51 / 242
第3章 青年剣士の過日
第51話 レベルが上がった音がほしい
しおりを挟む
それにしても、どのタイミングでレベルが上がっていたのだろうか。身に覚えもないし、体の変化も感じない。
「レベルが上がるのわかりにくくね? 『てれれれってってってー』とか音しねえの?」
「する訳ないであろう。そもそも、こうしてステータスが見れるだけありがたいと思え」
ノアは呆れた眼差しでぴしゃりと言い放つ。彼女の言う通り他の連中はステータスやレベルの概念すら知らないだろうから、俺が恵まれているのは間違いない。ただ、ノアに正論を言われるのは癪に障る。
それはいいとして、俺のステータスはどう変わったのだろうか。全体的に見てみることにしよう――と思ったのだが、正直言って、初期ステータスなんてまったく覚えてない。
「なあ、これ見ても何がどう上がっているのか全然わかんねえんだけど」
「そんなこともわからないのか……まあ、人間の記憶力ならそれが当然か」
「おい、ナチュラルにディスってるんじゃねえぞ」
半目になりながらツッコミを入れるが、ノアに完全に無視された。だが、彼がじっとステータスボードを見上げて分析しているものだから、俺もこれ以上反論できなかった。
とりあえずは、彼女の報告を待つことにする。
「……そう言っても、装備が変わってないから大したことないな」
そう言ってひと呼吸置いたノアは俺のステータスを読み上げた。
「体力が『+三』素早さが『+二』、力も『+三』……ってところか」
「待て待て。それだけしかパラメーター上がってないってことないだろ」
淡々と告げるノアを思わず止める。
一応レベルが二も上がっているのだ。もう少し伸びがあってもいいはず。
けれども、それは俺の考えが甘かっただけで、事態は無情だった。
「成人した男がそんなにすぐ筋力やスピードが上がる訳ないだろ」
「そうだけど、なんでそこだけ現実的なんだよ! 今まで散々ファンタジーだったじゃねえか!!」
ステータスボードに向かって指差してツッコミを入れるが、ノアは「やれやれ」とため息をつくだけだった。
だが、こればかりはノアのほうが的を射ている。
完膚なきまでに妥当な見解を言われ、俺はぐうの音も出なかった。
「あ、でも魔力は少し上がってるな」
「え? 本当か!?」
ノアに言われて魔力の項目をかぶりつくように見る。
どんなにたくさん能力値の項目があろうが、これだけは初期数値を覚えていた。『三』だ。いったいそこからどれくらい上がっているのか……緊張しながら見ると、確かに他の数値より伸びがよかった。
「魔力……八」
力や素早さが二、三しか上がっていないのにこれだけ五も上がっているが、まだ全然足りない。なんせ、魔力を使う魔法は最低でも十五は必要だ。
そうなのだが、ノア自体はここまでの伸びを期待していなかったようで珍しく喜んでくれた。
「よかったではないか。貴様の魔力もカスからクソくらいになったぞ」
「底辺っつうことは変わってないけどな」
ケラケラと笑うノアに対し、深いため息をつく。
あれ? 俺って勇者として転生したんじゃなかったっけ? こんなひどい扱いでいいのか?
こんな体たらくなものだから俺自身は先行きが途轍もなく不安なのだが、当の案内人様に焦りは見られない。
どうやら、ノアなりに俺の長所をわかっているからのようだ。
「そもそも貴様、転生人にしては戦闘力が高いから、魔法に頼らなくてもそこそこ戦えてるんだよな。だからこの調子でやってもらえば、私としては何も問題ない」
「そうなのか? なんか俺、初めて法に触れないくらいのやんちゃしてきてよかったと思ったわ」
「……よく神の使いの前でそんなこと言えるものだな」
ノアが怪訝そうな顔をしていたが、俺は構わなかった。
課題はまだ色々あるが、ノアもこんなに余裕そうということは、俺にはまだ時間があるということなのだろう。
「とりあえず、このままレベルを上げて魔王を迎え撃てってことなんだろ?」
「そういうこと。せいぜい頑張りたまえ」
にんまりと笑ったノアは俺の腹を降りたと思うと、そのまま眠るのか窓の縁にぴょんと飛んだ。
だが、窓の外を見てその場で固まる。何か見つけたのだろうか。
「レベルが上がるのわかりにくくね? 『てれれれってってってー』とか音しねえの?」
「する訳ないであろう。そもそも、こうしてステータスが見れるだけありがたいと思え」
ノアは呆れた眼差しでぴしゃりと言い放つ。彼女の言う通り他の連中はステータスやレベルの概念すら知らないだろうから、俺が恵まれているのは間違いない。ただ、ノアに正論を言われるのは癪に障る。
それはいいとして、俺のステータスはどう変わったのだろうか。全体的に見てみることにしよう――と思ったのだが、正直言って、初期ステータスなんてまったく覚えてない。
「なあ、これ見ても何がどう上がっているのか全然わかんねえんだけど」
「そんなこともわからないのか……まあ、人間の記憶力ならそれが当然か」
「おい、ナチュラルにディスってるんじゃねえぞ」
半目になりながらツッコミを入れるが、ノアに完全に無視された。だが、彼がじっとステータスボードを見上げて分析しているものだから、俺もこれ以上反論できなかった。
とりあえずは、彼女の報告を待つことにする。
「……そう言っても、装備が変わってないから大したことないな」
そう言ってひと呼吸置いたノアは俺のステータスを読み上げた。
「体力が『+三』素早さが『+二』、力も『+三』……ってところか」
「待て待て。それだけしかパラメーター上がってないってことないだろ」
淡々と告げるノアを思わず止める。
一応レベルが二も上がっているのだ。もう少し伸びがあってもいいはず。
けれども、それは俺の考えが甘かっただけで、事態は無情だった。
「成人した男がそんなにすぐ筋力やスピードが上がる訳ないだろ」
「そうだけど、なんでそこだけ現実的なんだよ! 今まで散々ファンタジーだったじゃねえか!!」
ステータスボードに向かって指差してツッコミを入れるが、ノアは「やれやれ」とため息をつくだけだった。
だが、こればかりはノアのほうが的を射ている。
完膚なきまでに妥当な見解を言われ、俺はぐうの音も出なかった。
「あ、でも魔力は少し上がってるな」
「え? 本当か!?」
ノアに言われて魔力の項目をかぶりつくように見る。
どんなにたくさん能力値の項目があろうが、これだけは初期数値を覚えていた。『三』だ。いったいそこからどれくらい上がっているのか……緊張しながら見ると、確かに他の数値より伸びがよかった。
「魔力……八」
力や素早さが二、三しか上がっていないのにこれだけ五も上がっているが、まだ全然足りない。なんせ、魔力を使う魔法は最低でも十五は必要だ。
そうなのだが、ノア自体はここまでの伸びを期待していなかったようで珍しく喜んでくれた。
「よかったではないか。貴様の魔力もカスからクソくらいになったぞ」
「底辺っつうことは変わってないけどな」
ケラケラと笑うノアに対し、深いため息をつく。
あれ? 俺って勇者として転生したんじゃなかったっけ? こんなひどい扱いでいいのか?
こんな体たらくなものだから俺自身は先行きが途轍もなく不安なのだが、当の案内人様に焦りは見られない。
どうやら、ノアなりに俺の長所をわかっているからのようだ。
「そもそも貴様、転生人にしては戦闘力が高いから、魔法に頼らなくてもそこそこ戦えてるんだよな。だからこの調子でやってもらえば、私としては何も問題ない」
「そうなのか? なんか俺、初めて法に触れないくらいのやんちゃしてきてよかったと思ったわ」
「……よく神の使いの前でそんなこと言えるものだな」
ノアが怪訝そうな顔をしていたが、俺は構わなかった。
課題はまだ色々あるが、ノアもこんなに余裕そうということは、俺にはまだ時間があるということなのだろう。
「とりあえず、このままレベルを上げて魔王を迎え撃てってことなんだろ?」
「そういうこと。せいぜい頑張りたまえ」
にんまりと笑ったノアは俺の腹を降りたと思うと、そのまま眠るのか窓の縁にぴょんと飛んだ。
だが、窓の外を見てその場で固まる。何か見つけたのだろうか。
10
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる