転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第12章 VS暗殺者・パルス

第171話 立ち昇る黄色い稲妻

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「……終わったのか」

 ミドリーさんがよろめきながらも立ち上がる。アンジェもリオンも「終わった」と判断したようで、それぞれ武器を仕舞った。

 アンジェが無言でパルスのコアを拾い上げる。

 何か思うことがあるのか、しばらくコアをじっと見つめていた。きっと亡き妹のことを思い出しているのだろう。悲しげな彼の顔を見ていると、俺も他のみんなもかける言葉が見つからなかった。

 だが、そんな悠長なこともやっていられなかった。いきなり下から爆発音が聞こえ、灯台が大きく揺れたのだ。

「な、なんだ!?」

 慌ててその場でしゃがみ込むが、揺れはまだ止まらない。

 それどころか、床が割れて灯台が崩れ始めたのだ。思い当たる節は一つ。消える間際に告げていたパルスの言葉だ。小さすぎて聞こえていなかったが、あれが魔法の詠唱や爆弾かなんかの爆破の合図だとしたら。

「あいつ……俺たちを道連れにする気かよ!」

 そう吠えたところでこんな上層部にいる俺たちの逃げ場はない。灯台の瓦礫と共に真っ逆さまに落ちていく──

「おわぁぁぁ!」

 先に落ちていく瓦礫が地面に当たって砕け散ったのが見えた。俺たちがあの瓦礫同様に砕けるのも時間の問題だ。

 くそっ、ここまで来たというのにこんなことで俺たちは死ぬのか。冷たい風を感じながら、俺は死の恐怖にギュッと目をつぶった。

 だが、どこかでリオンの叫び声が聞こえた。

「『浮遊魔法フロウテッド』!!」

 その詠唱と共にふわりと体が浮いた。周りを見るとアンジェやミドリーさん、ノアまでも体が浮いている。これは、階段フロアで俺たちにやった重力無視の移動魔法だ。

 魔法をかけられた俺たちは急降下することなく、崩れた灯台から数メートル離れた原っぱに落とされた。無論、掠り傷一つない。

「リオ~~ン!」

「偉すぎるわリオちゃ~~ん!」

 着地した途端、俺もアンジェも堪らず彼に駆け寄った。アンジェに関してはもうリオンのことを抱きしめて頬擦りまでしている。だが、一気に魔力を使ったからか顔に疲れが出ており、目もとろんとしていた。

「ごめんねリオちゃん。疲れたわよね。本当、よく頑張ってくれたわ」

「ほら、おぶってやるから」

 と、リオンに背中を向けると「うん……」と言いながら俺の背中にしがみついた。

「よっと」と言いながらリオンを担いで立ち上がる。

   ふと、ミドリーさんとノアのほうを見ると、二人とも呆然としながら空を見上げていた。

「どうかしたんすか?」

   二人の元へ行くと、彼らが呆然としている理由がわかった。空が明らかにおかしいのだ。

「……なんだこれ」

   空に月が浮かんでいる。昼間に月が浮かぶこと自体は不思議ではない。問題はその色だ。白く浮かんでいたはずの月が青いのだ。

   空に浮かぶ真っ青な月。そこから侵食するように空がどんどん赤くなっていく。そんな異様な空を見て、ミドリーさんがポツリと呟いた。

「『赤い空に青い月が浮かぶ時、大地から稲妻が流れる』」

   それは前にノアから聞いた『エムメルク』の言い伝えだった。つまりこれは、魔王復活の前触れ。


 ――ただの……時間稼ぎですから……


   パルスの言葉の意味が理解できた。あいつが俺たちに喧嘩を売るようにこの街に寄越したことも。灯台の上層部まで誘い込んだことも。そして、あんなまどろっこしい戦い方をしていたことも――全てはこの瞬間、魔王の復活までの時間稼ぎだったのだ。

   ということは、もうすぐ大地から稲妻が流れる?

   そう思った途端、東の空に雲が集まり、渦潮のように渦を巻き始めた。

「おい、アンジェ。あの方向……」

「ええ、神官様」

 アンジェとミドリーさんが深刻な顔になる。「どうした?」と尋ねると、青ざめた顔でアンジェは答えた。

「あの方向──『オルヴィルカ』のほうだわ」

「なんだと?」

 驚いた途端、渦巻いた雲の中心を貫くように黄色い稲妻が立ち昇った。大地から稲妻が流れたのだ。

「行くわよ! みんな!」

 アンジェが声を荒らげて鞄からウィンド・コア・ピンを取り出す。そして風の扉が作られたのも見図ると、みんなして慌てて渦に飛び込んだ。

 誰もいなくなった旧灯台には、冷たい風だけが流れていた。
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