転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第6章 森の奥の隠れ里

第105話 それはもう反則級

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「ライザ! しゃがめ!!」

 突然大声をあげる俺にライザは億劫そうにこちらを見る。だが、バトルフォークを振りかぶろうとしている俺と目が合った途端、ライザはギョッとした様子で慌ててその場にしゃがんだ。 

「うおりゃぁぁ! 『冷たい風コルド・ウィンド』!」

 気合いの入った声と共に、バトルフォークを力強く薙ぎ払う。すると、フォークはライザの頭上スレスレを通り、面からあられのような氷の結晶が放出された。

 振り払う勢いに乗り、氷の結晶はライザを越え、アルジャーのほうまで飛んで行く。

「え!? 何これ!?」

 いきなり現れた霰にアルジャーは驚いて瞬時に顔面を腕でガードする。しかし、届いたと言っても攻撃力はほぼなく、ただ彼の腕周りと足元を濡らして終わった。それでも今までで一番上手くいったから良しとしよう。

 と、思っていたら、ライザが額に青筋を立てた表情で俺の胸倉を掴んだ。

「てめえ……危うく俺に当たるところだったじゃねえか……」

「いやー、悪い悪い。こうしないと威力が上がらないもんで」

「てへっ」と茶目っ気溢れる笑顔を向けながら頭を掻くが、ライザの鋭い眼差しは明らかに殺気を含んでいた。

 けれども、ライザは不機嫌そうでもすぐにパッと俺の胸倉を離し、トントンと銃で自分の肩を叩きながらゆっくりと振り向いた。

「まあ、いい……汚物にしては上出来だ」

 その何か企んだ上がった口元に、俺も、敵であるアルジャーも不思議そうに首をひねった。

「何しようとしてるの?」

 アルジャーの声のトーンが変わる。

 彼が警戒するのもわかる。なんせ、ライザはこの状態で自分の武器をいるのだ。

 武器は構えない。だが、彼のふ目は爛々としている。いったい彼が何をやろうとしているのか、俺にもさっぱりわからない。

 緊張している俺たちとは裏腹にライザは涼しい顔をしていた。

「……せっかくだから、俺の魔法能力を教えてやるよ」

 そう言ってライザはスッと人差し指を地面に指した。すると、辺りから無数の水の弾が一斉に浮き出した。

「な、なんだって……」

 アルジャーも俺も慌てて下を見る。浮いている水の弾は俺が今、『冷たい風コルド・ウィンド』を繰り出して濡れたところから現れている。つまり、ライザは溶けた雪の水を操っているのだ。

「俺の魔法能力は水を飛沫にして飛ばすこと。だが、別にそれはこの銃がなくてもできるんだよ」

 ただ、ライザ自身の力ではここまで一気に広範囲に辺りを湿らせることができない。だから俺の氷の力を利用したのだ。

「まあ、お前のいくら反応が良くても、避けられなかったら意味ねえよなあ……」

 ニヤニヤと笑いながらライザは徐に銃を構えると、アルジャーの血相が変わった。重工は一つだけでない。無数の水の弾が彼を捉えているのだ。

「これは反則だろ……」

 味方の俺ですらゾッとする攻撃だ。こんなの喰らったらひとたまりもない。

 頬をヒクヒクと引き攣らせていると、今度は隣のほうからリッチーヌのこの世のものとは思えないほどの金切り声が聞こえてきた。

「リッチーヌ!?」

 慌ててリッチーヌのほうを向くと、ちょうどアンジェがリッチーヌの額に剣を突き刺しているところだった。けれども、人間の跳躍力で数メートルもあるリッチーヌの額まで飛べる訳がない。

 そう思っていたら、よく見るとアンジェの足元がぼんやりと黄緑色に光っていた。

 顔をしかめたリッチーヌががむしゃらにぶるぶると首を振ってアンジェを振り落とす。だが、アンジェは素早く剣を抜き、トンッとリッチーヌから飛び降りた。

 空高く舞ったアンジェは空中でくるっと回って離れて見守っていたリオンの隣に着地する。

 その途端、彼の足元でふわりと風がつむじを巻いた。どうやらあの足元の光がアンジェのスピードと跳躍力を上げているようだ。リッチーヌはアンジェの素早い動きに翻弄され、ここまで木端微塵こっぱみじんにやられたのだろう。無論、リオンの補助魔法だ。

「リオちゃん、とどめ行ける?」

 アンジェの声掛けにリオンは「うん」と力強く頷く。その答えにアンジェはニッと口角を上げ、切っ先をリッチーヌに向けた。
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