転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第13章 神と魔王が動き出す

第172話 魔王ってお前かよ

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 ウィンド・コア・ピンの風の扉を抜けると、『オルヴィルカ』の広間に出た。

 広間の中心にある噴水を囲むように人だかりができていた。ギルドの職員から冒険者、そして街の人もみんなみんな立ち昇った稲妻を見てここに集まったようだ。

 変わったことはまだあった。『カトミア』にいた時は空が赤かったのに、『オルヴィルカ』の空はまるで夜のように暗かった。ただ不気味に青い月がぼんやりと辺りを照らしている。

 そんな青い月の元でクリスタルのような紫色のコアがふわふわと浮いていた。コアの中に人影が見える。

「ミドリー!」

 前方からミドリーさんを呼ぶ声がする。顔を向けると先ほど助けた神官たちが彼に向って駆け寄っていた。その中には神官長のオズモンドさんもいる。

「よくぞ無事でいた」

「いえ、この者たちのおかげです。ご心配おかけして申し訳ありません」

 オズモンドさんの労いにミドリーさんが深々と頭を下げる。他の神官も捕らわれていた彼の生存に安堵しているようだ。だが、感動の再会シーンも一瞬で終わる。

「ところでこのクリスタルは……」

「これが大地から突き上げられるように出てきたのだ。先ほど見た稲妻も、これが出た時に生まれた」

「ということは、これが……」

「ああ。魔王の卵、とでもいうか」

「なら、生まれる前にさっさと壊さねえと!」

 クリスタルを睨みながらバトルフォークを構える。しかし、オズモンドさんは無言のまま首を横に振った。

「もうすでに何度も壊そうと試みた。だが、どんな強力なアイテムや魔法を使っても、このクリスタルはびくともせん」

「それじゃ、勝手に壊れるまでこっちは何もできないってことっすか?」

「残念ながら、今はな」

 オズモンドさんが深刻な表情のままクリスタルを見つめる。他の人もクリスタルを見上げながら不安そうな表情を浮かべていた。これだけ人がいて何もできないだなんて、もどかしいったらありはしない。

 ギリッと奥歯を噛んでいると、ノアが俺の肩に乗ってきた。

「──来るぞ」

 ノアの声が合図かのように、クリスタルの先端がひび割れた。そこから雛が羽化するかのように少しずつクリスタルが割れていく。その様子を俺たちは固唾を飲みながら凝視していた。

 やがて、割れたクリスタルから一人の男が現れた。紫色のローブを着て、フードで顔を隠している。魔王なんて禍々しい者にはまったく見えない、ただの人間だ。

 人間の背中から黒い羽が生える。だが、その羽は彼の者ではない。後ろにもう一人いるのだ。

 羽が羽ばたいて男と二手に分かれた。現れたのは天使だった。肩まで伸びた金髪の男で切れ長の目で俺たちを卑下するように見下ろしている。羽の色といい、ただの天使ではないことは見て取れた。

「……よお、ノア」

 天使の男がノアを見て、ほくそ笑む。

「──セト」

 静かにノアが呟くと、セトと呼ばれた男は肩を揺らして笑った。

「惨めな姿だな。そんな猫の姿でないと人間どもに認識されないなんて……それで、そこにいるのがお前と契約した勇者様ってか?」

 男が俺を値踏みするように見てくる。展開が読めない。どうしてこんなどう見ても魔王側の天使とノアが知り合いなのだ。

「しかし、俺が選びそうな人間と契約するなんて、お前が考えそうなことだぜ。残念ながら一歩遅かったみたいだけどな」

「おいお前……さっきから一人で何を言ってるんだよ」

 セトに向けて切っ先を向けるが、セトは余裕綽々だ。

「随分と呑気な勇者なこった。自分に置かれた状況がわかっていないだなんてな」

「ああ? 何がだ」

「なんだ……こっちから言わないといけないってか?」

 と、セトは隣にいたフードの男を見た。

 男が徐にフードを外し、顔を露わにする。その男の正体に、そこにいた誰もが息を呑んだ。

「嘘……」

「こいつは……どういうことだ?」

 混乱のあまりアンジェもミドリーさんも唖然としている。彼の顔を見て、全員同じことを思ったはずだ。だが、誰も言えなかった。俺の背中で寝ぼけ眼のまま彼を見上げる、リオン以外は。

「ねえ……どうしてムギト君が二人いるの?」

 リオンの疑問に対する答えは実にシンプルだ。なぜならこいつは──……

「……頼人ライト

 俺の、双子の弟だ。
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