転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第6章 森の奥の隠れ里

第104話 魔法は苦手って言ってるじゃん

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「余所見してるんじゃないの!」

 アルジャーの声にハッと顔を上げると、彼は両腕を挙げながら高々とジャンプしていた。

 爪を掲げたアルジャーは重力に身を任せて俺の頭上に向けて振り下ろす。

 咄嗟にバトルフォークの柄で攻撃を防ぐと、「ガキンッ!」という激しい金属音が鳴った。

 金属に振動が伝わり、手がビリビリと痺れた。このパワーで直撃していたら多分首を持っていかれていただろう。

「おぉ……これ喰らって武器を落とさないなんて、お兄ちゃんやるじゃん」

 軽い口調で褒めるアルジャーだったが、涼しい顔をしていた。

「褒められたって嬉しくねえんだよ!」

 勢いのままバトルフォークを縦に振るが、アルジャーは「おっと」と言いながら易々と避けた。けれども、浮かべた表情はしかめっ面で、どこか不服そうだ。

「お兄ちゃん、闘い慣れてないでしょ。その変な槍だって全然扱えてないし」

 口をへの字にしながらアルジャーは俺に言ってくる。これは俺に対する文句のようだ。

「うるせえなあ。テキトウじゃ悪いかよ」

「悪いっつうか……攻撃読みづらくて戦いにくいんだよね」

 そう言ってむくれたアルジャーはポリポリと頬を掻く仕種をする。そんな彼の横でライザが真顔で「うんうん」と頷く。

「同感だ」

「てめぇは俺の味方じゃねえのかよ!!」

 敵に同調するライザに思わず声を荒げるが、ライザは「なんだよ……」とまた文句を垂らした。

「ど素人と組まされる俺の身にもなれよ」

 と言いながらも、ライザの構えた銃口は、しっかりアルジャーに向けられていた。

 ――次はライザのターンだ。

 無表情のまま、ライザは次々とアルジャーに向けて発砲していく。

 けれども、彼の弾丸をアルジャーは笑いながら飛んだり跳ねたりして避ける。アルジャーには弾の軌道が見えているようだ。

「やっぱり俺は、あんたのほうが戦いやすいや」

「そうかい、ありがとよ」

 楽しげに笑うアルジャーに、流石のライザの顔も引き攣っていた。

 これはライザの狙いが甘いのではない。アルジャーの動きが尋常じゃないのだ。

 確かに銃弾は銃口の向きとトリガーの動きに注意すれば避けられると漫画で読んだことがある。といってもこれは当然フィクションの話で普通の人間がそんなことができるはずがない。

 だが、ここは異世界で、相手は魔物。アルジャーはライザの「先の先の」動きを読んで戦っているのだ。

 弾が当たらないのなら、ライザも苦しいところだろう。やがて諦めたように俺に声をかけてきた。

「おいお前。氷属性ならなんか魔法出せねえのか」

「出せるけど、俺、魔法は全然得意じゃねえぞ」

「そんなもの、見ればわかる」

 ザクッと刺すように言うライザに思わずムッとする。けれども期待していないのにどうして俺に魔法なんて頼むのだろうか。

「辺りを凍らせとまでは言わない。草を濡らすだけでいい」

「そ、それくらいでいいなら……でも、何する気だ?」

「見ればわかる。いいから、さっさとやれ!」

 そう言ってライザはいきなり俺の前に立ちはだかって銃を高く掲げた。

 俺たちと話している間にアルジャーが火の息を吐こうとしているのだ。しかも、先ほどよりも口から赤い外炎が溢れ出ている。これは大きい攻撃が来る。

 一方、ライザの銃口からは青い光が出ており、そこからシャボン玉のような丸い水を繰り出していた。

 青い光が溢れると同時に、水の玉も見る見ると大きくなる。言わば「水の大砲」だ。これでアルジャーの火の息を迎え撃つというのか。

「ボーっとするんじゃねえ!」

 ライザに声を荒げられ、ハッとする。そうだ。後衛のライザがこうして前に出ているのは俺に魔法を打たせるため。

 俺もバトルフォークを持ち構え、力を込めるよう強く柄を握った。

 その瞬間、アルジャーが口の中に溜めていた火を一気に吐き出した。

 吐き出された火は真っすぐにライザのほうへと向かって飛んで行く。しかし、ライザもアルジャーが吐き出すと同時に水の大砲を彼に向かって撃ち放っていた。

 共に放射された火の息と水の大砲はぶつかり合い、彼らの中心点で弾き飛ぶように相殺された。

「おー、やるねえ」

 アルジャーが八重歯を見せてにやりと笑う。しかし、そんな余裕綽々と笑っていられるのも今のうちだ。なんせ次は――俺のターン!

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