103 / 242
第6章 森の奥の隠れ里
第103話 緑の風の混血エルフ
しおりを挟む
身震いするような激しい咆哮をあげたリッチーヌは、大きな口を開けながらリオンに突っ込む。
「いけない!」
慌てて切っ先を向けたアンジェだが、リッチーヌのほうが機敏だった。自動車のようなどでかい図体のくせにこいつも風を切るほど素早い。このままでは、リオンに直撃する。
「リオン!」
思わず声を荒げるが、リオンと、それを眺めていたライザはどこまでも冷静だった。
「えーいっ!」
可愛らしい声をあげながら、リオンはその場でくるっと回る。そうすると、彼の周りにつむじ風が吹き、一瞬で姿を消した。
空ぶったリッチーヌの歯が「ガチンッ!」とぶつかる。奴もこの間合いで食らいつけないとは思わなかったようで、クエスチョンマークを浮かべながら辺りを見回した。
一方、リオンはリッチーヌの数十メートル後ろに移動していた。瞬間移動……というよりは、風が彼をここまで運んだように見えた。
「リオン……お前……」
唖然としながら彼を見るが、リオンは不思議そうにパチパチと何度も瞬きをしているだけだ。
敵も味方も、リオンの存在感に戸惑いを隠せないでいた。
ただ、全てを知るライザはこの場を見てニヤっと悪戯っぽく笑った。
「お前ら……俺がいつ、リオンが回復役って言ったよ」
「……え?」
ライザの答えに、俺もアンジェも口を揃えて素っ頓狂な声をあげる。
そんなうろたえる俺たちをおかしそうに見ながら、ライザは得意気に告げた。
「リオンは回復役じゃねえ。なぜなら……こいつの属性魔法は『風』だからな」
「『風』!? あんなに治癒魔法使えるのに!?」
度肝を抜いた。今、彼がアルジャーに当てた攻撃魔法はどう見たって竜巻系だ。
俺は覚えている。同じ風属性のフーリが「竜巻系の攻撃魔法は魔力の消費が激しい」と言っていたことを。それを彼は詠唱破棄で唱えている。そういえば、治癒魔法も詠唱破棄していた。こいつ、どれだけ魔力が高いのだ。
なになに? ハーフエルフで? 治癒魔法使えて? 攻撃魔法も使えて? どんだけ万能なんだよ。言うならば攻撃も回復もできる『賢者タイプ』ってか。というか、こいつが一番強いわ。そしてやっぱり俺が断トツで弱いわ。
しかし、当の本人は相変わらずあどけない表情で不思議そうにしている。これは、彼自身自分の強さをわかっていないパターンだ。これまで孤独だったから比較対象がいなかったのだろう。つまり、彼のポテンシャルを知っているのは兄のライザだけ。こんなに落ち着いていられるのも当然だ。
そうしている間に、リッチーヌが爪を立てて再びリオンを襲った。
「そりゃっ!」
気合いを入れた声でリオンはリッチーヌの前に細長い竜巻を出す。
だが、同じ手は食らわなかった。リッチーヌはサイドステップで竜巻を避け、大きくジャンプしてリオンのほうに飛んで行った。
再びくるりと回って瞬間移動しようとするリオンだったが、今度はリッチーヌのほうが速い。先ほどとタイミングがズレているが、果たして上手く避けられるのか――
だが、そんな心配も必要なかった。奴はもう一人……アンジェの相手もしなければならないのだから。
「はっ!」
闘魂を注入した声でアンジェがリッチーヌの腕を叩き切る。すると、切られたリッチーヌの腕からは鮮血が舞い、奴の短い断末魔が鳴り響いた。
「もう……危ないわね」
一息ついたアンジェは剣を振るってリッチーヌの血を振り払う。これでダメージは一発。冷静な判断で動けた鮮やかな一撃だ。
「まあ、上出来だろ」
一連の動きを見ていたライザがニヤリと笑う。どうやらアンジェは期待通りの行動をしてくれたようだ。
こんなに万能なリオンだが、パワー不足という大きな弱点がある。どんなに魔力が高いとはいえ彼はまだ子供。物理攻撃による力攻撃や素早い攻撃は彼には向いていない。その前に彼は丸腰だ。魔法が避けられたら、続けて撃つか、逃げるしか手はないのだ。けれども、それは【剣士】であるアンジェが補ってくれる。
魔法のリオン。物理攻撃のアンジェ。攻撃のバランスが上手く取れている良いコンビネーションだ。これなら、安心してリッチーヌの相手を頼める。
――問題は、俺たちのほうだ。
「いけない!」
慌てて切っ先を向けたアンジェだが、リッチーヌのほうが機敏だった。自動車のようなどでかい図体のくせにこいつも風を切るほど素早い。このままでは、リオンに直撃する。
「リオン!」
思わず声を荒げるが、リオンと、それを眺めていたライザはどこまでも冷静だった。
「えーいっ!」
可愛らしい声をあげながら、リオンはその場でくるっと回る。そうすると、彼の周りにつむじ風が吹き、一瞬で姿を消した。
空ぶったリッチーヌの歯が「ガチンッ!」とぶつかる。奴もこの間合いで食らいつけないとは思わなかったようで、クエスチョンマークを浮かべながら辺りを見回した。
一方、リオンはリッチーヌの数十メートル後ろに移動していた。瞬間移動……というよりは、風が彼をここまで運んだように見えた。
「リオン……お前……」
唖然としながら彼を見るが、リオンは不思議そうにパチパチと何度も瞬きをしているだけだ。
敵も味方も、リオンの存在感に戸惑いを隠せないでいた。
ただ、全てを知るライザはこの場を見てニヤっと悪戯っぽく笑った。
「お前ら……俺がいつ、リオンが回復役って言ったよ」
「……え?」
ライザの答えに、俺もアンジェも口を揃えて素っ頓狂な声をあげる。
そんなうろたえる俺たちをおかしそうに見ながら、ライザは得意気に告げた。
「リオンは回復役じゃねえ。なぜなら……こいつの属性魔法は『風』だからな」
「『風』!? あんなに治癒魔法使えるのに!?」
度肝を抜いた。今、彼がアルジャーに当てた攻撃魔法はどう見たって竜巻系だ。
俺は覚えている。同じ風属性のフーリが「竜巻系の攻撃魔法は魔力の消費が激しい」と言っていたことを。それを彼は詠唱破棄で唱えている。そういえば、治癒魔法も詠唱破棄していた。こいつ、どれだけ魔力が高いのだ。
なになに? ハーフエルフで? 治癒魔法使えて? 攻撃魔法も使えて? どんだけ万能なんだよ。言うならば攻撃も回復もできる『賢者タイプ』ってか。というか、こいつが一番強いわ。そしてやっぱり俺が断トツで弱いわ。
しかし、当の本人は相変わらずあどけない表情で不思議そうにしている。これは、彼自身自分の強さをわかっていないパターンだ。これまで孤独だったから比較対象がいなかったのだろう。つまり、彼のポテンシャルを知っているのは兄のライザだけ。こんなに落ち着いていられるのも当然だ。
そうしている間に、リッチーヌが爪を立てて再びリオンを襲った。
「そりゃっ!」
気合いを入れた声でリオンはリッチーヌの前に細長い竜巻を出す。
だが、同じ手は食らわなかった。リッチーヌはサイドステップで竜巻を避け、大きくジャンプしてリオンのほうに飛んで行った。
再びくるりと回って瞬間移動しようとするリオンだったが、今度はリッチーヌのほうが速い。先ほどとタイミングがズレているが、果たして上手く避けられるのか――
だが、そんな心配も必要なかった。奴はもう一人……アンジェの相手もしなければならないのだから。
「はっ!」
闘魂を注入した声でアンジェがリッチーヌの腕を叩き切る。すると、切られたリッチーヌの腕からは鮮血が舞い、奴の短い断末魔が鳴り響いた。
「もう……危ないわね」
一息ついたアンジェは剣を振るってリッチーヌの血を振り払う。これでダメージは一発。冷静な判断で動けた鮮やかな一撃だ。
「まあ、上出来だろ」
一連の動きを見ていたライザがニヤリと笑う。どうやらアンジェは期待通りの行動をしてくれたようだ。
こんなに万能なリオンだが、パワー不足という大きな弱点がある。どんなに魔力が高いとはいえ彼はまだ子供。物理攻撃による力攻撃や素早い攻撃は彼には向いていない。その前に彼は丸腰だ。魔法が避けられたら、続けて撃つか、逃げるしか手はないのだ。けれども、それは【剣士】であるアンジェが補ってくれる。
魔法のリオン。物理攻撃のアンジェ。攻撃のバランスが上手く取れている良いコンビネーションだ。これなら、安心してリッチーヌの相手を頼める。
――問題は、俺たちのほうだ。
10
あなたにおすすめの小説
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる