは相変わらず雪だ。氷の結晶には程遠い。

 魔力を使わなくていいから、呪文は何度でも唱えられた。しかし、出てくるのはほぼ雪。時々みぞれ。むしろちょっと溶けている。

 何も掴めないまま魔法を乱用する。しかし、芝生が溶けた雪で濡れるだけで変化はなかった。

「あーもう、できねえー!」

 フォークを掴んだまま大の字で寝転がる。

 すると、ノアがニヤニヤと悪戯っぽく笑みを含みながら俺を見下ろしてきた。

「魔法の練習とは、気合いが入っているではないか、勇者様」

「なんだよ、うざってえなあ……冷やかしか?」

「まあ、半分は冷やかしだが、これでも褒めてるのだよ」

 ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、ノアは口角を上げる。

「冷やかし半分」という言葉が気に食わないが、今のところはスルーしてあげた。

「褒めるくらいなら見てないでコツでも教えろって」

「コツなら前に教えただろ」

「イメージと情熱とノリだろ? もっと具体的に教えろって」 

「あーあ」と言いながら空を仰ぐ。この調子だと、日が暮れてもできなさそうだ。

 真上にある太陽の光が眩しい。腹も減ってきたし、そろそろお昼時だろうか。

 腹も減ったが、疲れて動きたくない。このまま横たわっていたい。私は貝になりたい。

「ノア~、飯作ってくれ~」

「この姿で作れると思うか? 働けクソニート」

「ニートじゃねえし! ギルド入ったし! 現実世界でもギリギリ学生だったし!」

 ムキになってみるが、ノアは半目になって「わかったわかった」と息をついた。呆れているこの目は完全に俺のことを見下している。

 だが、自分で動かないと飯が出てこないのは当然だった。

 現実世界だったら「飯を食うのも面倒だ」とぶっ通しでゲームをしていたこともあったが、今は何か口にしないと起き上がる気力もない。

「あー、誰でもいいから飯作ってくれねえもんかな」

 空を見上げながら強請るようにぼやく。勿論、返答は期待していない。

 期待していない、はずだった。
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