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第5章 『死の森』へ
第72話 騎手、フーリ
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「フーリとダルマンさんって親子なの」
「え、マジで」
「なんだ、うちの親父それすら言ってなかったのか」
フーリに意外そうな顔をされたが、ダルマンさんとフーリの顔が似ていないからピンと来なかった。だが、経緯を聞くと彼らの関係性がわかってきた。
「俺の親が【商人】で、アンジェの親が【農家】だからな。うちがたまにアンジ
ェの家の野菜を買ってたんだ」
「あたしたちは年も同じだし、子供の時は親の商談が終わるまで一緒に遊んでたってこと」
子供の頃は行商人のダルマンさんに引っ付いて街を点々としていたフーリだが、クラスが【騎手】だったので『オルヴィルカ』のギルドの運び屋として働くことになった。だが、親が【商人】だからたまに商品を運ぶ手伝いもしているらしい。
「再会した時は本当にびっくりしたんだから。こんないい男になっちゃって、このこの」
アンジェはフーリが振り返れないことをいいことに彼の背中をツンツンと指で突いた。
「俺も……お前がここまで女っぽくなっててびっくりしたよ……主に仕種と口調」
そんな彼に向け、フーリは「はは……」と苦笑している。
そしてアンジェが俺以外の男にも女子力の高いちょっかいを出していたことに心底安堵した。
ちなみにアンジェが「フーリ」と呼び捨てにしているのは「頼むからちゃん付けしないでくれ」と頭を下げたかららしい。俺もそうすればよかった。
そんな他愛ない話をしているうちに、ようやく街を出た。
街を出ればいつものだだっ広い草原が広がっている。
噂によると『ザラクの森』はここからさらに道を行くらしいが、地図はフーリが持っていた。
「どう? 行けそう?」
「流石に死霊の森は初めていくが……まあ、なんとかなるだろ」
軽々しい口調でアンジェに告げたフーリは地図をしまい、しっかりと手綱を持った。いよいよ森に向かうのだ。
「……ちゃんと捕まってろよ」
そう言ってフーリは俺のほうを見てニヤリと笑う。
その笑みがなんだか恐ろしくて、俺の背筋にぞくっと悪寒が走った。
「っしゃ! 行くぜ!!」
フーリが掛け声と共に手綱を引くと、セントリーヌが「ヒヒーン!」と高らかに前足を上げた。
すると、セントリーヌについた蹄鉄が黄緑色に光り輝いた。
「な、なんだ?」
驚くのも束の間、セントリーヌが地面を思い切り蹴ると、荷台がガクンと大きく揺れた。
セントリーヌが走り出したのだ。しかも助走もなしで初めからエンジンフルスロットルでぶっ飛ばしている。
これが本当に荷台を引いている馬のスピードなのだろうか。体感は普通自動車に乗っているくらい速いスピードだ。しかし、無蓋な荷台といってもオープンカーと同等ではない。顔面に風は当たりまくるし、荷台の作りが簡易すぎてめちゃくちゃ揺れる。これでは森にたどり着く前に尻が三つに割れてしまう。
「待て待て待て!!」
振動で浮く体を必死に押さえながら、叫ぶような声でフーリに訴えるが、彼はとても不思議そうな顔を浮かべていた。
「どうした? 急いでるんだろ?」
「急いでるけど速すぎるわ! もう少し手加減しろよ!!」
こんな速さで走られたら体がいくつあっても持たん。だが、フーリは「なんだよー……」とつまらなさそうに不貞腐れる。
「せっかく思い切り走れると思ったんだけどな」
「まあ、そんなこと言わないであげて。ムギちゃん、馬車に慣れてないようだし」
「それもそうだ……セントリーヌ。もう少しスピード落としていいぞ」
そう言ってフーリが手綱を引くと、セントリーヌのスピードが徐々に下がっていった。
スピードは落ちたとはいえ、先ほどのような何バウンドもするような揺れでもないし、強風で呼吸が苦しいなんてこともない。乗り心地は愕然と良くなった。
「し、死ぬかと思った……」
荷台の縁を握りながらがっくりとうなだれる。
三半規管が衰えていたら、今の揺れで酔って吐いていただろう。危うく俺の尊厳が失うところだった。
「え、マジで」
「なんだ、うちの親父それすら言ってなかったのか」
フーリに意外そうな顔をされたが、ダルマンさんとフーリの顔が似ていないからピンと来なかった。だが、経緯を聞くと彼らの関係性がわかってきた。
「俺の親が【商人】で、アンジェの親が【農家】だからな。うちがたまにアンジ
ェの家の野菜を買ってたんだ」
「あたしたちは年も同じだし、子供の時は親の商談が終わるまで一緒に遊んでたってこと」
子供の頃は行商人のダルマンさんに引っ付いて街を点々としていたフーリだが、クラスが【騎手】だったので『オルヴィルカ』のギルドの運び屋として働くことになった。だが、親が【商人】だからたまに商品を運ぶ手伝いもしているらしい。
「再会した時は本当にびっくりしたんだから。こんないい男になっちゃって、このこの」
アンジェはフーリが振り返れないことをいいことに彼の背中をツンツンと指で突いた。
「俺も……お前がここまで女っぽくなっててびっくりしたよ……主に仕種と口調」
そんな彼に向け、フーリは「はは……」と苦笑している。
そしてアンジェが俺以外の男にも女子力の高いちょっかいを出していたことに心底安堵した。
ちなみにアンジェが「フーリ」と呼び捨てにしているのは「頼むからちゃん付けしないでくれ」と頭を下げたかららしい。俺もそうすればよかった。
そんな他愛ない話をしているうちに、ようやく街を出た。
街を出ればいつものだだっ広い草原が広がっている。
噂によると『ザラクの森』はここからさらに道を行くらしいが、地図はフーリが持っていた。
「どう? 行けそう?」
「流石に死霊の森は初めていくが……まあ、なんとかなるだろ」
軽々しい口調でアンジェに告げたフーリは地図をしまい、しっかりと手綱を持った。いよいよ森に向かうのだ。
「……ちゃんと捕まってろよ」
そう言ってフーリは俺のほうを見てニヤリと笑う。
その笑みがなんだか恐ろしくて、俺の背筋にぞくっと悪寒が走った。
「っしゃ! 行くぜ!!」
フーリが掛け声と共に手綱を引くと、セントリーヌが「ヒヒーン!」と高らかに前足を上げた。
すると、セントリーヌについた蹄鉄が黄緑色に光り輝いた。
「な、なんだ?」
驚くのも束の間、セントリーヌが地面を思い切り蹴ると、荷台がガクンと大きく揺れた。
セントリーヌが走り出したのだ。しかも助走もなしで初めからエンジンフルスロットルでぶっ飛ばしている。
これが本当に荷台を引いている馬のスピードなのだろうか。体感は普通自動車に乗っているくらい速いスピードだ。しかし、無蓋な荷台といってもオープンカーと同等ではない。顔面に風は当たりまくるし、荷台の作りが簡易すぎてめちゃくちゃ揺れる。これでは森にたどり着く前に尻が三つに割れてしまう。
「待て待て待て!!」
振動で浮く体を必死に押さえながら、叫ぶような声でフーリに訴えるが、彼はとても不思議そうな顔を浮かべていた。
「どうした? 急いでるんだろ?」
「急いでるけど速すぎるわ! もう少し手加減しろよ!!」
こんな速さで走られたら体がいくつあっても持たん。だが、フーリは「なんだよー……」とつまらなさそうに不貞腐れる。
「せっかく思い切り走れると思ったんだけどな」
「まあ、そんなこと言わないであげて。ムギちゃん、馬車に慣れてないようだし」
「それもそうだ……セントリーヌ。もう少しスピード落としていいぞ」
そう言ってフーリが手綱を引くと、セントリーヌのスピードが徐々に下がっていった。
スピードは落ちたとはいえ、先ほどのような何バウンドもするような揺れでもないし、強風で呼吸が苦しいなんてこともない。乗り心地は愕然と良くなった。
「し、死ぬかと思った……」
荷台の縁を握りながらがっくりとうなだれる。
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