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第11章 ダンジョン名『旧灯台』
第160話 暗闇の先に
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冷たい風が流れ込む。
そこには長い廊下が続いており、ぽつぽつと蝋燭の火がついていた。
重々しい警戒しながらも奥へと進む。この緊迫とした空気感にアンジェもリオンも、頭の上にいるノアも無言だった。
暫時の沈黙の中、黙々と廊下を歩く。
そこで待ち受けていた人物たちに、俺は思わず息を呑んだ。そこにいたのは、牢屋に入れられた見知らぬ男たちだったからだ。
驚いたのは彼らも同じで、俺たちの顔を見ると体をびくつかせてザザッと退いた。
アンジェの眉間のしわがグッと寄る。
「……あなたたちは、もしかして」
男たちの服は全員同じで、黒ずくめだった。この足までかかるような丈の長い服には見覚えがある。この服はミドリーさんも着ていた。
「……神官……っすか?」
確認するように尋ねると、手前にいた男が口を噤んだまま頷いた。
最初は警戒していた彼らだが、相手が二十代の若僧と子供に猫だ。怪しい者ではないとわかったようですぐに表情が和らいだ。
「……君たちは?」
牢屋の奥から年配の渋い声がする。
目を向けるとゆらりと黒い影が動いてこちらへ近づいてきた。出てきたのはもみあげまで繋がった立派な髭を生やした初老の男だ。牢屋に入れられているのに、この人は他の神官と違って動揺している様子もない。
「ギルド員のアンジェです。みなさまをお助けに参りました」
アンジェがかぶっていたハットを脱ぎ、深々とお辞儀をする。その礼儀正しい彼の姿勢に俺とリオンも釣られるように会釈した。
「私はオズモンド。神官長だ」
「神官長ということは……ミドリーさんの上司っすか?」
なんの考えなしに尋ねると、オズモンドさんの眉がぴくりと動いた。しかし、すぐに「そういうことになる」と何事もなかったかのように返してきた。
「みなさんもやはりパルスに?」
「パルス……あの青年はそのような名前なのか。あのアビリティにはすっかりやられたよ」
ため息をつくオズモンドさんに他の神官たちも俯く。
聞けばどの神官も身内や案内人に化けられたようだ。中には抵抗しようとした人もいるらしいが、返り討ちにされて敢えなく連行。そこからずっとここで幽閉されていたという。
「奴の目的はご存知で?」
「おそらく治癒魔法の独占、そして味方の治療だろう。治癒魔法は魔物にも効く。何度か傷ついた魔物を手当てをさせられたよ」
勿論、敵の治療は神官たちも不本意だった。だが、パルス側からの脅しもあり、従うしかなかったようだ。
「我々の命ならまだしも、街を襲うというのでな……民の命が脅かされるとなればやらざるを得なかった……すまぬ」
オズモンドさんが深々と頭を下げる。不本意だと思いながらも結果的に魔王に力を貸してしまったことを悔やんでいるのだろう。しかし状況が状況だ。彼らのことを責めたりはしないだろう。
「とにかく、無事のようで安心しました。すぐに出しますから、もう少しの辛抱を」
そう言ってアンジェは鍵の在り処を探そうとする。俺も辺りを見回そうとしたが、その前に隣にいたはずのリオンがいなくなっていた。
「ねえねえ。これって鍵?」
あどけないリオンの声に振り向くと、リオンは壁の鍵かけを指差していた。そこにはここの牢屋のものらしき鍵がかかっている。
「そのようだけど……随分と不用心ね」
怪しむアンジェだったが、ひとまず鍵を手に取って牢屋へと向かう。そして牢屋の鍵穴に手持ちの鍵を挿し込むと見事に解錠された。
神官たちから「おお」と感嘆の声があがる。
その様子を傍観していたノアが誰にも聞こえないように小声で俺に話しかけてきた。
「おい……おかしいと思わないか?」
その問いかけに思わず俺も頷いた。
最初から鍵がかかっていた入り口に、結界を貼って隠していた階段。魔物という門番を付け、音をあげたくなる無限螺旋階段。ここまでこんなに厳重していたはずなのに、肝心の人質の周りの警備がガバガバだ。
しかも鍵ですら見えるところに置くなんて、らしくなさすぎる。しかも、ここに至るまであれだけまどろっこしくしていたのに、どうしてここに来てこんなにもあっさりとしているのだ。
「こやつらにはもう用がないってこと……なのかもしれないな」
珍しくノアが真顔になる。だが、回復役がもう用なしとは、いったいどういうことだ。
考えを巡らしているうちに、アンジェとリオンが神官たちを牢屋から解放していた。全員で七人。だが、どう見たって神官の数が一人足りない。
「ねえ、ミドリーのおじちゃんは?」
神官たちの顔を見合わせながら、リオンが疑問をぶつける。
だが、どいつもこいつも視線を逸らして口を閉じた。中には頭を抱えてがくがくと震えだす者もいる。この様子にアンジェも訝しそうに顔をしかめた。
そこには長い廊下が続いており、ぽつぽつと蝋燭の火がついていた。
重々しい警戒しながらも奥へと進む。この緊迫とした空気感にアンジェもリオンも、頭の上にいるノアも無言だった。
暫時の沈黙の中、黙々と廊下を歩く。
そこで待ち受けていた人物たちに、俺は思わず息を呑んだ。そこにいたのは、牢屋に入れられた見知らぬ男たちだったからだ。
驚いたのは彼らも同じで、俺たちの顔を見ると体をびくつかせてザザッと退いた。
アンジェの眉間のしわがグッと寄る。
「……あなたたちは、もしかして」
男たちの服は全員同じで、黒ずくめだった。この足までかかるような丈の長い服には見覚えがある。この服はミドリーさんも着ていた。
「……神官……っすか?」
確認するように尋ねると、手前にいた男が口を噤んだまま頷いた。
最初は警戒していた彼らだが、相手が二十代の若僧と子供に猫だ。怪しい者ではないとわかったようですぐに表情が和らいだ。
「……君たちは?」
牢屋の奥から年配の渋い声がする。
目を向けるとゆらりと黒い影が動いてこちらへ近づいてきた。出てきたのはもみあげまで繋がった立派な髭を生やした初老の男だ。牢屋に入れられているのに、この人は他の神官と違って動揺している様子もない。
「ギルド員のアンジェです。みなさまをお助けに参りました」
アンジェがかぶっていたハットを脱ぎ、深々とお辞儀をする。その礼儀正しい彼の姿勢に俺とリオンも釣られるように会釈した。
「私はオズモンド。神官長だ」
「神官長ということは……ミドリーさんの上司っすか?」
なんの考えなしに尋ねると、オズモンドさんの眉がぴくりと動いた。しかし、すぐに「そういうことになる」と何事もなかったかのように返してきた。
「みなさんもやはりパルスに?」
「パルス……あの青年はそのような名前なのか。あのアビリティにはすっかりやられたよ」
ため息をつくオズモンドさんに他の神官たちも俯く。
聞けばどの神官も身内や案内人に化けられたようだ。中には抵抗しようとした人もいるらしいが、返り討ちにされて敢えなく連行。そこからずっとここで幽閉されていたという。
「奴の目的はご存知で?」
「おそらく治癒魔法の独占、そして味方の治療だろう。治癒魔法は魔物にも効く。何度か傷ついた魔物を手当てをさせられたよ」
勿論、敵の治療は神官たちも不本意だった。だが、パルス側からの脅しもあり、従うしかなかったようだ。
「我々の命ならまだしも、街を襲うというのでな……民の命が脅かされるとなればやらざるを得なかった……すまぬ」
オズモンドさんが深々と頭を下げる。不本意だと思いながらも結果的に魔王に力を貸してしまったことを悔やんでいるのだろう。しかし状況が状況だ。彼らのことを責めたりはしないだろう。
「とにかく、無事のようで安心しました。すぐに出しますから、もう少しの辛抱を」
そう言ってアンジェは鍵の在り処を探そうとする。俺も辺りを見回そうとしたが、その前に隣にいたはずのリオンがいなくなっていた。
「ねえねえ。これって鍵?」
あどけないリオンの声に振り向くと、リオンは壁の鍵かけを指差していた。そこにはここの牢屋のものらしき鍵がかかっている。
「そのようだけど……随分と不用心ね」
怪しむアンジェだったが、ひとまず鍵を手に取って牢屋へと向かう。そして牢屋の鍵穴に手持ちの鍵を挿し込むと見事に解錠された。
神官たちから「おお」と感嘆の声があがる。
その様子を傍観していたノアが誰にも聞こえないように小声で俺に話しかけてきた。
「おい……おかしいと思わないか?」
その問いかけに思わず俺も頷いた。
最初から鍵がかかっていた入り口に、結界を貼って隠していた階段。魔物という門番を付け、音をあげたくなる無限螺旋階段。ここまでこんなに厳重していたはずなのに、肝心の人質の周りの警備がガバガバだ。
しかも鍵ですら見えるところに置くなんて、らしくなさすぎる。しかも、ここに至るまであれだけまどろっこしくしていたのに、どうしてここに来てこんなにもあっさりとしているのだ。
「こやつらにはもう用がないってこと……なのかもしれないな」
珍しくノアが真顔になる。だが、回復役がもう用なしとは、いったいどういうことだ。
考えを巡らしているうちに、アンジェとリオンが神官たちを牢屋から解放していた。全員で七人。だが、どう見たって神官の数が一人足りない。
「ねえ、ミドリーのおじちゃんは?」
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追記:2025/09/20
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